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2010年9月 2日 (木)

グールドの「運命」

Gould_01

ベートーヴェン/交響曲第5番ハ短調 「運命」 (リスト編曲)

グレン・グールド(ピアノ)

1967年11月~12月、1968年1月 ニューヨークで録音

米SONY BMG MUSIC 8697148062

このCDは一昨日購入したばかりの一枚。行き付けのCDショップで結構前からグレン・グールドが米CBS(現SONY BMG)に残した音源が一枚僅か790円という安さで売られているのを店頭で見て知っていたのですが、必ずしもグールドのファンではない私は見送っておりました。

しかし以前からこの録音だけは聴いてみたいと思っていた事もあり、今回買い物ついでに購入してみたわけです。ベートーヴェンの第5交響曲、日本では「運命」というサブタイトルが付いていますが、幾らクラシック音楽に興味がないと言っても、この曲を知らない人はいないでしょう・・・。いや、正式な曲名を知らなくても必ず何処かであの「ジャジャジャジャ~ン・・・」というメロディはお聴きになった事があるでしょう。

そうです、ベートーヴェンを代表する運命交響曲です。とは申しましても交響曲ですから本来は大編成のオーケストラで演奏される曲ですね。しかし今日のCDは一台のピアノで弾いているのです。実はこの曲、ハンガリー生まれのピアニスト兼作曲家のフランツ・リストがピアノ曲に編曲しているのです。それも9曲あるベートーヴェンの交響曲全部をです。しかし演奏会でもあまり採り挙げられる機会は少なく、精々この第5番が演奏されるくらいでしょうか。

さて、グールドの演奏ですが、テンポの動きが尋常ではないくらいに動きます。まぁ、管弦楽曲をピアノで弾くわけですから、通り一遍の解釈で弾いていたらオーケストラに敵うわけないのですから、これはこれで結構楽しめました。ご参考までにカラヤンがドイツグラモフォンに初めて録音した時の演奏時間と比べてみますと・・・、

カラヤン指揮 ベルリン・フィル (1962年録音)

第1楽章---7分07秒 (提示部のリピートあり)
第2楽章---9分52秒
第3楽章---4分42秒
第4楽章---8分57秒

グールド (ピアノ)

第1楽章---5分56秒 (提示部のリピートなし)
第2楽章---14分29秒
第3楽章---7分00秒
第4楽章---11分33秒

第1楽章の演奏時間の違いは主題提示部のリピートをカラヤンはスコア通り忠実に演奏しているのに対し、グールドはリピートを省いておりますから演奏時間の違いはこれが大きな差になっています。しかし第2楽章以降、グールドのテンポは尋常ならざる遅さ。

第1楽章冒頭、ベートーヴェンが「かくして運命は扉を叩く」と弟子たちに言ったという逸話が残る例の運命のモチーフから実に真っ当に曲は進み、第1楽章は管弦楽をただピアノに変えただけ、という感じで終わります。

ところが第2楽章以降こそグールドの持ち味が発揮されています(好みは別として)。大変ゆったりとした第2楽章のコーダ(終結部分)ではこのまま止まってしまうのでは・・・と思わせるほどの解釈。もしこのテンポをオーケストラを前にして指揮者が執っても、多分持ちこたえる事は出来ないと思います。これこそソロピアノの強みでしょうね。

第3楽章、地下深くから呻き声が聞こえて来るような導入部の後、あの運命動機による軽快なスケルツォのテーマが金管楽器で奏でられるのがオーケストラ版ですが、グールドの演奏にはそうした軽快さはあまり感じられない。ところがトリオ(中間部)のチェロとコントラバスで奏でられる楽しいメロディ、ここはオーケストラ版に負けないほどグールドの演奏も素晴らしいです。曲本来が持っているリズミカルな面もグールドは実に軽快に弾いています。そして運命動機が静かに繰り返しながら続いて行き、そのまま曲は途切れる事なく終楽章へと・・・、

第4楽章冒頭、あの壮大な第一主題をグールドはオーケストラに負けないくらい荘厳に弾いて行きます。そして運命動機そのままの第二主題では強弱を実に上手く使い、一気にテンポを落とした主題提示の終結部。いや、お見事です。ここではスコア指定のリピートは省いてそのまま展開部へと入って行き、運命動機の展開では時折左手を強調したりしてなかなか楽しませてくれます。コーダではそのまま一気にたたみ込むようなテンポで終わるのかと思いきや、意外と遅めのテンポでもって曲は終わります。う~ん・・・、この辺はちょっと食い足りないなぁ・・・。

とは申しても、充分堪能させてくれたグールドのピアノでした。ただ私にとってグールドのCDは今日のCDでようやく三枚目の購入。初めて購入した一枚が2008年5月8日付けの記事にしたこのCDです。↓

Gould_03

カラヤンとの共演によるベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。1957年5月の演奏会ライヴ。奇を衒う演奏のイメージが強い(私には)グールドですが、この演奏では至極真っ当に演奏していて、普通のピアニストです。(^^;

二枚目に購入したのがこれです。↓

Gould_02

バッハ/ゴルトベルク変奏曲

1955年6月、ニューヨークで録音

米SONY BMG MUSIC 82876698352

こちらは一回目の録音(モノラル)の方です。何故これを購入したか。それはオリジナル盤のジャケットを再現した紙ジャケット仕様で、更には何と168ページものページ数のハードカバーブックレットが付いた箱入りの限定盤だったからです。はい、その装丁に惹かれました。(笑) それでいて千数百円という価格は安く感じましたから。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲の記事でもご紹介したように、グールドは1964年から一切のコンサート活動から身を引き、以後はスタジオ録音によるレコードでのみ演奏活動をした極めて珍しいピアニストです。スタジオ録音を嫌うピアニストはおりますが(ミケランジェリとか)、コンサートを嫌うピアニストはちょっと他にはいませんですよねぇ・・・。

米CBSに多くの録音を残したグールドですが、それらのCDが激安価格で売られている昨今、私もこの機会にもう少し聴いてみようかと考える今日この頃です。今日の「運命」はなかなか興味深い演奏ですよ。

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コメント

こんばんは。

ご紹介のグールドのCDが、あるショップの入り口に陳列されていますね。私は、いつもこの入り口の棚から奥の方に移動していくのですが、グールドがずいぶん長いこと陳列されているので、最近はパスしています。

グールドはバッハ中心に前からいろいろ持っていましたが、ベートーヴェンは持っていないかもしれません。

今回のセールでは、モーツァルトのソナタ集を5枚買いましたが、セット販売のものより安かったのかどうかちょっと。演奏は個性的で楽しめますね。

ゴルドベルク協奏曲は、新旧の録音を持ってまして、一杯飲みながらよく聴いてますよ。ベートーベンは、ワーグナーが編曲した第九のピアノ版を持ってまして、これまたお気に入りなんです。運命のピアノ版は是非聴いてみたいですね。

おはようございます。
演奏時間の比較、面白いですね。こんなに違うんですね。そういえば、随分CDショップに行っていないような気がします。それどころか、暑さのせいで、ほとんど買い物に出かけていないような!

yymoonさん、おはようございます。
新宿店ですね。(^^)
横浜も同じようにずっと陳列してあるのですが、安いけどなぁ・・・と、素通りしておりました。
バッハで一躍有名になった人のようですが、ゴルトベルクは楽しめました。
モーツァルトですか。安い今のうちに少しずつ購入してみます。

スカルピアさん、おはようございます。
グールドをお聴きでしたか。ワーグナー編曲の第九は聴いた事がないです。しかしこれも面白そうですね。運命もお聴きになってみて下さい。

koukoさん、おはようございます。
クラシックは演奏で印象が随分変わります。同一楽曲を何種類も持つのはそこが面白いわけです。
単純に演奏時間だけでも演奏家によって違いが出て来ます。使っている楽譜は一緒なのに・・・。

KONDOHさん、こんにちは。
おすすめの1枚、早速ネットで「ポチッ」といきました。
オーケストラでの演奏は持ってますが、ピアノでの演奏というのは聞いたことがありませんでした。
楽しみに待ってみます。
それにしても、KONDOHさんに紹介されると買いたくなってしまう気持ちが高ぶるのは何故でしょう?
レコード・クラッシック業界にとっては最高のセールスマンですね(笑)。

ろだごんさん、こんばんは。
おお、ご購入されましたか。オーケストラ版は耳にタコでしょうけれど、ピアノ版はまた違った面白さがあります。編曲もリストですからピアノの良さを最大限生かしていると思いますので。それとピアノで聴いてもベートーヴェンはベートーヴェンである事に変わりはありません。やはり名曲です。
私の駄文でご興味をお持ちになって頂けるなんて、大変光栄です。

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