ベートーヴェン/交響曲第6番 ヘ長調「田園」、交響曲第5番 ハ短調「運命」
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1977年11月16日 東京・杉並、普門館でのライヴ収録
TOKYO FM TMFC-0027
ベートーヴェン/交響曲第4番 変ロ長調、第7番 イ長調
ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
1977年11月15日 東京・杉並、普門館でのライヴ収録
TOKYO FM TFMC-0028
自分が生まれる前に活躍したアーティストや、自分が聴いていないコンサートの演奏を聴けるレコードやCDといったメディアは音楽好きの私としては非常に有り難いです。レコードを発明したエジソンに感謝しないといけないですね。
なんと1977年11月、カラヤン/ベルリン・フィルにとって4年振り、5度目の来日コンサートのライヴ収録、それもベートーヴェンの交響曲全曲を連続で演奏する、所謂ベートーヴェン・チクルスのライヴCD全5枚が発売された。全5枚の内容は上記2枚の他、下記の通り。
交響曲第1番、第3番「英雄」 1977年11月13日 TFMC-0025
交響曲第2番、第8番 1977年11月14、17日 TFMC-0026
交響曲第9番「合唱つき」 1977年11月18日 TFMC-0029
一昨日、私はこの全5枚を購入しまして、当日の夜と昨晩、今日ご紹介の2枚を先ず聴きました。クラシック・ファンならよくご存じの通り、カラヤンのベートーヴェンはやや速めのテンポによるスタイリッシュな演奏。結論から申し上げますと今日の2枚の演奏はいずれもカラヤンのベートーヴェンとして大変な名演揃いです。
カラヤンはスタジオ録音によるベートーヴェン交響曲全集を1950年代、1960年代、1970年代、1980年代の都合4回録音しています。1950年代のモノラル録音のみ英EMIで、後の3回はいずれもドイツ・グラモフォン。私は1980年代以外の三種の全集を持っていますが、年を経る毎につまらなくなる印象を持っています。1980年代の全集については第5番「運命」、第9番「合唱つき」のみ持っていますが、自分の好みではないです。
カラヤン/ベルリン・フィルによる「運命(二度目の全集中の演奏)」「未完成」でクラシック入門を果たした私ですが、この「運命」の演奏以外は聴いていても結構醒めていました。特に1970年代の全集は購入した以上、「義務」で聴いていたようなもので、全然面白くない、感動しない録音でした。
で、この普門館で行われたベートーヴェン・チクルスは何の感動も受けなかった3回目のスタジオ録音を終えてからの来日公演。したがって時期的にはほぼ重なるのに、このコンサートの演奏は凄い!
やはりカラヤンもアーティストなのですね。計算し尽くされ、ミスは何回も録り直しが利くスタジオ録音と違い、一発勝負の聴衆を前にした演奏ではこれほど「燃える」ものだと再認識致しました。
「運命」、ベルリン・フィルによる緻密なアンサンブルと贅肉を削ぎ落したかのようなカラヤンの解釈による演奏は生演奏らしい、曲の迫真に迫るような素晴らしい名演です。特に終楽章は超名演と言っても良いでしょう。
そしてカラヤンのベートーヴェン解釈が一番合っていると以前から思っているのが第4番なのです。いや~・・・この第4番もまた素晴らしいです。晩年、最後の日本公演で演奏したやや遅めのテンポによる第4番も良かったですが、この普門館で演奏された第4番こそカラヤンらしさが充満したベートーヴェンではないでしょうか。私はカラヤン最高のベートーヴェンだと思います。
あまり好みではなかったカラヤンの第7番。スタジオ録音での演奏はどれもただ落ち着きのない解釈に聞こえてしまった演奏でしたが、この普門館での演奏は凄い! 鬼気迫る、というのはこういう演奏を言うのではないかと。初めてカラヤンの第7番に感動しちゃいました。
さて「田園」です。これもいつも通りややテンポの速い演奏。第一楽章に付けられている表題、「田舎に着いた時の楽しい気分」というより、田舎に着いて即ジョギング(笑)、というような趣ですが、これも全曲通して聴いてみるとカラヤンイズムに溢れた演奏ではないかと思います。
こうして2枚聴いただけで残り3枚を残していますが、残りの曲も充分期待を持って良いのではないかと思っています。多分、当時の日本公演はカラヤン/ベルリン・フィルが最盛期、ピークを迎えた時ではないのかと実感した次第。これらの演奏を普門館で聴けた人たちが羨ましいです。
もちろんベートーヴェンの交響曲には朝比奈さん、更には大昔の録音になりますがフルトヴェングラーなど、より一層素晴らしい名演が残されておりますが、1977年の普門館ライヴはカラヤン最高のベートーヴェン演奏を記した記念碑的コンサートだという事を2枚のCDを聴いて思った次第です。
これでカラヤンのベートーヴェン交響曲全集は5種(正規盤に限り)になったわけですが、もし私がどれが好みですか?と訊かれたら、残り3枚を未聴の状態の現状でも文句なく1977年の普門館ライヴです、と答えるでしょう。
これからクラシックも少し聴いてみようか・・・と思っている方がおられましたら、今日の2枚から入門してみて下さい。期待に答えてくれると思いますよ。キッパリ!
最後に今回使われた音源をご紹介しますと、当時のFM東京が2トラック 38cm/sec. でライヴ録音したテープから正規ルートを通ってCD化されております。肝心の音質ですが、左右に広がりがあり、前後の奥行き感も感じられる録音で、鑑賞するにあたってまったく過不足のない名録音である事を付け加えておきます。
最近のコメント