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2007年7月28日 (土)

バイロイトの「第九」

25日の朝日新聞に『フルトヴェングラーの「第九」、別の音源見つかる』という記事が掲載されていて、私は「えっ!」という思いでじっくり記事を読んだ。この記事によると、今迄歴史的名盤とされているバイロイト音楽祭でのフルトヴェングラー指揮によるベートーヴェン/第九交響曲のライヴ録音は、実は本番の録音にリハーサルなどを取り込んで編集したテープではないかと疑っている。

フルトヴェングラー研究家、檜山浩介氏によると EMI 盤は全体の4分の3が編集したものではないかとコメントしている。今回従来の EMI 盤に編集の疑いが持たれた原因は、バイエルン放送局から放送記録、録音技師の記述が有る録音テープが発見された事による。この純然たるライヴ録音テープと EMI 盤とを聴き比べると様々な部分で違いが発見されたそうである。

具体的には第三楽章冒頭では発見されたテープの方がヴァイオリンの出が早い。終楽章でコーラスが「vor Gott」と歌う部分に激しい音量変化がない。聴衆のせきも第一楽章から明確に聞こえるとの事。EMI 盤は聴衆のノイズを消す為にリハーサルと差し替えたのではないかとも記載されている。

まぁ、仮に EMI 盤がリハーサル・テープとの編集であったとしても歴史的名演奏の名に傷が付くわけでなし、私はやはり「第九」のレコードを取り上げる際には一番に名前を挙げるべきものである事には変わりはないと思っている。そもそも近年、ライヴ録音と称して発売されて来たレコード、CD のほとんどはライヴ録音で傷ついている演奏部分にリハーサル・テープを宛がうのは当たり前の事である。というより、ほとんどリハーサル録音ではないかと思えるほど聴衆のノイズが無い「ライヴ録音」もあるくらいなので・・・。バーンスタイン晩年のライヴ録音などはその典型的なものであると私は思っている。

Furt

私は現在このバイロイト盤を都合四種類持っている。写真左上は第一家庭電器が東芝EMI と提携して作った45回転特製重量盤三枚組みLP。これは同店でカートリッジを購入するとノベルティとして第一家庭電器が頒布していたもの。右上は独エレクトローラ盤。下は紙ジャケット仕様の CD。この他にレコードによるベートーヴェン交響曲全集も所持している。今更改めて私が申すまでもなく、大変素晴らしい演奏が繰り広げられている第九である。

筆者注・・・バイロイトの「第九」とは、第二次世界大戦で中断されていたバイロイト音楽祭が1951年7月29日に再開された際、ウィルヘルム・フルトヴェングラーの指揮で、バイロイト祝祭管弦楽団、及び合唱団によってベートーヴェンの「第九交響曲」が演奏された。ドイツのバイロイト祝祭劇場は通常ワーグナーの楽劇を上演する為のホールであり、再開をお祝いする為に「第九」が演奏された。その時の録音がレコードとして発売され、永年(半世紀以上もの間!)クラシック音楽ファンを魅了し続けて来たのであります。クラシック音楽に特に興味の無い方の為に蛇足ながら敢えて説明させて頂きました。

2007年7月24日 (火)

ブルーノ・ワルター

行き付けの外資系某CDショップでブルーノ・ワルターがモーツァルトの交響曲を指揮したCDの紙ジャケット仕様を見付け購入した。ブルーノ・ワルターと言えばクラシック音楽をお好きな方なら先ず知らない方はいらっしゃらないでしょうが、先日の「フィガロの結婚」でご紹介したカール・ベームと共にモーツァルトの演奏で人気のある指揮者の一人である。私がクラシック音楽を聴き始めた頃、最初に購入したモーツァルトのレコードが今日紹介しているブルーノ・ワルターがコロンビア交響楽団を指揮したモーツァルトの交響曲第40番、41番「ジュピター」をカップリングしたものであった。録音元の米CBS の発売権が日本コロムビアから創立間もないCBSソニー(現 SME)に移って最初に発売されたレコードで、レコード番号も「SONC」で始まるシリーズの見開き豪華なジャケットであった。写真のレコードはその時のものではなく、後年新しくミキシングされたマスターテープで再カッティングされたもの。

レコードを持っているのにCDを購入してしまったのは味気ないプラケースでなかった事と、 ワルター最晩年の一連の録音を担当した「ジョン・マックルーア」が監修したCDマスター使用というコメントに、ついふらふらっと手が伸びてしまったのである。他のアーティストでもレコードを持っていながらついCDを購入しちゃう場合があり、困ったものだ。(笑)
ワルターの指揮した第40番はゆったりとしたテンポでとても落ち着きのある解釈で、私が最も好きな第40番である。ここ数年は聴く事がなかったが、今回のCDで久しぶりにワルターのモーツァルトを堪能した。

Walter

2007年7月18日 (水)

フィガロの結婚

なんとも嬉しい DVD がまた発売された。先の朝比奈隆指揮シカゴ交響楽団の DVD と同じく、NHKエンタープライズから 1980年 ウィーン国立歌劇場による初来日引っ越し公演で上演された、カール・ベーム指揮モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」が世界初 DVD 化されたのである。この公演は私も聴きに行っており、今迄いろいろな演奏会に通った中でも大変印象深いものである。

配役も当時望み得る最高のメンバーによるフィガロであり、自分が聴いたフィガロとしてはレコード、演奏会を問わず最高のフィガロであった。数年前にライヴ CD が発売されているので、是非映像が発売されれば・・・と思っていたのが実現してこの上ない喜びである。
当時 FM 放送をオープンリールテープに録音し、更にはまだまだ家庭には普及していなかった VHS ビデオデッキを使って NHK 教育テレビで放送されたものを録画したテープも未だに持っている。しかし正規盤で DVD が出た事によって VHS テープも必要が無くなった。

配役のうち、タイトルロールのフィガロを私がもっとも好きなバリトン歌手、ヘルマン・プライが演じている事が一番の喜び。当時、序曲が終ってイントロの軽快な音楽に乗ってステージにプライが登場した時には背筋に寒気を覚え、「あぁ、ヘルマン・プライのフィガロを今自分は生で見る事が出来ているんだ・・・」と大変な感動を覚えた事を未だに忘れられない。これだけの有名曲なので多くのレコード、CD が出ており、更にはライヴでもいろいろな歌手が演じているが、ヘルマン・プライ以上のフィガロを私は未だに聴いていない。変な例え方だが、ショーン・コネリーがジェイムズ・ボンドを演じる為に生まれて来たように、ヘルマン・プライはフィガロを演じる為に生まれて来たのではないかと思ってしまう。お笑い下さるな・・・、そのくらいの当たり役と解釈して下さい。

Figaro_02
これまた最高のスザンナを演じているソプラノ歌手、ルチア・ポップとの二重唱を歌うヘルマン・プライ。演技も上手いし、文句ありません。

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そしてこれまた当時圧倒的歌唱力で我々聴衆を魅了してくれたメゾ・ソプラノのアグネス・バルツァ。彼女の歌うケルビーノのアリア「恋とはどんなものかしら」の熱唱シーンです。

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レコードではそつなくこなしているグンドゥラ・ヤノヴィッツの伯爵夫人も、その容姿を見ながら聴いているとなかなか良かった。ステージでは気品すら感じた。

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当時バイロイト音楽などでのワーグナーもので売り出し中だった注目のバリトン、ベルント・ヴァイクルのアルマヴィーヴァ伯爵。この人も好演で見事に好色な伯爵を演じていた。

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このドリームキャストをまとめていたのが御大、カール・ベームである。モーツァルトは得意中の得意であり、レコードでも数々の名演を残している。オーケストラはウィーン国立歌劇場管弦楽団(ウィーン・フィル)であるからこれまた絹のような弦楽器の音色がモーツァルトにピッタリで感動してしまう。この引っ越し公演中に特別演奏会としてベートーヴェンの交響曲第二番と第七番がベームの指揮で演奏されており、こちらも CD と DVD が出ている。大変ゆっくりとしたテンポで演奏されているが、味わいのある指揮ぶりである。
尚、カール・ベームは翌 1981年、惜しまれながら逝去している。貴重な映像の DVD 化である。

1980年 9月 30日  東京文化会館

フィガロ : ヘルマン・プライ
スザンナ : ルチア・ポップ
アルマヴィーヴァ伯爵 : ベンルト・ヴァイクル
伯爵夫人 : グンドゥラ・ヤノヴィッツ
ケルビーノ : アグネス・バルツァ

カール・ベーム指揮 ウィーン国立歌劇場管弦楽団、合唱団

NHKエンタープライズ  NSDS-9492  カラー、ステレオ録音

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