初期盤、オリジナル盤
ジャズレコードの世界ではもう随分前からオリジナル盤信奉者がおり(嘗て自分もそうでした)、大枚叩いてオリジナル盤(基本的に本国の初版プレス)を購入するジャズファンが多かった。また雑誌等でそういったオリジナル盤のメリット(ジャケット、音質etc...)を書くのを専門にしているライターもおり、一般ファンを結構煽っていた時代があったのである。
しかし同時代(80年代くらいまでかなぁ・・・)、クラシック音楽を愛好するレコードファンの間では特にオリジナル盤に固執する人はそう多くなかった(はず)。ところがいつの間にかクラシック音楽レコードの世界にもオリジナル盤や初期盤が高く取引されるようになって来た。かなり以前、ジャズファンのお仲間から「クラシック音楽もやはりオリジナル盤とかは高いの?」と尋ねられた事も数回ありますが、その頃は特にそういう風潮はなく、「いえ、全然ないですよ」と繰り返し答えていたものです。
クラシックはジャズに比べるとプレス枚数が圧倒的に多いのと、ドイツ、イギリス、フランス、アメリカなどで同一音源が売られるので、ジャズほどオリジナルの根源がハッキリしていない事もある。強いて言えば録音したレコード会社本国のプレスがオリジナル盤と言えましょうか。したがってクラシックの場合は同時に発売された他国のプレスなども初期盤と言っているようである。初期盤として売られているレコードは大体1960年代まで、せいぜい1970年代初期くらいまでのレコードのようである。
私の場合、ジャズに関しては結構オリジナル盤を追いかけていた時代が長かったものの、クラシックに関してはオリジナル盤、初期盤を特に探し求めていた事はなかった。ただリアルタイムで発売されるレコードに関しては国内盤より輸入盤に拘っていた。特に独グラモフォンの録音に関しては輸入盤と国内盤に明らかなる音質差を感じていたので、もっぱら独グラモフォン盤を買っていた。
で、ジャズのオリジナル盤に熱を入れていた頃、クラシックの中古レコード店でレコード漁りをしていると随分古臭いジャケットのレコードを時々見る事があった。フルトヴェングラー、シューリヒト、カラヤン他、国内中古盤並みの低価格でそういった一流アーティストのオリジナル盤、初期盤が餌箱(レコードファンの隠語)に時々紛れ込んでいるのである。ジャズのオリジナル盤に執心の私は、「これ、ひょっとしてクラシックのオリジナル?」なんて事を思いながらそういったレコードを狂喜しながら時々購入していた。その頃は高くても千数百円くらいで購入していたレコードが、その後一万円台から二万円台で売られているのを見て、唸ってしまった。ジャズの影響なんだろうか・・・、何だかなぁ・・・と思い、初期盤ブームになってからそういったレコードに手を出した事は一度もない。
まぁ、カメラの世界でもレアなカメラ、レンズは中古市場で高値で取引されているので、需要と供給のバランス、求める人がいるからそういった常軌を逸した価格でも取引されるのでしょう。今日はクラシックレコードに初期盤ブームが来る遥か前に入手していた初期盤の一部を紹介させて頂きます。
これは大好きな指揮者、カール・シューリヒトがウィーン・フィルを振ったベートーヴェン/交響曲第2番で、録音した英デッカから発売されたオリジナル盤。録音は1950年代初期で、当然モノラル録音。正確にはこの 12インチ盤(30センチLP)が発売される前に 10インチ盤(25センチLP)が出ており、こちらの方が厳密な意味でのオリジナル盤。ちなみに 10インチ盤の方も所有しています。シューリヒト特有のすっきりした解釈のベートーヴェンで、名演です。
カラヤン若かりし頃、ウィーン・フィルを振ったチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」です。英コロンビアから発売されたオリジナル盤。その後この録音は英EMI となって引き続き販売された。レーベルの撮影時、手振れしていて申し訳ないのですが、メイド・イン・グレートブリテンと表記されているところが如何にも時代を感じさせる。
フランスの指揮者、シャルル・ミュンシュがボストン交響楽団を指揮したお得意のベルリオーズ/幻想交響曲の米RCA盤。毒々しいジャケットが印象的です。
ウィーン・コンツェルトハウス弦楽四重奏団がシューベルト/弦楽四重奏曲「死と乙女」を演奏した米ウェストミンスター盤。古き良き時代の解釈によるシューベルト。
まだまだ他にも所有しているのですが、前述したように初期盤ブームが来る遥か前に入手したものばかりなので、その後の市場価格を考えると馬鹿みたいに安い価格で手に入れている。CD ではジャケット写真を楽しむにはあまりにも小さいですが、その点レコードはジャケットを楽しむ事が出来るので、やはりいいなぁ・・・。
今度は SP レコードを紹介します。
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