私の愛聴盤 第20回
モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K595
ウィルヘルム・バックハウス(p)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
1955年3月、ウィーン楽友協会大ホールで録音
英デッカ 466 380-2(輸入盤)
お気に入りの音楽CDをご紹介させて頂いている「私の愛聴盤」シリーズも20回目となりました。今日はモーツァルト晩年の作品で、ピアノ協奏曲としての掉尾を飾る第27番。
古今東西、数多あるピアノ協奏曲の中で、私がもっともしっとりと聴く事が出来るのがこのモーツァルトの第27番なのです。チャイコフスキーの第1番のように絢爛豪華、実に華やかなピアノ協奏曲も好きですが、落ち着いてしみじみと晩年のモーツァルト作品の良さを味わえるのがこの曲です。
ピアノ協奏曲の中で一番愛する曲ですから、いろいろなピアニストの演奏を今迄聴いて来ました。しかし、60年も前に録音されたバックハウス盤が私の心をもっとも揺さぶった演奏です。近年の録音(CD)では内田光子さんの演奏も良かったですが、この曲に関する限り、バックハウス盤を凌ぐ演奏は今迄聴いた事がありません。
鍵盤の獅子王とも呼ばれ、ベートーヴェン弾きという良い意味のでレッテルを貼られているバックハウスのモーツァルト?
と、疑問に思われる音楽ファンもさぞ多い事でしょう。しかし、ここでのバックハウスはベートーヴェンを弾いている時とは違い、実に滋味深い演奏を繰り広げているのです。
カール・ベームの落ちついた指揮ぶりも実に曲想にマッチしていて、バックハウスのピアノに同化しています。モーツァルトの時代の典型的協奏ソナタ形式で書かれている第一楽章、オケの主題提示が終わり、ピアノの一音が弱音で始まった瞬間から音楽に引きずり込まれます。
ウィーン・フィルのひなびた音色の木管楽器がまた良いですねぇ・・・。第一楽章再現部でのピアノと弦のピッチカートとの掛け合いなど聴いているとジ〜ン・・・として来ます。
第二楽章、ピアノの主題提示の後に出て来るオケの寂しげな音色。ベームの適切なテンポと共に、「あぁ〜良いなぁ・・・」と、何回聴いても思ってしまいます。モーツァルト晩年の心情が表出しているような楽想と演奏解釈ですねぇ。バックハウスの一音、一音には本当に心揺さぶられます。
軽やかなロンド形式の第三楽章、バックハウスのピアノが弾むように主題を奏でていきます。そこにベームの切れの良い解釈にオケも呼応し、バックハウス、ベーム、ウィーン・フィルが三者一体になってモーツァルト最後のピアノ協奏曲を味わい深い演奏で心温まる思いをさせてくれます。
キングレコードの「スーパーアナログディスク」では第27番とピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」がカップリングされているのですが、この有名なピアノ・ソナタも私はバックハウスの演奏が一番好きなのです。
ちなみに第27番の録音年は1955年ですが、英デッカはすでにステレオ録音をしていたのです。他社はまだまだモノラル録音の時代なのに。さすが録音の良さで名を馳せた英デッカですね。
その録音、最新録音の音質にはもちろん負けますが、鑑賞する事にはまったく弊害はありません。ですからモーツァルトファンに是非お聴き頂きたい演奏です。いや、すべての音楽ファンに。
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こんばんは。
この曲は私も大好きでCDだけでも30枚くらい持っていますが、この2人の録音をあらためて聴いてみると、やはり別格ですね。まさにクラシック界の2枚看板がそろった名演なのでしょうね。
私のLPは、安物のUSA盤ですが、バックハウスの素晴らしさはよく判ります。
投稿: yymoon | 2016年3月12日 (土) 20時49分
yymoonさん、こんばんは。
27番、良いですよね〜^_^
好きな曲はいろいろな演奏者で聴いてみたくなるものですが、結局バックハウス、ベーム盤に戻ってしまいます。
投稿: KONDOH | 2016年3月12日 (土) 23時15分