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2008年11月10日 (月)

二人の椿三十郎

Tsubaki_02

東宝映画「椿三十郎」2007年製作
監督 森田芳光
出演 織田裕二、豊川悦司、中村玉緒、藤田まこと、小林稔侍、松山ケンイチ、西岡徳馬 他

映画「椿三十郎」といえば、映画ファンなら知らぬ者はいないと言っても過言ではない、巨匠 故黒澤明監督の娯楽時代劇としてあまりにも有名な作品ですね。昨年秋、その黒澤作品のうち三本がテレビと映画で当時使われた脚本を使い、カット割り迄黒澤作品に忠実にリメイクされました。その三本とは「天国と地獄」「生きる」「椿三十郎」です。

さて、映画として本格的に製作されたのが「椿三十郎」。主役 椿三十郎にはなんと織田裕二さんが演じていますが、昨秋、本ブログで私は「ちょっとイメージが違うなぁ・・・」と書いております。結局劇場に観に行く事はなかったのですが、幸い最近CSデジタルハイビジョン放送で放映されましたので観てみました。オリジナルの黒澤作品は1962年1月1日公開されているようで、モノクロ作品。私は何度目かのリバイバル上映の時にようやく観る事が出来た。

Tsubaki_01

これがオリジナル、三船敏郎さん演じる椿三十郎。この作品の前に大傑作「用心棒」が作られており、椿三十郎のキャラクターはその「用心棒」でのキャラクターを引き継いでいますが、話しとしてはまったく繋がりはありません。私がこれらの作品をリバイバル上映で観たのは十数年くらい前だったか。鮮烈な感動を覚えました。

「用心棒」は昨秋、CSデジタルハイビジョン放送されたモノを録画し、大切に保管してあります。録画したモノをすでに二回観ておりますが、繰り返し観ても素晴らしい作品です。で、今日の「椿三十郎」ですが、ともに演じているお二人、三船敏郎さんと織田裕二さんは映画製作時はほぼ同世代との事ですが、申し訳ないですが貫禄が違い過ぎますね。

如何にも武家社会から外れたアウトロー的浪人を完璧に演じている三船敏郎さんに対し、織田裕二さんは家を継ぐ事が出来ない次男坊三男坊で、我がまま言って家を出た坊ちゃん侍、というキャラクターに感じてしまうのですね。森田芳光監督がメガフォンを取った「椿三十郎」もオリジナル脚本(黒澤明、菊島隆三、小国英雄)を忠実に映画化しているので、セリフもほとんど一緒。しかしどうも織田裕二さんのセリフは軽く聞こえちゃうのです。私自身はやはりミスキャストだと思うのですが。

リメイクするにあたって、何も三船敏郎さんのキャラクターまで真似する必要はない、と言われれば確かにそうなのですが・・・。では今、「用心棒」と「椿三十郎」を演じられる役者さんは誰だ? と訊かれても、思い浮かばないですねぇ。三船敏郎さんのキャラクターを超えられる役者さんはいないでしょう・・・。

もう一人大事な役柄が敵方に仕えている剣の使い手、室戸半兵衛。椿三十郎と映画のラストで壮絶な果たし合いをするのですが、オリジナルはこれまた黒澤作品に欠かせない名優、仲代達矢さん。リメイク作品の方は豊川悦司さんです。豊川悦司さんも好演しているのですが、仲代達矢さんの演技を知っている後ではやはり物足りなさが残ってしまいます。

で、オリジナルの果たし合いシーンは黒澤演出の見事さを味わえるこの映画最大の見せ場なんですが、森田芳光監督はこのシーンだけ黒澤作品とは違う演出を取っています。それは観てのお楽しみとして此処では書きませんが、私としては「ちょっと森田監督、考え過ぎだったのではないですか?」という感想を抱きました。

そうそう映画のラスト、「用心棒」では世話になっためし屋の親爺(東野英治郎さん)に、「椿三十郎」では若侍たち(加山雄三さん、田中邦衛さん他)に「あばよ!」と振り向き様に言って颯爽と去って行くのですが、この名ゼリフも織田裕二さんは軽過ぎました。やはり過去の名作をリメイクする事の難しさを痛感した次第です。

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コメント

織田裕二さんでないと観客動員はできない、が彼は『踊る大捜査線』に至るキャラが売りですから辛いでしょうね。存在感が軽すぎるような。
森田芳光さんはとにかく『家族ゲーム』が凄かったですが最近はどうなのでしょう?

クッチさん、こんにちは。
なるほど、観客動員ですかぁ・・・。しかし織田裕二さんのファンって、時代劇なんか観ますかねぇ・・・?
もともと軽いキャラが売りの人ですから、重厚な浪人役なんてもっとも正反対の役だと思うのですが。
監督業も全盛期というものがあると思ってます。才能を使い果たした後の作品はがっかりするモノが良くあります。
黒澤作品も1970年代以降、「どですかでん」以降は観るべきモノがなくなったように個人的には感じています。劇場の大きなスクリーンでリアルタイムで観ているわけではないのですが、古いモノクロ作品なんか家で観ていても「凄い!」と感じますので。

Kondohさんおはようございます。
椿三十郎、夢等黒沢作品の好きな人は多いようです。私も好きです。
ブログを拝見しCVDで楽しみたいとおもいました。
作品はリアル感がにじみ出ているからでしょう。リメイクするにしても全く同じものでなく蜘蛛の巣城は「マクベス」を七人の侍は「荒野の七人」などのように形を変えた作品であるべきでしょう。
以前、鉄道員や任侠映画の降旗康男監督と出会うきっかけがありました。その際監督の考えと引き出す力は必要だが、演技は演ずる役者が監督のイメージを理解し造りだすもので任せるしかない。監督は内面まで入りこむことはできない。映画の善し悪しは役者により決まる。
という趣旨の話がありました。
黒沢作品と比較することは映画産業の衰退、人材不足、不況下の経費のことも考えると仕方がないのかと思います。ましてこの頃は日本に展望と目標が存在した時代でした。
新しい人が出てITを活用した映像が創作されることを期待したいものです。
長くなりましたが、しみじみ考えさせられた文章でした。


tokiwaiさん、こんにちは。
モノクロ時代の黒澤作品は素晴らしいので、歴史を紐解くような感じで愛好しております。
降旗康男監督のお言葉、なるほど・・・と感じました。プロデューサーが選ぶ役者さんが如何に重要かという事ですね。
おっしゃるように黒澤作品が生まれていた時代背景は、これから高度経済成長に向かう明るい日本というものがあったのですね。それに対し、今の映画産業は衰退の一途ですから、スタッフも含めて人材不足は否めないと思います。
映画ファンのひとりとして、劇場に行って迄観たい!と思わせる作品が少なくなっているのも、これまた残念ではあります。

初めまして、紗知と言います。
今年の春、女性向けのカメラ雑誌で紹介されていたライカのデザインが気に入ってしまい、お店の人に薦められたM6と50ミリレンズを中古購入し、本格的に(?)写真を始めました。それまでデジカメでシャッターを押せば撮影出来ていましたので、お店の人に露出の事を説明されてもまったく理解出来ませんでした。でも最近、ようやくまともに撮れる様になりましたが、失敗の連続でした。
購入直後ネットでいろいろとライカで検索していたらKONDOHさんのブログに行き当たり、以後毎日拝見させて頂いています。素敵なお写真ばかりで、私もこういうふうに撮れたらいいな~といつも思っています。
先日の箱根のお写真もとても素敵でした!実は私、箱根に比較的近い平塚に住んでおります。なのに箱根は全然行っていないんですよ。KONDOHさんの素敵なお花のお写真を拝見して、私も行ってみようと思っちゃいました。
実は今日、思い切って初めて書き込みさせて頂いたのは、母が年甲斐もなく織田裕二さんの大ファンで、この映画もむりやり連れて行かれて見ていたのです。母に今さっき三船敏郎さんの椿三十郎を知っているか聞いてみたのですが、知っているけど見てはいないとの事でした。KONDOHさんのブログを母に見せたら、レンタルで借りて来て、と言われました。私も一緒に見てみます。
初めての書き込みなのに、長くなってごめんなさい。

以前のコメントに書いたかも知れませんが、
洋画ばかり見ているもので、新しい邦画は全然見ていません・・
先日、ライブドアのキャンペーンでも"パンドラ"と言う邦画が有って、応募して送ってもらったのですが、
まだ、見ずじまい(笑
それなら、応募するなと言われそうですけどね(^_^;)

でも、映画は楽しいですよね、昨日テレビでやったいたスーパーマンリターンズを見たのですが、いつものイメージと違う感じでしたね。

紗知さん、はじめまして。
ライカ M6を購入されたそうですね。ライカはとても良いカメラです。ただデジカメをお使いになっていてフィルムカメラ、それもライカですとかなり戸惑われた事と思います。何しろフィルムカメラでもニコン、キヤノンといった国産オートフォーカス一眼レフカメラならシャッターを押すだけで綺麗な写真が撮れますが、ライカはそうは行きませんですから。でも、根気よくお使いになられていたようで何よりです。大事にお使い下さいませ。
露出の事ですが、一番手っ取り早いのは ISO 100のフィルムを入れたら、晴れた日、シャッターを 1/250秒、絞りを f8にしてピントを合わせてシャッターを切れば普通に写ります。フィルムの箱に書いてある通りでも結構です。でも最近はまともに撮れるとの事ですから、以上の事は蛇足だったかもしれませんね。
お母様は織田裕二さんの大ファンですか。そのお陰で観たくもない・・・でもないのでしょうか、ともかく映画に連れて行かれたとか。この映画、どんな感想を抱かれたのでしょうか? 私は否定的な意見を書いているので心配です。
これからも、よろしくお願い致します。

konekoさん、こんばんは。
夜の撮影に出掛けていたので遅くなりました。
そうですね、konekoさんは邦画はほとんどご覧になられないのですよね。でも、いろいろとキャンペーンに当るのですね。羨ましいです(笑)
スーパーマンリターンズは私も観ましたですよ。そうですね、ちょっとイメージの違うスーパーマンでした。この作品も後に続くのでしょうかねぇ?

少し乗り遅れましたが、映画の話題なので一言。
私は黒澤明の大ファンでDVDは全作品を揃えてしまった馬鹿者です。
そんな黒沢ファンの私もKONDOHさんの織田裕二論には賛成です。KONDOHさんや私の様にオリジナルの三十郎ファンにとって三船敏郎さんのイメージを払拭させるのは最早不可能です。
しかし、どうせリメイクするなら全く違う織田三十郎のイメージ確立して欲しかったですね。三船三十郎の口調や台詞まわしを意識しすぎたからガチンコ勝負になっちゃったんです。勝負になりません。
最後にカラーの赤い椿よりモノクロの椿の方が赤く見えたのは何故?

Kenclipさん、こんばんは。
黒澤作品、全部揃えられていらっしゃるのですか! 凄いです。
おっしゃるとおり、リメイクするなら三船三十郎に捉われることなく、織田三十郎で演出した方が良かったでしょうね。ガチンコ勝負して敵うわけないですから。ただ映画製作にあたって、黒澤プロのバックアップを受けて(テレビ版も)いて、脚本に忠実に作る事になったようですね。テレビ版の「天国と地獄」「生きる」も同様でした。「天国と地獄」はそこそこ良かったですが。
赤い椿の件ですが、黒澤監督は椿のシーンだけはカラーで、それも椿だけ赤にしたいと考えたそうですが、当時の技術ではそれは無理との事で、「白い椿」を「黒く塗って」赤に見せたそうです。
その後、「天国と地獄」では同じくモノクロ作品ながら、或るシーンだけ一部分色が付きますね。お分かりだと思いますが。監督は椿をああいう風にしたかったのでしょうね。

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