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2008年5月22日 (木)

カラヤン生誕100年 記念盤

Karajan_21

今年はオーストリア、ザルツブルク生まれの世界的指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908.4.5生)の生誕100年に当たる事は以前書きました。その生誕100年を記念して、昨年末から生前の録音がライブラリー的に再発売されている。しかしここへ来て再発売ではなく、世界初発売としてカラヤン最後の日本公演がCDとして発売された事はこの上ない喜び。音源はNHKがFM放送用にデジタル録音したものを、独グラモフォンのスタジオに持ち込んでリマスタリング仕直したもので、素晴らしい音質で聴く事が出来る。

今回発売される(された)CDは以下の通り。

1988.5.2/サントリーホール
 モーツァルト/交響曲第29番
 チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
(来月発売予定)

1988.5.4/東京文化会館
 ベートーヴェン/交響曲第4番
 ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
ユニバーサル ミュージック UCCG-1401(発売中)

1988.5.5/サントリーホール
 モーツァルト/交響曲第39番
 ブラームス/交響曲第1番
ユニバーサル ミュージック UCCG-1400(発売中)

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

この中で、なんと言っても一番の注目曲はベートーヴェン/交響曲第4番。私はカラヤンのベートーヴェンは必ずしも好きとは言えないのですが、この第4番は大変な名演奏。自分が聴いて来た数多いカラヤンのベートーヴェン/交響曲演奏のベストワンと思っている。当時この演奏を聴いた時、「え? これ本当にカラヤン?」と甚く驚いた事を忘れない。

第一楽章、カラヤンにしてはじっくりと歩を進め、カラヤンが晩年の境地に行き着いたところのベートーヴェンはこうだったのか、と思わせる大河の流れのような解釈は曲想にピッタリで、大変素晴らしい。第二楽章はカラヤンらしいテンポですが、充分メロディを歌わせ、デュナーミクも極めて自然。楽章終了間際、木管楽器の掛け合いには「う〜ん・・・」と唸ってしまう。いつもながらベルリン・フィルの木管奏者は上手い! そして終楽章も先を急がず、リズムは軽快に、この日の解釈の延長上で交響曲全集を録音仕直してくれたら、カラヤン五度目の交響曲全集は大変素晴らしいものになっただろうに・・・と実に残念。クラシック音楽ファンの方には是非この第4番を聴いて頂きたい。

「展覧会の絵」も終曲「キエフの大門」の壮大なクライマックスに向かってじっくりと、じっくりと曲を進めて行く解釈で、独グラモフォンにレコード録音したものより優れていると思う。この演奏ではベルリン・フィル主席木管奏者たちのビルトゥオーゾぶりが遺憾なく発揮されており、まさに聴きものとなっています。録音もライヴという制約が有りながらとても素敵な良い音で録られており、これも聴く価値ありです。

もう一枚のモーツァルトとブラームス。モーツァルト/交響曲第39番は如何にもカラヤンらしい流麗なモーツァルトで、最近流行の古楽器による演奏とは対極的な解釈で、好き嫌いがハッキリと分かれそうな演奏。しかしカラヤンが日本公演で良く採り上げるブラームス/交響曲第1番はベートーヴェン/交響曲第4番に負けず劣らずの名演。第一楽章冒頭から壮大な音で始まり、終楽章まで一気に聴き通してしまう。この時代、カラヤンに磨き上げられたベルリン・フィルの合奏能力にはただただ驚かされる。

このブラームスこそ、カラヤン最後の日本公演となったわけで、当時客席に居た聴衆は或る意味記念すべき公演を聴いた事になる。私は残念ながらこの日のホールには居なかった。そしてこの日のコンサートから一年足らずで帰らぬ人となる(1989.7.16没)。

来月はカラヤンお得意のチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」が発売されますが、生誕100年を記念して発売されるこの三枚、クラシック音楽ファンなら是非購入して聴く価値があると思います。最低でもベートーヴェンの第4番だけでも聴いてみて下さい。

2008年5月 8日 (木)

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番(2)

Gould

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番

グレン・グールド(p)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1957年5月26日 ライヴ収録
米ソニー・クラシカル 886972 87822

先月、BSハイビジョンで放送されたアバド指揮、ブレンデルのピアノによるベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番をご紹介させて頂きましたが、同じ曲目で興味深いCDを入手しましたのでご紹介させて頂きます。グールドとカラヤンの組み合わせ。カラヤン生誕100年を記念して未発表も含め、数々のCDが発売されていますが、今日のCDは昔LPレコードの時代にプライベート盤として発売されていたもの。今回、正規のルートを経てソニー・クラシカルから発売され、音質の方もモノラルですが聴きやすい音で収録されています。

グールドはクラシックファンならご存知のように或る時(1964年)から一切のコンサート活動をドロップアウトし、以後はスタジオ録音によるレコードのみで自身の演奏活動を行っていた極めて珍しいピアニスト。レコード録音を嫌うピアニストは数有れど、コンサートを嫌うピアニストはグールドくらいではないかと。その僅かなコンサート活動を記録したひとつがこのCDとなるわけである。昔、プライベート盤(確かイタリア盤)で発売されていた時はその手の海賊まがいのレコードにあまり興味を惹く事がなかったので購入してはいなかった。

しかし今回は正規ルートを通ってのオーソライズ盤。私も興味津々で購入する事にした。グールドの演奏は時折(というかしょっちゅう?)奇を衒うような解釈の演奏が多く、私自身は必ずしも贔屓にしているピアニストではなかった。当然今回の演奏もそれなりに驚かされる解釈を聴かされるかもしれない、と或る程度身構えてから聴き始めたのですが、意外や意外、極めて真っ当な解釈によるベートーヴェンでした。ちょっと拍子抜け。(笑)

カラヤンのサポートも交響曲を指揮した時のような忙しい解釈ではなく、正当的、或いはドイツ的とも言って良い、堂々と真正面からベートーヴェンのスコアを音にしてくれている。これが本来のカラヤンのベートーヴェンなのではないかと私は思うのですね。間もなく発売が予定されている日本最後のコンサートで演奏されたベートーヴェン/交響曲第4番、ゆったりとしたテンポで演奏された解釈、あれが本来のカラヤンなのではないかとずっと私は思っている。

フルトヴェングラー亡き後に引き受けたベルリン・フィルの終身音楽監督。ベルリン聴衆に絶大なる人気を誇っていたフルトヴェングラー色を払拭する為、カラヤンは敢えてトスカニーニ的解釈の路線を取ったのではないかと。まぁ、これは私自身の勝手な解釈ですが。

話しがカラヤンの方へ行ってしまいました。グールドのピアノ、先日聴いたブレンデルのピアノに比べると若き日のグールドのベートーヴェンは大人し過ぎて少々物足りなかった、というのが正直な感想。デビューして間もない頃のグールド、後年CBSに多くの個性的録音を残した演奏家も、こういう時代があったというひとつのモニュメントとして貴重な録音ではないかと思う。尚、このCDには同日のメインプログラムであるシベリウスの交響曲第5番も収録されています。国内盤は今月21日に発売予定。

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