カラヤン生誕100年 記念盤
今年はオーストリア、ザルツブルク生まれの世界的指揮者、ヘルベルト・フォン・カラヤン(1908.4.5生)の生誕100年に当たる事は以前書きました。その生誕100年を記念して、昨年末から生前の録音がライブラリー的に再発売されている。しかしここへ来て再発売ではなく、世界初発売としてカラヤン最後の日本公演がCDとして発売された事はこの上ない喜び。音源はNHKがFM放送用にデジタル録音したものを、独グラモフォンのスタジオに持ち込んでリマスタリング仕直したもので、素晴らしい音質で聴く事が出来る。
今回発売される(された)CDは以下の通り。
1988.5.2/サントリーホール
モーツァルト/交響曲第29番
チャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」
(来月発売予定)
1988.5.4/東京文化会館
ベートーヴェン/交響曲第4番
ムソルグスキー/組曲「展覧会の絵」
ユニバーサル ミュージック UCCG-1401(発売中)
1988.5.5/サントリーホール
モーツァルト/交響曲第39番
ブラームス/交響曲第1番
ユニバーサル ミュージック UCCG-1400(発売中)
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
この中で、なんと言っても一番の注目曲はベートーヴェン/交響曲第4番。私はカラヤンのベートーヴェンは必ずしも好きとは言えないのですが、この第4番は大変な名演奏。自分が聴いて来た数多いカラヤンのベートーヴェン/交響曲演奏のベストワンと思っている。当時この演奏を聴いた時、「え? これ本当にカラヤン?」と甚く驚いた事を忘れない。
第一楽章、カラヤンにしてはじっくりと歩を進め、カラヤンが晩年の境地に行き着いたところのベートーヴェンはこうだったのか、と思わせる大河の流れのような解釈は曲想にピッタリで、大変素晴らしい。第二楽章はカラヤンらしいテンポですが、充分メロディを歌わせ、デュナーミクも極めて自然。楽章終了間際、木管楽器の掛け合いには「う〜ん・・・」と唸ってしまう。いつもながらベルリン・フィルの木管奏者は上手い! そして終楽章も先を急がず、リズムは軽快に、この日の解釈の延長上で交響曲全集を録音仕直してくれたら、カラヤン五度目の交響曲全集は大変素晴らしいものになっただろうに・・・と実に残念。クラシック音楽ファンの方には是非この第4番を聴いて頂きたい。
「展覧会の絵」も終曲「キエフの大門」の壮大なクライマックスに向かってじっくりと、じっくりと曲を進めて行く解釈で、独グラモフォンにレコード録音したものより優れていると思う。この演奏ではベルリン・フィル主席木管奏者たちのビルトゥオーゾぶりが遺憾なく発揮されており、まさに聴きものとなっています。録音もライヴという制約が有りながらとても素敵な良い音で録られており、これも聴く価値ありです。
もう一枚のモーツァルトとブラームス。モーツァルト/交響曲第39番は如何にもカラヤンらしい流麗なモーツァルトで、最近流行の古楽器による演奏とは対極的な解釈で、好き嫌いがハッキリと分かれそうな演奏。しかしカラヤンが日本公演で良く採り上げるブラームス/交響曲第1番はベートーヴェン/交響曲第4番に負けず劣らずの名演。第一楽章冒頭から壮大な音で始まり、終楽章まで一気に聴き通してしまう。この時代、カラヤンに磨き上げられたベルリン・フィルの合奏能力にはただただ驚かされる。
このブラームスこそ、カラヤン最後の日本公演となったわけで、当時客席に居た聴衆は或る意味記念すべき公演を聴いた事になる。私は残念ながらこの日のホールには居なかった。そしてこの日のコンサートから一年足らずで帰らぬ人となる(1989.7.16没)。
来月はカラヤンお得意のチャイコフスキー/交響曲第6番「悲愴」が発売されますが、生誕100年を記念して発売されるこの三枚、クラシック音楽ファンなら是非購入して聴く価値があると思います。最低でもベートーヴェンの第4番だけでも聴いてみて下さい。
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