
007/消されたライセンス 1989年 米英合作
(原題 License to Kill)シリーズ第16作
監督 : ジョン・グレン
音楽 : マイケル・ケイメン、主題歌 : グラディス・ナイト
出演 : ティモシー・ダルトン、キャリー・ローウェル、ロバート・ダヴィ、タリサ・ソト、ロバート・ブラウン、デスモンド・リュウェリン、ペドロ・アルメンダリス Jr. 他
ロジャー・ムーアの後を引き継いだ四代目ジェイムズ・ボンド、ティモシー・ダルトンの007映画。しかしこの作品後、ダルトンはボンド役を下りてしまうわけで、結局前作「リビング・デイライツ」との2本を演じただけ。本国イギリスで評判がイマイチだったらしいのですが、当時存命中のダイアナ妃が「シリーズ最低のボンド」と言ったとか言わなかったとか、これが原因で僅か2本でダルトンは下ろされた、などと漏れ伝わっていましたが、実際のところは分かりません。
しかし私はダルトンのボンド、結構好きなんですよね。ロジャー・ムーアこそシリーズ最低のボンド役と思っている私としては、ショーン・コネリー的男臭さが溢れたボンド役だと思います。ただコネリーほどのスマートさはないですが。その代わりコネリー時代のような緊張感が映画に出ていたように感じています。
ストーリーの方はイアン・フレミングの原作を一通り映画化し終わったため、この作品からはまったくのオリジナル・ストーリー。しかしながら以前映画化した「死ぬのは奴らだ」の原作でカットされたエピソードを使ったり、短編「珍魚ヒルデブラント」から登場人物を持って来たりと、ところどころフレミングの原作を挿入しています。
長年の親友、フェリックス・レイターと共に麻薬王サンチェスを捕えたものの、麻薬捜査官キリファーの裏切りでサンチェスは護送車から逃げてしまう。そのサンチェスは報復として挙式を挙げたばかりのレイター夫妻を襲い、妻デラを殺害し、レイターには鮫に襲わせて瀕死の重傷を負わせる。
帰国の途についていたボンドは空港でこの事を知り、レイターの家に急行するが、そこで見たものはすでに死亡している新妻デラと、足を鮫に食いちぎられたレイターだった。ボンドは上司Mから別件任務を命ぜられるものの、命令に背いてレイターの復讐に走る。よってボンドはMから「殺しのライセンス」を剥奪され、英国情報部員としての資格も失ってしまう。
しかしながらMの秘書マネーペニーや秘密兵器係Qの協力を得てサンチェスの本拠、中南米へと潜入し、サンチェスの足下に潜り込む事に成功する。そこで見たサンチェスの麻薬密輸方法とは? 更には香港の麻薬取締官も入り込んでおり、果たしてボンドはレイターの復讐を遂げる事が出来るのか?
とまぁ、大筋はこういったところですが、前述した原作「死ぬのは奴らだ」からのエピソードとは、レイターが鮫の生贄にされるシーンなんです。で、この映画が撮影された頃は南米コロンビアからの麻薬密輸(米国などに)が世界のニュースとして話題になっていた時代で、サンチェスもコロンビア辺りの麻薬王という設定です。
また、この映画で中南米の某国大統領を演じていた俳優さんはペドロ・アルメンダリス Jr.という人なんですが、この名前を聞いて「アッ!」と思った人は相当な007マニアですね。(笑)
そうです、「ロシアより愛をこめて」でボンドに協力するトルコ支局の局長、ケリム・ベイを演じたペドロ・アルメンダリスの息子さんなのです。お父上は「ロシアより愛をこめて」を撮影中、すでに癌に冒されていて、撮影終了後拳銃自殺しています。
さてこの映画のクレジットタイトル、カメラファンは大注目ですよ。冒頭でオリンパス OM-4がどアップで写されますので。恐らく当時、大変な宣伝効果だったのではないかと思います。
僅か2本で下ろされてしまったダルトンのボンド役、前作「リビング・デイライツ」もストーリーはなかなかの出来でしたので、勿体なかったですね。常に冷静に動き回るボンドを演じており、そういう意味ではコネリーのボンドに共通するものがあると思います。ロジャー・ムーアのボンドはただコミカルなだけで、全然緊張感を感じるキャラクターではなかったですから。また脚本も漫画的ストーリーで駄作の繰り返しだったですね。ちょっと手厳しいかな?(笑)
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