
R.ワーグナー
楽劇「ニーベルンクの指輪」全曲
ハンス・ホッター、アストリッド・ヴァルナイ、ヴォルフガンク・ヴィントガッセン、ラモン・ヴィナイ、レジーナ・レズニック、ヨーゼフ・グラインドル、グスタフ・ナイトリンガー、ヘルマン・ウーデ 他
クレメンス・クラウス 指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団
1953年8月8、9、10、12日 バイロイト祝祭劇場でのライヴ録音
独ORFEO C 809 113 R(輸入盤)
写真が続きましたが、久々に音楽CDのご紹介を。それもワーグナー大作の全曲盤でCD 13枚組という大物。クラシック音楽にご興味のない方にとっては多分ご存じない音楽だと思います。ご容赦。
このワーグナー作品は「序夜と三夜のための舞台祝典劇」と呼ぶように、四日間掛けて上演される音楽劇です。その内容は・・・、
序夜 : ラインの黄金
第一夜 : ワルキューレ
第二夜 : ジークフリート
第三夜 : 神々の黄昏
そうそう、この音楽劇を知らない方々も、恐らく「ワルキューレ」第三幕冒頭に演奏される「ワルキューレの騎行」はお聞きになった事があるかもしれません。フランシス・フォード・コッポラ監督がベトナム戦争を描いた映画「地獄の黙示録」で、攻撃ヘリコプターが村を襲撃するシーンで盛大に鳴らされたのが「ワルキューレの騎行」でした。或る意味、この映画でこの曲が有名になったとも言えるでしょう。
物語自体は北欧神話などに基づいて、ワーグナー自身が書き上げた台本を元に音楽が書かれています。
ライン川に眠る黄金から作り上げた指輪を手にしたものは世界を支配出来る事から、この指輪を巡って天上の神々、地上の人間界、地下のニーベルンク族による争いを描いたスケールの大きな叙事詩と言えるでしょう。
四作ある中でも音楽的に特に優れているところから「ワルキューレ」だけがコンサート形式で演奏会が開かれる事も有るくらいで、それだけ聴き所が多い作品なのです。特に第三幕は何度聴いても飽きる事がありません。
今日ご紹介するこのCDの録音は、とんでもない大昔、1953年夏の上演を収録したものです。半世紀以上も前の演奏、録音です。もちろん指揮者、歌手とも生演奏を聴いた事などありません。まぁ、当然ですが。(笑)
なのに何故、そんな骨董的録音をご紹介するのかと申せば、ただただ歌手陣の圧倒的名唱が聴けるからです。その後、現代までバイロイト音楽祭での「指輪」をFM放送、CD、DVDやテレビ放送での映像等々、いろいろな歌手陣で聴いて来ましたが、およそ1950年代の演奏が歌手陣についての黄金期だったのではないかと思うからです。
天上の神々を支配するヴォータンを歌うハンス・ホッター。この人以上のヴォータンを未だ聴いた事がないです。ジークフリートやブリュンヒルデ役も本CDで歌っているヴィントガッセンやヴァルナイも大変素晴らしいです。しかし、後年登場した歌手の中に、より優れた人がおりますが、ハンス・ホッター以上のヴォータン歌いは出ていませんね。もちろん私の個人的感想ですが。
「ワルキューレ」第三幕第三場で歌われる有名な「ヴォータンの告別(さらば、勇ましい我が娘よ)」、聴いていると背筋が寒くなって来るほどの感動があります。後年のクナッパーツブッシュとの録音が更に素晴らしいのですが、とにかくオペラファンならどなたも共感して頂けると思います。
その他の歌手の中ではニーベルンク族のアルベリッヒを歌うグスタフ・ナイトリンガーが極め付けと言って良いほどの名唱です。アルベリッヒについても未だこの人以上の歌手を知りません。1950年代のバイロイトでは欠かせない人のひとりだったと思います。
さて、肝心の指揮者、クレメンス・クラウスですが、意外とあっさり、淡白な指揮ぶりに少々肩透かしを喰らったような感じです。クラウスの後年に登場したハンス・クナッパーツブッシュのゆったりしたテンポの堂々たるスケールの大きい演奏解釈に比べると、少々物足りなさを感じたのが本音です。
しかしながら、映画的表現を借りればオールスターキャストとも言える歌手陣の素晴らしい歌声を聴く演奏だと思います。
今日ご紹介のCDは、タワーレコード横浜店が閉店する時に投げ売りのような価格でワゴンに乗っていたのを見つけ、購入したものです。13枚組のCDですが、一日1枚ずつ聴いて全曲を聴き終えました。一日1枚と言いましても毎日続けて、という事ではありませんが。
実はこの演奏は随分前にイタリアのレーベルから発売されたもので聴いていました。イタリアからは海賊盤まがいのものが平然と出回っておりまして、オペラのライヴ録音もかなりあったのです。放送録音のダビングとか。
しかし今回のCDは正規ルートを通ったオーソライズ盤ですから、録音年は古いものの、音はしっかりした聴きやすいCDである事を付け加えておきます。
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