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2012年3月18日 (日)

私の愛聴盤 第7回

Dsc_0120

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番ト長調

フリードリッヒ・グルダ(ピアノ)
ホルスト・シュタイン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1971年1月録音

ロンドンレコード K38C 70021(廃盤)
(発売元・キングレコード)

久しぶりに私の愛聴盤をご紹介させて頂きます。ベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番で、ドイツ出身のピアニスト、フリードリッヒ・グルダによる演奏で、指揮者ホルスト・シュタインと共に録音したピアノ協奏曲全集中の一枚。

クラシック音楽ファンからするとグルダというピアニストは一癖も二癖もある、少々変わり種と申しますか、あまり一般受けしないピアニストというイメージがあると思います。音楽活動はクラシック音楽の世界だけに止まらず、ジャズシーンにも登場して即興演奏を繰り広げているピアニストで、クラシック曲の演奏自体もなかなか個性的な解釈をする人です。

ところがシュタインとウィーン・フィルをバックにスタジオ録音したベートーヴェンのピアノ協奏曲全集は実にオーソドックスな演奏で、尚且つ大変な名演奏を繰り広げています。ピアノ協奏曲全5曲の中でも第5番「皇帝」と今日ご紹介する第4番が飛び抜けて素晴らしいです。

ベートーヴェン時代までの古典的協奏曲というと、先ず管弦楽による主題提示が行われる協奏風ソナタ形式が普通でした。ところがベートーヴェンはこの第4番で、いきなりピアノから登場させるという試みを行っており、後世の作曲家に大きな影響を与えている有名曲。

冒頭、グルダのピアノによる第一主題が静かに奏でられ、後を追うようにウィーン・フィルの素晴らしい音色の弦が同じく主題を奏でると、もう私はこの名曲に気持ちが入り込んでしまいます。煌びやかなスタインウェイとは対照的に、ややひなびた音色を持つベーゼンドルファーを弾くグルダのピアノは実に優しい音色で、ウィーン・フィルの音色とも実に息が合っていると思います。

グルダのピアノに寄り添うシュタインの指揮ぶりがこれまた絶妙なのです。時にホルンの強い強奏が割って入るところなど、協奏曲とはいえ「そうだ、これはベートーヴェンの曲なのだ」という事を実感させてくれます。英デッカの録音がまた優秀で、極端な話し「音」を聴いているだけでも心地よくなる事請け合いです。今まで数多くの演奏を聴いて来ましたが、管弦楽に関してはシュタインの指揮が私にとってのベストワンと言って構わないでしょう。あ、グルダのピアノもです。(笑)

第一楽章のカデンツァをじっくり聴いてみて下さい。グルダの演奏テクニックには唖然とさせられますが、それだけでは終わらずベーゼンドルファーの音色がグルダの素晴らしい演奏解釈を後押ししているようにすら聞こえて来ます。

短い第二楽章も淡々と進んで行くようでいて、実に味わい深いです。冒頭を始め、ところどころで聴かれる低弦の鳴らし方の絶妙さ! シュタインの合いの手の上手さは圧巻です。

そして軽快な主題から始まる第三楽章冒頭。管弦楽の踊るような主題提示の後、グルダのコロコロ転がるような音色とメロディに思わずこちらの体が宙に浮いたような感じすら受けてしまいます。管弦楽の強奏とピアノとの交歓は繰り返しますが絶妙です。協奏曲を聴く楽しみがこの両者の演奏全体に窺う事が出来ます。

グルダという名前で敬遠していたクラシック音楽ファンの方には是非お聴き頂きたいベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集です。その中でも第4番、第5番は絶対にお薦め!
いえ、クラシック音楽を敬遠している方々にもお聴き頂きたい名曲、名演ですよ。

尚、今日ご紹介したレコードは嘗てキングレコードさんからシリーズで発売された「ザ・スーパー・アナログ・ディスク」という限定プレスのレコードです。通常盤のレコードも持っているのですが、断然こちらの方が音が良いです。今となっては中古レコードでも探して頂くほかないのですが・・・、

現在は一枚1,000円のCDで発売されているようです。↓ 第3番とのカップリングですが、この第3番も素晴らしいです。要するに全5曲、素晴らしい演奏なのです。(笑)

Gulda
ユニバーサル ミュージックから発売中

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コメント

このグルダのレコード(通常盤ですが)持っています。
グルダは、ウィーンの三羽がらすの中では、一番、個性的な人ですね。音楽から煌めくような彩りを感じさせる人だと思います。
シュタインもバンベルク交響楽団の実演で感動したことがあります。グルダのような個性的な独奏者は、シュタインやケンペのようなタイプの指揮者だと良いようですね。
このレコードのピアノがベーゼンドルファーだったことは知りませんでした。日本でも、遠山慶子さんのようにベーゼンドルファーにこだわるピアニストがいて、CDや生演奏で聴いていますが、私の耳では弾き較べでもしてくれないと、わかりません(笑)。
昔、仕事で、日本の大メーカーのものと手作業で作っている小さなメーカーのピアノの音の違いに関する論争に関係したことがあり、世界的なコンクールの審査員をしたことのある音大の教授によると、録音では違いはなかなかわからないという見解だったとの記憶があります。
その際に、調律を少し狂わせたピアノと正常なピアノとをピアニストが弾く実験もしたのですが、素人の我々には違いがわからなかったという滑稽なこともありました。

yymoonさん、こんばんは。
通常盤でお持ちでしたか。私はもう何度も聴いておりまして、大好きな演奏なのです。
確かにスタインウェイとベーゼンドルファーで聴き比べをすればハッキリと個性が分かるとは思います。もちろん弾き手のタッチの差でまたまた違いが生じるとは思いますが・・・。
ベーゼンドルファーの音、中音域から低音域にかけて、如何にも弦をたたいて音を出しているという感じを受けます。その点、スタインウェイは私には同じ音域でもベーゼンドルファーより華やかな音に感じています。またスタインウェイの高音域には鋭さがありますね。ベートーヴェンの4番などは私にはベーゼンドルファーの方が音楽に合っているように思うのですが。

こんにちは。
この録音がスーパーアナログディスクで出ていたとは知りませんでした。このシリーズは過去に何枚か持っていたのですが、手元にプレーヤーが無くなったのをきっかけに処分してしまいました。
シュタイン/VPOとのP協はCDの全集で持っていますが、最近、需要に対して供給過剰なので、全然時間が足りません。
来月にはトスカニーニ箱も来る予定ですし。

ぽちさん、こんばんは。
スーパー・アナログ・ディスクのシリーズは良かったですね。ジャケットの作りも実に凝ったものでした。
昨今の輸入CDはおよそ考えられないほどのディスカウントで、枚数は増えるばかり。私はノルマのようにして聴きまくっています。(笑)
トスカニーニのBOXもwebで予約済みです。これも安いですねぇ・・・。

ピアノによる音の違いって、たとえば機械で全く同じように叩いても違う音がする、というような側面ばかりでなく、ピアノがピアニストからどんな音を引き出すか、という部分も見逃せないように思います。生身の人間だと、「相手」が替われば同じようには叩けないのだと思います。相性がよければピアニストは伸び伸びと気持ちを乗せて弾くことができて、その部分もピアノの音や性能ということができるような気がします。

景人さん、初めまして。
拙ブログをご覧頂きまして、ありがとうございます。
同じピアノやヴァイオリン、その他の楽器全てに言えると思いますが、演奏者が変われば皆タッチも音色も違いますね。
それが音楽演奏の面白いところであり、一番の楽しみでもあります。
ただ、それでも本質的な個々が持っている音色の特徴はそれぞれにあると思います。
そこから演奏者は自分に合うモノを選ぶのではないかと想像します。
残念ながら私は楽器が出来ないので、ただひたすら耳を集中して聴くだけなのでありますが。

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