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2010年1月30日 (土)

松竹映画「なつかしい風来坊」

Yamada

「なつかしい風来坊」  1966年、松竹作品

出演 : ハナ肇、倍賞千恵子、有島一郎、中北千枝子、真山知子、犬塚弘、他
脚本 : 森崎東、山田洋次
音楽 : 木下忠司
監督 : 山田洋次

今日(1月30日)、山田洋次監督の最新作「おとうと」が全国一斉公開される。山田監督にとって「十五才、学校 IV」以来、10年振りの現代劇になるようです。前作「母べえ」は戦中戦後のストーリーでしたから、なるほどそうなるのですね。間に時代劇三部作がありましたから、久しぶりの現代劇でもあり、公開を楽しみにしていました。

何度かこちらで書いている事ですが、私がもっとも尊敬する映画監督が山田洋次さんです。山田作品に一貫して描かれているテーマは「家族」であり、そこには親子の愛、兄弟愛、そしてその登場人物個々の恋愛など、常に人間の生き様を見る事が出来るのですが、中でもアウトローと評される世間一般常識から外れた人物を主人公に据える作品が多い。

本作「なつかしい風来坊」もそういった常識に掛からない労務者、源五郎(ハナ肇さん)が主役で、その源五郎に翻弄されるのが中流階級の或る公務員一家。その公務員を演じるのが個性的俳優の有島一郎さん。素晴らしい俳優さんでしたよね。

実はこの作品を知ったのはデジタル放送など無い時代のテレビ放送。見終わった後、さすが山田監督作品と感銘を受け、後にDVDを入手したわけです。

通勤電車の中で出会った労務者、源五郎とひょんな事から意気投合した良吉(有島一郎さん)は、家族が嫌がるのもお構いなしに源五郎を一晩家に泊めてしまう。以来、源五郎は度々良吉の家に出入りし、頼まれた家の営繕などを難なくこなして行くうちに良吉の家族からも重宝される存在に。

或る時、自殺を図ろうとした若い娘(愛子 : 倍賞千恵子さん)を救った源五郎が良吉の家に運んで来る。良吉一家の看病もあり、回復した愛子はそのまま良吉の家でお手伝いさんとして住み込む事になるのですが、いつしか源五郎は愛子に恋心を抱いてしまう。それを知った良吉の計らいで源五郎と愛子は一緒に映画を観に行く事に。

映画の帰り、公園で愛子の身の上を聞いた源五郎が愛子の手を握ろうとすると、びっくりした愛子はごみ穴に落ちてしまう。愛子を助けようとした源五郎ですが、それが大きな誤解を生む事に。豹変した良吉の家族から大きな不信感を抱かれた源五郎は過去の余罪から警察に逮捕されてしまい、さらには愛子も良吉の家から出て行ってしまう。

あれほど笑いが絶えなかった良吉家は再び元の冷んやりとしたムードの家族に逆戻り。おまけに良吉には八戸への転勤命令が下り、家族から総スカンを食った良吉は寂しく単身赴任する事に。しかし八戸への電車の中で良吉が見た光景とは・・・。

源五郎役のハナ肇さんが最高の演技です。こういうキャラクターを演じさせると非常に上手い人でしたね。良吉が小さな庭石をお金を出して買っていた事を知ると、石なんて金を出して買うものじゃねぇやね~と、源五郎が舎弟たちを使って河原から最高の石を庭に持って来たり、「今度は無口でしとやかな美人でも拾って来てもらいますか・・・」なんて呟いていると・・・、或る日源五郎が若い娘を背負って走って来るのです。このシーンには笑えましたねぇ・・・(^^)

ところでこの映画のラストシーン。胸にジーンと来るものがあるのですが、この作品を見て『あぁ・・・、名作「遥かなる山の呼び声」のラストシーンはこの作品が原型だったのだなぁ・・・』と思いました。しかし山田洋次監督はこの作品のラストシーンを評して後年、「甘すぎた・・・」とおっしゃったそうです。

しかし私はあのラストが有ったからこそ、この映画が救われたのだと思うのです。作品後半のやるせなさ・・・、ラストが救ってくれました。是非、皆さんにもこの作品をご覧になって頂きたいです。レンタル屋さんに在庫していると思いますので。

ちなみにこの作品は当時のブルーリボン賞の主演男優賞(ハナ肇さん)と監督賞を受賞しているそうです。私はもう何回観た事か・・・。好きな作品です。

※ 昨晩、久しぶりに観直してみたら、一部に思い違いの箇所がありましたので、加筆修正致しました。(1/31)

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コメント

おはようございます。
この作品、知りませんでした。見てみたいですねぇ。しかし、KONDOHさんは本当に勧め上手です^^
お話をうかがっていると、なんとなく寅さんにも通じる感じがしますね。有島一郎さんは、若大将シリーズがとても印象に残っています。おしゃれで飄々とした風貌、よい役者さんでしたね。

koukoさん、おはようございます。
勧め上手に乗ってご覧頂ければ、と思います。(笑)
そうですね、寅さんに通じるところがあると思います。山田さんはあぁいうキャラクターを主役に据える事が多いですね。世間から見放されているような人にも人格はあるのだと・・・。
有島一郎さん、ホントに飄々とした風貌、大好きな役者さんでした。

KONDOH さん、こんにちは☆
あの「遥かなる山の呼び声」のラストシーンとは、殺人罪で刑期が確定した主人公の田島(高倉健)が網走へ移送される列車の中でチンピラやくざの虻田太郎(ハナ肇)が風見民子(倍賞千恵子)とともに演じた場面ですね。感動的でした。このシーンで使われた黄色いハンケチは山田監督の「民子」三部作の1本である『幸せの黄色いハンカチ』との連関をつよく感じます。私はこの映画を留学中(1970年代)の真冬の北京の映画館で中国語の字幕付きで看ました。虻田の好演は文化的なバックグラウンドの異なる中国人観衆には正確に理解できなかったらしく、場内にはクスクス笑いが起き、私は異文化理解の難しさを感じたのです。日本映画を国際市場に出そうとすると、どうしても晩年の黒沢明の作品のように表現がどこか無国籍的になってしまいます。山田洋次監督には決して黒沢趣味に走らないで、みずからの持ち味を維持し続けてほしいと思います。

KONDOHさん お久し振りです。。。

この作品 知りませんでした!

いやぁ~~山田洋二監督は、尊敬する 大好きな監督さんなので
早速見たいと思います!
監督には、これからもお元気で 素晴らしい作品を生み出して頂きたいでsね。。。

一葉さん、こんばんは。
「遥かなる山の呼び声」のラストシーンは印象的ですよね。初めて見た時、私は涙してしまいました。民子が渡すハンカチが黄色いハンカチ・・・上手い演出ですよね・・・。
一葉さんは北京でご覧になられたのですか。ラストシーン、虻田のする事に我々は笑えませんが、北京では笑われてしまいましたか・・・。やはり文化が違うのですね。
山田作品「学校」の中で夜間中学に通う中国籍の男性が就職先に先ず最初に問う事が給料は幾ら出してくれるのか?という事なんですが、中国では当たり前の事が日本では或る意味非常識な行為とも言えるわけで、竹下景子さん演じる先生に窘められても「どうしていけないか?」というシーンがあります。映画にも文化の違いがあるわけで、難しいところです。

マリアさん、こんばんは。
80歳近い山田監督、お元気でこれからも傑作を生み出して頂きたいです。
すっかり廃れてしまった邦画の世界、もう山田監督だけが頼りという感じですね。

こんばんは。
残念ながら、この映画は未見でした。
しかし、KONDOHさんの記事を読んで本日会社の帰りに借りてきました。
明日、しっかりと観賞させてもらいます!

Kenclipさん、こんばんは。
おお、DVDを借りて来られたのですね。
私の記事が参考になったという事で、私としても大変嬉しいです。
明日、じっくり楽しんで下さい。

こんにちは。
数日郷里に帰っていたのですが、たまたまテレビでやっていた「母べえ」を見ました。たぶん一人で見ていたらボロボロ泣いていたと思います。「おとうと」は是非映画館で見てみたいと思います。

ビワさん、こんばんは。
「母べえ」をご覧頂きましたか。
悲しい映画ですね。しかしあのお話しは実話に基づいたストーリーなので、それだけにやり切れないですね。

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