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2016年8月29日 (月)

男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日

Saradakinen

松竹映画「男はつらいよ 寅次郎サラダ記念日」1988年12月公開

出演 : 渥美清、三田佳子、倍賞千恵子、下條正巳、三崎千恵子、前田吟、三田寛子、吉岡秀隆、すまけい、尾美としのり、鈴木光枝、佐藤蛾次郎、笠智衆 他
脚本 : 山田洋次、朝間義隆
音楽 : 山本直純
監督 : 山田洋次

小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ(島崎藤村)

今年8月4日は、渥美清さんがお亡くなりになって20年になるそうです。NHK-BSでは特集番組が組まれ、寅さん映画も何本かまとめて放映されましたね。

そこで私も久し振りにディスクを取り出し、今日ご紹介の作品を見ました。もう何回か見ているのですが、シリーズの中でも叙情的で好きな作品です。

舞台は信州小諸。一人暮らしの老婆(鈴木光枝さん)と小諸駅前で知り合った寅さん。老婆のご好意で一晩泊めてもらうと、小諸病院の女医である真知子(三田佳子さん)が翌朝、入院させるため迎えに来ます。しかし老婆は「病院は嫌だ、家で死にたい」と言うも、寅さんのひと言で入院する事に。

病室で老婆が寅さんに、「寅さん、あの先生もな・・・旦那さんと死に別れて寂しく暮らしてるだ。あんた慰めてあげてくれや。おらにしてくれたようにな」と。

それを聞いた寅さん、途端に元気に・・・(^^)

この作品、抱腹絶倒、爆笑の合間合間に、命の尊厳、そして誰しもが年老いてから向き合わなければならない「死」という問題に対し、山田洋次監督が映画を見ている我々に問い掛けをしているように思います。

真知子が運転する車に乗り込むシーン、老婆はじっと我が家を見つめ、「これが家、見納めだ・・・」と、涙ぐむ。老婆は死ぬなら家で死にたいと言っていたのです。

老婆の処遇に悩んでいた真知子が病院長(すまけいさん)に自分の気持ちを吐露した言葉に重みがあります。

「人生の最後をどう迎えるかを選ぶのは、その人の権利じゃないでしょうか?」

このシーンは胸にジーンと来ました。私の父は生前、自分で自分の事を出来なくなったら、自分で自分の命を絶つものだ、と言ってました。或る意味、昔の武士道精神でしょうか。
結局、父は自宅ではなく、病室で最後を迎えてしまいましたが、私は未だに家で最後を迎えさせてあげたかったという思いが残っています。

閑話休題 作品のタイトルはベストセラーになった俵万智さんの歌集「サラダ記念日」から来ているわけですが、ストーリーの途中途中に俵万智さんがこの映画のために書いた短歌が字幕で出て来ます。

ひょんな事から早稲田大学の教室に紛れ込んでしまったシーン、ここはもう大爆笑です。三國一郎さん演じる大学教授がまた良い味を出しています。

寅さんが早稲田の杜にあらわれて
やさしくなった午後の教室

小諸病院(実在します)の女医さんを演じている三田佳子さんも素敵ですね。映画の最後、おいちゃんやおばちゃんたちはまた寅さんがふられたと思うわけですが、実際は三田佳子さん演じる真知子の方が寅さんに想いを寄せていたのではないか、私はそう思いました。(^^)

寅さんが老婆の葬儀を終えて真知子が留守にしている間に家を去る時、真知子の姪の由紀に残す言葉、「いいか由紀ちゃん(三田寛子さん)、叔母様は女だ。悲しい事や辛い事があった時に、ちゃあ〜んと筋道を立てて、どうしたらいいかな?と考えてくれる男(ひと)が必要なんだよ。由紀ちゃん、そういう人探してやんな」と。すると由紀が、

「でも・・・その人が寅さんじゃいけないの?」との言葉に、寅さんは由紀がこしらえたサラダをひと口食べて真知子宅を去ります。

寅さんが「この味いいね」と言ったから
師走六日は「サラダ記念日」

旅立ってゆくのはいつも男にて
カッコよすぎる背中見ている

劇中、大学受験で悩んでいる満男(吉岡秀隆さん)が寅さんに、「大学に行くのは何のためかな〜?」と問い掛けるところがあるのですが、ここで山田洋次監督はとても良い事を言ってますね。もちろんその問い掛けに対する答えを寅さんが言うわけですが、さすが山田洋次監督! という思いです。

この事が、由紀とのやり取りの伏線になっているわけですが。

そこで名言を残した寅さんが、「久し振りにきちんとした事考えたら、頭痛くなっちゃった・・・」と。笑いました。(^^)
でも、山田洋次監督の言葉に相応しい大学生、今・・・どのくらい居るのでしょうか?

爆笑の連続の中に重い問題を問い掛けた本作品、是非ご覧になって頂きたいです。ひなびた小諸の町も素敵です。山本直純さんの音楽がまた各シーンにピッタリで。

文中の短歌はもちろん映画に合わせて俵万智さんが詠まれたものです。

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コメント

こんにちは。
この作品、小諸が舞台ということもありますが、心に残る作品ですね。
ご紹介ありがとうございました。

おはようございます。
「頭が痛くなっちゃった」のくだり、覚えています^^
以前撮りためたDVDはあるのですが、
先日はBSの放映で見直しました。
何度見ても寅さんはいいですね~。
この作品も見直したくなりました^^

渥美さんの訃報を聞いたのは、友人の絵画展に青梅の美術館までクルマで行った帰りの道のラジオだったと、何故か鮮明に覚えています。
特に映画の寅さんファンだったわけでもなかったのですが。
あれから20年、こちらも齢をとる筈だと改めて感じています。
源平さん(赤瀬川)が晩年ライカが重いとコンパクトに変えられたこも身に沁みる記憶となりつつあります。(笑)
TVで時間があると、昔の寅さん見ています。小諸も見ました。

小諸の風さん、こんばんは。
拙ブログをご覧頂きまして、ありがとうございます。
地元の方でしょうか?
この作品、本当に良い作品ですよね・・・・。

koukoさん、こんばんは。
「頭が痛くなっちゃった」、ご記憶がありましたか。
おかしいですよねぇ・・・・(^^)
寅さんシリーズは本当に何回見ても飽きませんです。
で、見る度に新しい発見があります。

kurakameさん、こんばんは。
そうした思い出があるのですねぇ・・・。
そういう事って・・・ずっと忘れないと思います。
男性ファンが付く俳優さんって・・・、最近はあまりいらっしゃらないような気がします。
赤瀬川原平さん、晩年はライカが重いとおっしゃっていたのですか。
M型ライカ、見た目は軽そうに見えますが、金属の塊ですからねぇ・・・。
寅さんシリーズ、これからも是非ご覧になってくださいませ。

記事を読み終えただけで、映画を見た気分です。
いつも見事な解説をありがとうございます^^v

ROCKSさん、こんばんは。
お恥ずかしいです。(^^;
好きな作品はリキが入ってしまいます。(笑)

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