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2011年3月21日 (月)

松竹映画「家族」 山田洋次監督作品

Kazoku

松竹映画「家族」 1970年度 芸術祭参加作品

出演 : 倍賞千恵子(風見民子)、井川比佐志(風見精一)、笠智衆(風見源蔵)、前田吟(風見力)、木下剛志(風見剛)、瀬尾千亜紀(風見早苗)、花沢徳衛、太宰久雄、森川信、渥美清、三崎千恵子、春川ますみ 他

脚本 : 山田洋次、宮崎晃
音楽 : 佐藤勝

監督 : 山田洋次

1970年製作、同年キネマ旬報ベストテン一位

人間にとって一番悲しい出来事は肉親との死別だと思います。今回の東北関東大震災では多くの家族が悲しく辛い別れをする目に遭ってしまいました。家族の絆を津波という自然災害が壊してしまったわけです。

私が尊敬する映画監督の山田洋次さんは常にその「家族」をテーマに映画を製作している事は折に触れ、ここで私が申しているのはご存知の事と思います。今日ご紹介する山田作品はタイトルそのものがズバリ「家族」です。

この作品、長崎県の西彼杵郡(にしそのぎぐん)伊王島という小さな島に住む風見精一、民子夫婦が1970年4月6日、島を捨て、北海道の開拓村、中標津で酪農家になる事を夢見て一家で列車を乗り継いで北海道まで行く姿をドキュメンタリータッチで描いた傑作です。傑作という言葉では足りないくらいの素晴らしい作品です。

高齢の父源蔵は途中広島県福山市に住む精一の弟、力(つとむ)夫婦に預けようと力宅を訪れたものの、会社勤めの給料で生活が毎日苦しいと、婉曲に父を受け入れるのは無理という事を話す力を見て、民子はじいちゃんも一緒に北海道に行こうと源蔵に勧める。

大阪に向かう電車に乗り込んだ精一一家を力が餞別を渡して「じゃぁ父ちゃん、元気でのう・・・」と見送ろうとすると父源蔵が、「お前も元気でなぁ・・・、ひょっとするともう、これで会えんかもしれんばい・・・」と悲しげな言葉。父を見る力の目には薄っすらと涙が・・・。帰りの車で泣きながら運転する力。自分の不甲斐なさを悔やみながらの運転でしょうか・・・。

大阪に到着した精一一家。丁度万国博覧会が開催されている大阪、映像はまさにこの時代の喧騒を上手く見せてくれます。そして新幹線に乗って大都会東京へ。しかし長旅で具合を悪くした赤ん坊の早苗が幼い命を落としてしまいます。クリスチャンの一家は教会で早苗の葬儀をするも、小さな骨壷を抱えた民子がガード下で泣き崩れるシーンにはこちらも涙をそそられました。

青函連絡船で他人の赤ちゃんの鳴き声を聞いて「島に帰りたかぁ・・・」と再び泣き崩れる民子。我を忘れた精一は民子を怒鳴ると父源蔵が精一へ厳しいひと言。笠智衆さん、味わいのある俳優さんですね。余談ですが、青函連絡船のカットで旅の行きずりの男が笑わせてくれるのですが、この男を演じているのは渥美清さんです。(笑)

ようやく北海道の大地へ。島を出た時は暖かい春なのに、北の大地はまだまだ雪に覆われています。根室本線の車窓からは長崎の小島では見られない風景が。

中標津では精一の友人が待ち構えていて案内をしてくれるものの、雪に覆われた広大な北の大地を呆然と見る精一夫婦。その時精一が「民子・・・、これはえらかとこに来てしもうたばい・・・」とポツリと本音を。

しかしここでもまた思わぬ辛い別れが・・・。

山田洋次さんの作品、どれを見ても必ず「あぁ・・・、見て良かったなぁ・・・」という熱い感動が胸に残ります。1970年製作ですからかなり古い作品で、当時の貨幣価値などが分かるシーンもありますし、何より高度経済成長に向かう国内の様子が良く分かる作品でもあります。是非、多くの方にご覧になって頂きたいと思います。

「家族」、良い言葉ではないですか。

さて、長崎県の伊王島というのは架空の島かと思っていたのですが、調べてみたら実在の島で、人口総数に対してカトリック教徒の比率が日本でも一番高いところなんだそうです。この映画の風見一家がカトリック教徒の設定だった事に、なるほど・・・と思ったものです。

尚、この作品は山田洋次監督の「民子三部作」のうちの一作とも言われています。ちなみに他の二作は、「故郷 (1972年)」と「遥かなる山の呼び声 (1980年)」で、いずれもヒロインは民子という名前。もちろん倍賞千恵子さんが演じているのは言わずもがなですね。

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コメント

こんにちは。
小津安二郎の映画に通じるものがありますね。
こういうしみじみとした映画、最近は全く見ていません。機会があったら見てみたいです。

ビワさん、こんばんは。
多分そうなのでしょうね。ただ恥ずかしながら私は小津安二郎さんの映画を一本も見た事がないのです。
しかし来月、NHKで「東京物語」のハイビジョン・リマスター版が放送されるようなので、しっかり見たいと思います。

毎度の事ながら見事な解説で,私はこの映画を観たような気分であります^^

カメラ共々芸術の深さに感服!
SWC/M,80㎜のようには中々いきません。しかし、楽しみでもあります。

スカルピアさん、こんにちは。
今回は大分ストーリーに突っ込んでしまいましたが、実際の映画はもっといろいろなエピソードがあります。機会がありましたらレンタルなどでご覧になってみて下さい。

ramble-leicaさん、こんにちは。
SWC/Mをご購入されましたか。名機ですから結果が付いて来ます。楽しんで下さいませ。

はじめまして。毎日、楽しみに閲覧させていただいております。本日、ご紹介の「家族」、私も山田監督の作品は好きでよく見ていますが、この作品、かねがね彼の最高傑作の一つだと思っておりました。といいつつ何年も見ていないのですが、KONDOHさんの見事な紹介文を読んで、改めてみたくなりました。私事になりますが、私はちょうど、この映画に出てくる子供と同じくらいの世代、高度成長末期の生まれです。今語られるその時代は、どちらかというと明るく活力があふれていたようですが、この映画を見ていると実態は必ずしもそうではなく、その中で親達は必死になって自分達を育ててくれたのだなあと感慨が湧き上がって胸が熱くなりますね。また、そういう理屈抜きにしてもこの作品に定着している日本の山河のなんと美しいことか。そして、いつかKONDOHさんのカメラで終着駅たる40年後の道東風景が紹介されることを願ってやみません。

C51225さん、はじめまして。
拙ブログをご覧頂きまして、ありがとうございます。
「家族」、ホントに素晴らしい作品ですよね。私は何回見ている事か。山田作品はどの作品も繰り返し見ておりまして、その度新たな発見があったりで、飽きる事がありません。
この映画に見られる当時の日本、まだまだ経済的にゆとりがある時代ではなかったのでしょうね。丁度この時代から右肩上がりに高度経済成長を迎えて行ったのではないでしょうか。
私の家は両親共働きでした。母とは16歳で別れ、以後父は家事をしながら働いて私と妹を育ててくれました。父には随分苦労をさせております。この映画で笠智衆さん演じる父源蔵と私の父(三年程前亡くなっています)とがダブりまして、特にこの映画には親近感を感じております。恐らくこの時代の父親たちは皆さん一生懸命だったのだと思います。
おっしゃるようにこの映画に見られる日本の自然風景は美しいですね。私が北海道に魅せられているのは山田作品の影響がかなりあります。北海道の自然風景、これからも撮影に出掛けたいと思っております。
今後ともよろしくお願い致します。

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