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2011年4月 7日 (木)

松竹映画「東京物語」デジタル・リマスター版

Odu

松竹映画「東京物語」 1953年製作

NHK BSプレミアム放送によるハイビジョン・デジタル・リマスター版

監督 : 小津安二郎
脚本 : 野田高梧、小津安二郎

出演 : 笠智衆、東山千栄子、原節子、杉村春子、山村聡、三宅邦子、香川京子、大坂志郎、東野英治郎 他

4月4日から放送が始まったNHK BSプレミアム(3月までのNHK-BSハイビジョン)の「山田洋次監督が選んだ日本の名作100本」という番組、二年の歳月を掛けて山田洋次監督が選んだ日本映画100本を放送するというもの。なんと素敵な番組を企画してくれたものとNHKに感謝したいです。

で、最初の一年は「家族」をテーマにした映画を50本放送。如何にも山田洋次監督らしいではないですか。放送初日は小津安二郎監督の「東京物語」でした。海外でも大変評価の高い作品という事は私も知っているのですが、恥ずかしながら一度も観た事がなかったので、今回のハイビジョン・デジタル・リマスター版による放送は絶好の機会と喜んで録画しました。

ストーリーは今更私がご説明するまでもないと思いますので簡単に。尾道に暮らす平山周吉(笠智衆さん)、とみ(東山千栄子さん)夫妻は長男幸一(山村聡さん)夫妻宅を久し振りに訪ねるものの、幸一も長女志げ(杉村春子さん)も自分の仕事が忙しくてかまってあげる事が出来ない。

しかし戦死した次男の嫁であった紀子(原節子さん)がずっと独身を通しており、この紀子が実の子供たち以上に暖かく迎えてくれ、それなりに満足して周吉夫妻は尾道に帰る。ところが帰ってから幾らも経たない或る日、東京の子供たちのところへ「母危篤」の電報が・・・。

物語はオープニングから実に淡々と進んで行きます。周吉夫妻が尾道に帰って行くところまでで映画は一時間半ほど経過。昔の日本映画は一時間半くらの長さが多いので、私は「あれ? これで映画は終わり・・・?」と一時は拍子抜け。ところが周吉夫妻が帰郷後、「母危篤」の電報が子供たちに届いた事によってストーリーは思わぬ展開に。やはり起承転結があってこそ物語は成り立ちます。

映画終盤、周吉と紀子ふたりの会話には心打たれました。ふたりの会話の中に夫婦、親子とはどういう絆で結ばれているものなのか。子を思う親の心とは反対に子供は成長して行くにしたがって親から心が離れて行ってしまうのか。そして年老いて行く事の寂しさ。人を愛する事ってどういう事? 等々、実に考えさせられます。

両親の世話を焼く事がついつい面倒になる長女志げを見ていると、その後の(現代の)日本の親子関係を予想したような設定に少々驚かされます。この映画が作られた時代でもこういう親子関係が早くもあったのかなぁ・・・と思ってしまいます。その志げの役を演じている杉村春子さんはさすがの演技ですね。見ているこちらが「・・・たく、憎ったらしいなぁ・・・」と思っちゃいますから。(笑)

夫を戦争で亡くし、以来ひとりでずっと暮らして来た紀子が独り身の女の本音を周吉に吐露するシーンもとても印象に残りました。

映画の最初、ご近所の奥さんが出掛ける前の周吉夫妻に声を掛けるシーンがあります。実はこれがラストシーンへの伏線にもなっているのですが、こういう手法は映画の典型的手法で大変効果がありますね。この奥さんが再登場する事によって、周吉の心境をいっそう寂しいものにさせています。

余談ですが、山田洋次監督が松竹に入社した頃は小津安二郎監督の作品をまったく評価していなかったそうです。山田監督は黒澤作品の「七人の侍」や「椿三十郎」などを評価していたのですが、或る日、黒澤明監督のお宅を訪れた時、黒澤監督がこの「東京物語」を自宅でじっと見ているところに出会ったそうで、黒澤監督が「東京物語」を大変高く評価するのを聞き、自分の考えが変わって来たと言う事を話しておりました。意外なエピソードですね。

さてNHKによる古いフィルムのデジタル修復、実に見事です。60年近くも前の古いフィルムですから、それなりに・・・というか相当な劣化(傷やノイズ)があったようですが、唖然とするくらい綺麗な映像です。番組の冒頭で修復前と修復後の映像を見せてくれましたが、いやびっくりです。私は見終わってから早速ブルーレイ・ディスクに焼いて保存盤と致しました。

「家族」をテーマにした名作50本。第一回は「東京物語」ですが、一年後の第五十回は山田洋次監督の「家族」が放送されます。

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コメント

おはようございます。
この企画、お好きな山田洋次監督選ですから、きっとこちらで取り上げられると思っておりました^^ 私も「東京物語」「二十四の瞳」と録画しました。しかし50本とは凄い企画ですね。楽しみです^^

あっ、50本ではなくて、100本でしたね。失礼しました^^; もっと凄い!

こんにちは
私も「東京物語」「二十四の瞳」録画したものを昨日夜の更けるのを忘れ、二本立てで観てしまいました。デジタルリマスターの画像は本当に綺麗でした。NHKありがとうの気持ちは小生も同じです。
両作品とも巨匠監督さんの素晴らしい采配での映像は圧巻ですね。
「東京物語」の銀座松屋と思いますが外部階段から降りる際の有楽町か日比谷方面だと思いますが国会議事堂の塔が映っていたような気がしました。当時の情景を垣間見ることの楽しみもありますね。

koukoさん、こんばんは。
録画されましたですか。画質が良かったですね。「二十四の瞳」も素晴らしい作品です。今回の企画、最高ですね。

camecameさん、こんばんは。
二本続けてご覧になったのですか。凄いです。
「二十四の瞳」、高校生の時に小説を読んでおりまして、大変感動していましたので、初めてこの映画をテレビで見た時にはもらい泣きしてしまいました。
「東京物語」、当時の風景と現在とではあまりにも違い過ぎますが、おっしゃるように違いを楽しむ事が出来るのも映画のお陰ですね。

こんばんは。
「二十四の瞳」は気がついて録画しましたが、「東京物語」はできませんでした。ハイビジョン・デジタルリマスターはデジタルリマスター自体がDVDのものと違うということなのでしょうか。
私は、小津安二郎のDVDボックス第1集と第2集つまり後期の代表作10作を持っていますが、もし違うとなれば録画できなかったはとても残念です。

東京物語は小津作品の中でもとりわけ良い作品ですね。ステレオタイプな家族物語ではありますが、うまい役者と淡々とした演出が素晴らしく、感動してしまいますね。

yymoonさん、こんばんは。
今回のデジタル・リマスターは以前DVD化を目的にリマスターされたものではなく、放送のためにNHKが全面的に協力した新たなるデジタル・リマスターだそうです。とにかく素晴らしい出来映えでした。
私は初めて観たのですが、これが小津作品かぁ・・・という感じで観ました。素晴らしい作品です。

こんにちは。
小津監督生誕100年の時にデジタル修復された
ものからマスタリングしたんでしょうね。DVDのも
それからのはずです(解像度は違いますが)。
オリジナルは1コマ45MBあると、その時の関係者に
聞きましたので、ブルーレイ版を期待しています。
小津作品は、80年代前半にあったレトロスペクティブ
で衝撃を受けて以来、中毒状態(^0^)です。

KONDOHさん、こんちは。「東京物語」は完成直後にオリジナルネガが焼失してしまい、今、見られるのはその時、すでに完成していたポジの複写版と聞いております。またこのデジタル修復には、クレジットにもありますが撮影助手として参加した方が、まだご存命で、監修されており、ある意味、公開当初よりも小津監督の意図に近い映像のようです。まあ、そんな背景知識を抜きにしても、この素晴らしい作品が美しい状態で見られたのは感激しましたし、原節子絶頂期の輝くばかりの美しさには瞠目しました。

kv492さん、こんばんは。
詳しい事は分からないのですが、DVD化された時のデジタルリマスターとは別で、今回新たにNHK主導でデジタルリマスターされたと聞いております。
いずれにしても素晴らしい結果に驚いております。

C51225さん、こんばんは。
火災でオリジナルが焼失したそうですね。実にもったいない事ですね。
オリジナルからでないのに、あれだけ見事に修復されたのですから今回の放送は記念碑的だと思います。
撮影助手が参加されたとの事ですが、恐らくかなりの時間を要したと思う今回のリマスター、このマスターを是非市販するべきでしょうね。

今回の放送を満を持して録画いたしました。レコーダーからHDMIケーブル経由で液晶ディスプレイ(解像度1920×1080)で再生すると、4:3のオリジナル映像が16:9の横長に伸びて映っていました。何故でしょう?

RYUUCHIさん、こんにちは。
再生側のディスプレイの再生モードが「フル(16:9)」になっていますと横長の映像になってしまいます。再生モードを4:3にするときちんと再生されると思います。

回答ありがとうございます。PC用の液晶ディスプレーですので再生モード設定ができないようです。ホームシアターをやっていますが、プロジェクターが古い機種のせいか同じ現象になっています。地デジテレビを
買って再生してみます。

RYUUCHIさん、
あとはレコーダーの再生設定でいじれるかどうか・・・だと思います。

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