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2009年7月16日 (木)

007/ロシアより愛をこめて

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「007/ロシアより愛をこめて」 1963年 イオン・プロ製作

原作 : イアン・フレミング
監督 : テレンス・ヤング
音楽 : ジョン・バリー、主題歌 : マット・モンロー
出演 : ショーン・コネリー、ダニエラ・ビアンキ、ロバート・ショウ、ロッテ・レーニャ、ペドロ・アルメンダリス 他

イオン・プロ製作による映画は22本になりますが、シリーズ第2作の本作品がもっともスパイ映画らしさが出ていると思います。ちなみに原作である小説を書いている作家、イアン・フレミングは英国海外秘密情報部(現MI6)で実際にスパイ活動をしていた人で、引退後、自身の経験などをもとに007シリーズとなったスパイ小説を書き残したのです。それがハリー・サルツマンとアルバート・R・ブロッコリの目に留まり、一本(カジノ・ロワイヤル)を除いて二人が映画化の権利を得たわけです。

小説の冒頭でフレミングは以下の事を記しています。

この小説の事件はともかく、背景の大部分は正確な事実にのっとっている。スメルシュは今日も実在しているし、ソ連政府でいちばん秘密にされている部だ。この本が書かれた1956年はじめ、本国ならびに海外におけるスメルシュの勢力は四万人ぐらいで、グルボザボイシコフ将軍がその長になっている。この将軍の人相その他についてのわたしの描写は正確だ。
現在スメルシュの本部は、この本の第四章に書いたとおり、モスクワのシレテンカ通り13番地にある。会議室のようすも事実に忠実に描写したし、そのテーブルを囲んだ各情報機関の長たちも、この物語の場合と同じような目的で、ちょくちょくその部屋に召集される実在の官僚たちである。 1956年3月 イアン・フレミング

と、あります。スメルシュとはスマイエルチ・シュピオナム(スパイ死すべし)を詰めた言葉で、フルシチョフ首相によって解体され、改めて「KGB」が組織されたそうです。スメルシュはソ連にとって敵対する人物を抹殺する機関だそうで、映画だけの作られた話しではなかったのです。イアン・フレミングの小説はCIAの長官その他の人たちも、当時の実在の人物名を使っているので、実にリアルなスパイ小説となっています。私も小説を読んで、初めて各国のスパイ機関が実在しているのだと知ったくらいです。怖~・・・。

Bond

間単に本作のストーリーを述べますと、犯罪組織「スペクター」はノオ博士(第1作)を抹殺したボンドに復讐するため、スメルシュからスペクターに寝返っているローザ・クレッブ大佐に、ボンドを辱しめて抹殺する事を命じる。イスタンブールのロシア領事館に勤務しているタチアナ・ロマノヴァが、資料の写真を見てボンドに一目惚れ。自分をロンドンに亡命させてくれるなら、手土産に最新暗号解読機「レクター」を持参するとの事。罠と分かりつつ、暗号解読機が喉から手が出るほど欲しい英国情報部は、ボンドをイスタンブールに派遣する。果たしてボンドは無事にレクターを手にする事が出来るのか・・・。

久しぶりに原作を読み直したのですが、映画は実に忠実に原作を映画化していますね。原作と映画が大きく違うところを挙げておきますと、原作はボンドを辱しめて抹殺しようとしているのはスメルシュですが、映画では犯罪組織「スペクター」がスメルシュとの間に入ってボンドを辱しめて抹殺しようとしているところですね。
それと映画ではオリエント急行から脱出したボンドとロマノヴァがモーターボートを使ってベニスに逃れようとしますが、原作ではこのシーンはまったくありません。映画的効果を考えた脚本家の勝利ですね。

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映画を初めて日本公開しようとした時、原題の「ロシアより愛をこめて」ではスパイ映画らしくないという事で、当時のユナイト映画日本支社に勤務していた故水野晴郎(後の映画評論家)さんらが考えた邦題が「007/危機一発」だったそうです。「一発」は本来なら「一髪」ですが、これも「一発」の方がスパイ映画らしいという事でわざと変えたそうですが、水野さんの後日談によると教育委員会から漢字が間違っているとクレームがあったそうな。(笑)
1972年、リバイバル公開された時にタイトルを原題「From Russia, With Love」に戻しております。

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この映画でボンドが原作通りアタッシェケースを携行していますが、この映画が公開されるや、ビジネスマンにあっという間にアタッシェケースが広まったそうです。そうそう、オリエント急行が有名になったのもこの映画のお陰ですね。

そのオリエント急行の中でスペクター(原作はスメルシュ)が送り込んだ殺し屋、レッド・グラントとボンドとの格闘シーンは凄いリアルですね。テレンス・ヤング監督最高の演出だと思います。カメラワークも素晴らしい! 私はこのシーンこそ自分が観て来たあらゆる映画の格闘シーンの中でも、最高のシーンだと思っております。ショーン・コネリーとロバート・ショウは本当に素晴らしい演技でした。賞賛に値します。

もうひとつ原作と映画の違う箇所、ボンドとトルコ支局のケリムが映画の看板から脱出しようとするブルガリア人の殺し屋クリレンコを射殺するシーン、原作ではマリリン・モンローの映画「ナイアガラ」の看板ですが、映画ではサルツマンとブロッコリが同時製作していた映画「腰抜けアフリカ博士」の看板に変わっており、ヒロインのアニタ・エグバーグの口からクリレンコが出て来ます。

また原作、映画とも最後にボンドとローザ・クレッブ大佐おばちゃんとの格闘がありますが、映画では毒刃を仕込んだ革靴に難渋するボンドをロマノヴァが救ってくれますが、原作では毒刃に足を刺され、ボンドは気を失って倒れるところで終わっています。その時助けに来ていたのがフランス支局の旧友ルネ・マチス。このルネ・マチスはダニエル・クレイグの「カジノ・ロワイヤル」と「慰めの報酬」に登場していましたね。

ご参考までに小説の発表順は、

「カジノロワイヤル」1953
「死ぬのはやつらだ」1954
「ムーンレイカー」1955
「ダイヤモンドは永遠に」1956
「ロシアより愛をこめて」1957
「ドクター・ノオ」1958
「ゴールドフィンガー」1959
「007の冒険(短編集)」1960
「サンダーボール作戦」1961
「私を愛したスパイ」1962
「女王陛下の007」1963
「007は二度死ぬ」1964
「黄金銃を持つ男」1965

映画化は原作の順番とは随分違いますね。映画的効果の上がる作品から映画化したのでしょう。ちなみに映画で登場する組織、スペクターは原作では「サンダーボール作戦」から登場します。日本が舞台の「007は二度死ぬ」でスペクターのボス、ブロフェルドが最期を遂げますが、映画では「ダイヤモンドは永遠に」でしたね。

007を観るなら今日の「ロシアより愛をこめて」は絶対観なければいけませんよ。(笑)
ローザ・クレッブ大佐を演じているロッテ・レーニャ、もう・・・素晴らしい女優さんですね。原作のキャラクターを見事に演じております。もう、この人以外クレッブを演じられる人はいなかったのでは、と思わせる名演技です。プライベートのご主人は作曲家のクルト・ワイル。

殺し屋レッド・グラントを演じているロバート・ショウも原作通りの冷たいキャラクターで、これまた最高の演技でした。ロバート・ショウは後年、パニック映画の元祖「ジョーズ」に出演していましたから、どなたもご存知だと思います。主役のロイ・シャイダーとホオジロザメ狩りに行く際、船を出したあの人物。最後にホオジロザメに食われてしまうシャーク・ハンターを演じていた人です。レッド・グラント役とは全然違うキャラクターでしたが。

長くなりましたが、音楽を担当しているジョン・バリーがこれまた素晴らしいスコアを書いています。以後、007シリーズの音楽には欠かせない人になってしまいました。最後の作品は「リビング・デイライツ」です。007がヒットした一因にジョン・バリーの音楽があったからと言っても過言ではないでしょう。 ブルーレイディスクの画質、最近の映画かと見間違えるくらい見事な画質です。

余談ですが、この映画はソビエト連邦では上映禁止になった作品だそうです。それはそうでしょうね、スメルシュの実在の人間がそのままの名前で登場しているわけですから。

2009年7月15日 (水)

バド・パウエルのこと

Powell

何年振りかでレコードを買いました。買ったモノは写真左の10インチ(25センチ)LPレコード。ただし中古レコードです。帯を見ると発売されたのは1999年4月28日となっています。このレコードは内容より(内容も良いですが)、とにかくジャケット写真の素晴らしさで有名で、オリジナル盤が中古市場に出た場合は10万以上、数十万円の価格が付くでしょう。それだけ状態の良いオリジナル盤が少ない貴重盤というわけです。

10年前、東芝EMIさんがモダンジャズの名門レーベル、ブルーノートの初期10インチLPを復刻限定発売したうちの一枚です。中古とはいってもジャケットは汚れもなく綺麗、盤もこれまた聴いてなかったのでは? と思わせる傷ひとつない状態の良い盤質です。

もう何年になるか、ほとんどクラシック音楽しか聴いていない時期の或る日、たまたま流していたFM放送から心地良いジャズピアノが聞こえて来まして、番組の終わりまで聞き入ってしまいました。これは入手したいと思い、調べてみたらこの演奏でした。

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黒人ジャズピアニスト、バド・パウエルが晩年パリのクラブで演奏した時のライヴ盤。アルバムタイトルから分かるようにセロニアス・モンクの曲を中心に演奏したピアノ・トリオ。ジャズなんてまったく聴いた事がない私ですが、すっかり気に入ってしまい、以後現在に至るまでの大愛聴盤になってしまったわけです。

ジャズを聴くようになる切っ掛けを作ってくれたバド・パウエル。その後、ジャズ専門誌の案内にしたがってパウエルの名盤と言われているものを順に買ってみるのですが、評論家が絶賛するそれらの名盤はちっとも良いとは思わないのでした。評論家曰く、パウエルの絶頂期は1940年代後半から50年代初期まで、との事。

ところが私は晩年、1950年代後半から60年代前半、亡くなる前までの演奏が実にリラックスして聴けるので、私の愛するパウエルはもっぱらこの時代の演奏なのです。テクニックは衰えていますが、人間味溢れるそれらの演奏は何度聴いても飽きる事がないです。

さて、今回購入したレコードは1953年8月、ブルーノートに録音された評論家曰くパウエル絶頂期の演奏らしいです。確かに素晴らしいとは思いますが、繰り返し聴きたいとはそれほど思わないのです。しかしこのレコードはジャケットを眺める為に購入したようなもので、私はそれで満足です。(笑)

自宅でレコードを聴くのは久しぶりです。間違いなく今年初めて。昨年も恐らく一回しか聴いてないのではないかと思います。でも昨日、このパウエルのレコードが切っ掛けとなって、ジャズとクラシックのレコードを何枚か聴きました。プレイヤーに付いていたカートリッジはシュアー V15 typeIIIというMM型カートリッジの名器。

レコードを交換する際、別のカートリッジに交換しようとしたら、そのカートリッジの適正針圧が何グラムだったか記憶が曖昧。(笑)
如何にレコードプレイヤーに触れなくなったかが分かりますね。しかし久しぶりに聴くアナログレコード、曲間のサーフェイスノイズが懐かしかったです。これからしばらくは、またレコード三昧になりそうです。

2009年7月 6日 (月)

夜の羽田空港

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羽田空港、夜の着陸シーンを撮影してみようと城南島に行ったのですが、ほんの20分くらいで撤収でした。午後8時過ぎに到着したものの、駐車場は9時で閉鎖。おまけに向かい風が大変強く、波しぶきが遠慮なく飛んで来ます。(笑)

カメラもレンズも、私も結構潮を被ってしまうので早めに切り上げました。駐車場も閉鎖時間が迫っていましたし。今日の写真はISO 100、絞りf11、シャッターは15秒です。ところでフォーサーズセンサー、長時間露光ではノイズが結構出る事を発見しました。やはり小さいセンサーを高画素化したための弊害でしょうか。

光跡は旅客機の着陸シーンです。管制塔がハッキリ写っていますね。右端はランウェイ Bコースの着陸進入灯です。今度はもう少し早く行ってじっくり動画を撮ろうと思っています。レンズにフィルターを付けていて良かったです。帰宅後確認したらフィルターが潮でべとべとになっていましたから。

PANASONIC Lumix GH1 + G VARIO HD 14-140mm/f4-5.8 ASPH. /MEGA O.I.S

2009年7月 3日 (金)

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲(2)

Suwanai_2

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲 ホ短調

諏訪内晶子(vn)
ウラディミール・アシュケナージ指揮
チェコ・フィルハーモニー管弦楽団
2000年9月 チェコ、ドヴォルザーク・ホールで録音

美しい! ホントに美しい演奏です。ですが感動はしなかった。

6月23日の本ブログでアンネ=ゾフィー・ムターのエネルギッシュな素晴らしい演奏をご紹介させて頂いたばかりですが、本日も同曲の・・・今回はCDのご紹介。いつも行っているCDショップで英デッカの輸入盤がこれはまた安い価格で売られていたので、試しに聴いてみるか、と購入したものです。

1990年のチャイコフスキー国際コンクールで全審査員一致による第一位を獲得し、日本のクラシック音楽界の話題をさらったヴァイオリニスト。ところが私は今まで諏訪内さんの演奏を聴いた事が一度もなかったのです。演奏そのものより、「美貌で売っているヴァイオリニスト」、というイメージが先行し、CDを購入した事も、FM放送ですら一度も彼女の演奏を聴いた事がありませんでした。

で、この価格なら、という理由で上述したように初めて諏訪内さんのCDを購入したわけです。演奏そのものは最初に書いたようにとても美しい演奏で、ケチの付けようがありません。従来からイメージするメンデルスゾーンの楽想を十全に出し切った演奏だと思います。

諏訪内さんの解釈はテンポをじっくりと取り、レガート、またレガート、という感じで、メロディをとにかくしっとりと良く歌います。アンネ=ゾフィー・ムターの、時にアタックの鋭い音色とダイナミックな演奏を聴いて打ちのめされた後だけに、諏訪内さんの解釈は今の私には物足りなかったです。でも、初めてメンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を聴いてみたいと思う方には、諏訪内さんの演奏はお薦め出来ます。

諏訪内さんは1972年、東京生まれ。海外でも引っ張りだこのヴァイオリニストで、CDもかなりの枚数を出しています。今日ご紹介のCDにはチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲もカップリングされておりまして、これもまたメンデルスゾーンと同様の解釈。美しいチャイコフスキーです。俗にメンチャイといって、昔からヴァイオリニストを売り出したい時にレコード会社がこの二曲をカップリングしたレコード、CDを出したがりますね。

ところで諏訪内さんがお使いのヴァイオリンは往年の大ヴァイオリニスト、ヤッシャ・ハイフェッツが使っていた1714年製のストラディヴァリウス「ドルフィン」だそうで、日本音楽財団から長期貸与されているそうです。

そこで諏訪内さんのチャイコフスキーを聴いた後に、ハイフェッツのチャイコフスキーも聴いてみようと、久しぶりにCDを取り出して聴いてみました。いや~・・・、個性的でまさにハイフェッツのチャイコフスキーです。オケを指揮しているフリッツ・ライナーも流麗とは程遠い個性的な解釈。こういった解釈を新人がコンクールで演奏したら、多分総スカンを食うでしょうね。

しかし同じヴァイオリンとは思えないほど、諏訪内さんとハイフェッツの音色は違います。奏者が違うと同じ楽器で、こうも変わるものなのですね。

最後にアシュケナージの指揮ぶりに触れておきますと、諏訪内さんの解釈をアシストするように、アシュケナージもレガートを多用した流麗な演奏で華を添えています。ムターをアシストしていたクルト・マズアの凡庸な指揮ぶりとは一味違いました。

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