« 北海道旅日記 (番外) | トップページ | 山田洋次の世界 「隠し剣 鬼の爪」 »

2007年10月20日 (土)

黒澤明の世界 「用心棒」

Yojinbo_01_2

今やアカデミー監督として有名なクリント・イーストウッドをご存知だと思いますが、彼の出世作として挙げられるのは先ず第一にマカロニウエスタン(もう死語ですね)の「荒野の用心棒」だと思います。マカロニウエスタンをご存じない方の為に説明致しますと、西部劇映画は言うまでもなくアメリカで作られた映画であるわけですが、なんとその西部劇をイタリア映画が作って一時ブームになった事があるのです。イタリア製西部劇をマカロニウエスタンと日本では名付けられ、クリント・イーストウッドはこのマカロニウエスタンで大ブレークしたアメリカの俳優であったわけです。

さて、そのマカロニウエスタン「荒野の用心棒」は日本の名匠、黒澤明監督の「用心棒」をそっくりパクッた映画であることは私が今更言うまでもなく有名な話しですね。本家「用心棒」は 1961年製作で、黒澤作品の娯楽作として筆頭に挙げられる傑作映画だと思う。出演は三船敏郎、東野英治郎、山田五十鈴、仲代達矢、加東大介と、日本映画を代表する方たちによる時代劇としての大傑作。

たまたま通りすがりに入った宿場には二組のやくざ連中が派を競っていた。三船さん扮する浪人がこのやくざをけしかけて喧嘩させ、双方とも潰してしまおうと画策するわけですが、ストーリーがなかなか良く考えられている。

Yojinbo_02

このシーンはこの映画の中でも大変印象深い名セリフが聞けるところ。ジェリー藤尾さんら、宿場のやくざが三船さんを取り囲んで脅すと、三船浪人が「斬られりゃ痛ぇぞ! まったく馬鹿に付ける薬はねえな!」と捨てぜりふを言った途端、居合い切りで数人のやくざを切ってしまいます。左腕を切り落とされたジェリー藤尾さんが「痛ぇよ~! 痛ぇよ~!」とのた打ち回るシーンは本来なら残酷なシーンなんですが、何故か滑稽に見えてしまうんですよね。「斬られりゃ痛ぇぞ!」と言われた直後だけに可笑しいので、黒澤演出の上手さだと思う。

Yojinbo_03

「七人の侍」では農民を守る侍たちのリーダー、志村喬さんの右腕役を好演していた加東大介さん(左)がここでは少し頭の足りないやくざを演じていて、これがまた上手い演技なんですね。また、その「七人の侍」で重厚な演技を見せていた志村喬さん、「用心棒」では好色な商人の役で登場するのですが、皆さんキャラクターを上手く使い分けるものと感心してしまいます。さすが黒澤演出と、改めて感心してしまう。

Yojinbo_04

黒澤作品は良くこういったロングショットのカメラワークが見られる。シネマスコープの画角を考えたアングルだと思う。山田洋次監督の話題作、「武士の一分」での果し合いシーンが、この「用心棒」の影響を受けている事が分かってしまいますね。さて、ここからいよいよクライマックス。「天国と地獄」で警部役を好演した仲代達矢さんらのやくざ連中との果し合い。

Yojinbo_05

仲代達矢さんの扮装が興味深い。首にはなんとマフラーが巻かれている。そして時代考証では有り得ないはずの連発銃を持っているのです。完全に西部劇の真似ですね。こういうところは黒澤監督、娯楽映画に徹したのでしょうね。しかしお陰で仲代達矢さんが初登場するシーンではとても印象が強く残るのである。

映画では大事な音楽も、佐藤勝さんが書いたスコアが映画にとてもマッチしており、ラストシーンで三船浪人が世話になった「めし屋」の親爺(東野英治郎さん)に、「これでこの宿場も静かになるだろう。」と言ってパッと背中を見せて、「あばよ!」と言いながら立ち去って行くところで流れてくるテーマ音楽が画面にマッチしていて、とても印象強く映画が終わる。全盛期の黒澤明監督の娯楽傑作映画である。

尚、この三船浪人のキャラクターは「椿三十郎」へと引き続き、「用心棒」の続編的意味合いで作られている。「用心棒」の中で名前を訊かれると、目の前に広がる桑畑を見て、「名前は・・・桑畑三十郎。まもなく四十郎だがな・・・」というシーンは笑えます。

※ 各写真は、最近ハイビジョン放送されたもので、拙宅のスクリーンをデジカメで撮影したものです。

« 北海道旅日記 (番外) | トップページ | 山田洋次の世界 「隠し剣 鬼の爪」 »

コメント

KONDOHさん、今晩は。
私はこの作品をきちんと見てないので、DVDの注文をしなきゃ、と思いました。カメラも映画も解説が上手いですね。KONDOHさんが、ですよ^^v
我が家はこのところハリウッドの1930-50年代作品に嵌っております。先日無くなられたデボラカーさんなんか本当に綺麗で可愛くて、人目惚れしました^^ゞ

スカルピアさん、こんにちは。
恐縮です。カメラも映画も、そして音楽 CD も当然ながらメーカーと何ら因果関係がありませんので、好き勝手・・・自分が思っている通り、或いは感じている通りに書いているだけなんです。

往年のアメリカ映画に登場する女優さんて、なんか気品が感じられますよね。最近の女優さんはただ綺麗なだけ・・・という感じを受ける方が多い中、不思議なんですが・・・。

 KONDOHさん、こんにちわ。
 スカルピアさんが書かれていますが、KONDOHさんには解説者としての賜物(gift)があります。

 先ほど、犬に催促されて庭に出ました。まさしく原っぱ状態ですが、Summilux50mmf1.4で撮ってみました。掲示板に、張らせていただきます。

pyosidaさん、こんばんは。
恐縮です。ただ単に好き勝手書いているだけなんです。
ズミルックス 50mm の写真、拝見しました。ボケが如何にもこのレンズらしさが出ていると思います。

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

« 北海道旅日記 (番外) | トップページ | 山田洋次の世界 「隠し剣 鬼の爪」 »