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2007年10月 6日 (土)

黒澤明の世界 「天国と地獄」

Kurosawa_01_2黒澤明監督、それほど映画を好きでない方もご存知だと思う、日本映画界の巨匠。実は私が初めて黒澤作品を観たのはもう大分前で、二十歳過ぎくらいだったと思う。モノクロの古い作品をリアルタイムで観たわけではなく、東宝が黒澤明監督の作品を集中的にリバイバル上映した時が初めてでした。当時リバイバル上映で観た映画は「七人の侍」「用心棒」「椿三十郎」「天国と地獄」「赤ひげ」「生きる」の六本だったと思う。

中でも衝撃だったというか、ラストシーンが未だに忘れられない作品として「天国と地獄」を挙げる。自分としては黒澤作品として第一に挙げられる「七人の侍」や、娯楽作品として大傑作の「用心棒」より、「天国と地獄」を黒澤作品一番の傑作として挙げたい。1963年製作、エド・マクベインの小説を映画化したもので、営利誘拐を扱ったストーリー。この映画を真似た誘拐事件が実際に起こり、以後営利誘拐は重罪として刑法が改正されたくらい影響の大きかった映画なのです。

とにかく全編緊張しっぱなしで眼が離せない映画であり、全盛期の黒澤明監督が如何に優れた映画監督であったかを如実に知る事になる。「用心棒」で非道な殺し屋役を演じていた仲代達矢さんが捜査本部の総指揮を執る警部役で好演しています。誘拐の標的にされ、会社トップを狙って画策している重役の権藤を演じているのが黒澤作品には欠かせない三船敏郎さんが演じている。子供が誘拐され、身代金を要求されるものの、犯人が誤って権藤の子供ではなく、権藤のお抱え運転手の子供を誘拐してしまった。しかし容赦なく犯人は身代金を権藤に要求するものの、権藤にとって今持っている大金は社長の椅子を狙って株買占めの為の大金。

運転手の子供の命を取るか、自分が狙っている社長の椅子を取るか・・・。子供は自分の子ではない・・・、だから社長の椅子を・・・、権藤の心の中で葛藤が続く。この辺の心理描写が見ものです。これから観てみようと思われる方の為にこれ以上の詳しいストーリーは言いませんが、ストーリーも面白いし演じている役者さんも素晴らしい人ばかりで、「天国と地獄」は大傑作だと思う。誘拐犯の役を演じているのが現在では貫禄のある俳優さんになっている、山崎努さん。この映画がデビュー作品だと思う。ネットで山崎努さんを検索してみたら、この映画の撮影当時 26歳であった。

この映画、時代的にはカラーで撮られていて不思議ないのですが、モノクロで撮影されています。実はこの映画、「或るワンシーン」だけカラーになるのです。そうか・・・、このシーンの為にモノクロで撮っているのか・・・と、改めて黒澤明監督の天才振りを知る事になる。劇場で観た時はショッキングでした。やられた~・・・と思いましたね。

身代金を犯人側に渡す時のシーンも「おお、なるほど・・・」と感心させられます。犯人がお金を入れるカバンの厚みを限定して来るのですが、これが大きな伏線となっているわけです。当時最速の国鉄「こだま号」が身代金受け渡しに大きな意味を持つのですねぇ。とにかくひとつひとつのカットが皆大きな意味を持っている映画で、カメラワークも素晴らしいです。

さて、ラスト。拘置所で三船敏郎さん演じる権藤と、誘拐犯役の山崎努さんとの面会のシーン。私は山崎努さんの演技にショック(素晴らしいという事)を受け、映画が終ってもしばし席を立てなかった事を今でも覚えている。

先月、この「天国と地獄」と「生きる」がテレビでリメイクされました。TV 版「天国と地獄」では捜査本部の警部役を阿部寛さんが演じていたが、なかなか良かったですね。ただオリジナルの映画版の方があまりにも素晴らし過ぎるので、リメイク版は頑張っていたもののオリジナルと比べると・・・。そうそう、暮れにはこれまたリメイクされた映画版「椿三十郎」が公開されるとの事。主役、椿三十郎には織田裕二さんだそうで・・・。う~ん・・・、ちょっとイメージが違うなぁ・・・。

「天国と地獄」、是非ご覧になって下さい。
素晴らしい映画ですよ~・・・。
ご覧になったら感想を是非聞かせて下さいね。

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コメント

 こちらも読んでみたくなりました。
 この映画の電車のワンカットのために、写る家か何かを撤去したのではないでしょうか。
 映画の黄金時代にしかできない、離れ業と思いました。
 KONDOHさん、ここでも解説者の賜物が発揮されています。

「天国と地獄」、もう何回観たか分かりません。とにかく素晴らしい作品です。是非、レンタルでもされて DVD をご覧になって下さい。

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