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2018年10月28日 (日)

池上彰「高校生からわかる原子力」

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「高校生からわかる原子力」池上彰 著

株式会社 集英社より刊行(文庫)

27日未明、四国電力伊方原発3号機が再稼働したとのニュースが流れました。東日本大震災時、津波による福島の原発事故が原因で未だに自宅へ戻る事が叶わない多くの人たちがいらっしゃるにも関わらず、原発再稼働。地元では反対する住民が抗議しているようです。

だからという訳ではないのですが、最近私が読んだ本を今日はご紹介します。すっかりテレビでお馴染みになっている池上彰さんが書かれた上記の本です。

世界で唯一、原子爆弾が投下された広島と長崎。その原子爆弾がどういう経緯で製造されたのか。また、その後の原子力がどのように開発、使われているかを実に分かりやすく書かれた本で、私も知らない事ばかりが書かれていました。

第二次世界大戦中、ドイツが先に原子核分裂爆弾を作り出したら大変な事になると危惧したアインシュタインは、そのドイツが敗北する情勢である事を見て、もはや原子爆弾を作り出すべきではないと考え、ルーズベルト大統領に「原子爆弾についてのすべての作業を即時に中止する命令を出して欲しい」との手紙を書いていました。

しかし、ルーズベルト大統領の急死によって、アインシュタインの手紙は大統領の目に触れる事はなかったのです。結果、原子爆弾の開発は進み、とうとう広島、長崎に原子爆弾が投下されてしまいました。

ただ、この本を読んで驚いた事は、日本も原爆を研究していたという事の事実です。何と、1944年7月からは、ウラン濃縮実験が始まっていたとの事。ところが1945年4月の空襲でその実験施設が消失。よって、実験は中止になりました。

日本は同じく原爆を研究していたドイツにウラン鉱石を送るように依頼していましたが、ウランを積んで日本に向かっていたドイツの潜水艦が途中で攻撃を受け沈没したため、日本にウランが届く事はありませんでした。

※ もし、そのウランが日本に無事届いていたら・・・。唯一の原爆被災国と訴えている現在の日本ですが、場合によっては日本が先に原爆を使っていた事も有り得たという事実に私は驚愕しました。

戦後、原子力の平和利用という名目で、世界各地に原子力発電所が造られました。敗戦国日本は大分遅れはしましたが、やはり日本各地に原子力発電所が造られた事は皆さんご存知の通りです。

日本で原子力の開発を進めた最大の牽引者は太平洋戦争中、海軍将校だった中曽根康弘氏(後の総理大臣)でした。そして、民間人で原子力導入に一番の功績(?)を上げたのが読売新聞社の正力松太郎氏です。

現在のプロ野球にその年最大の功績を挙げた投手に贈られる「正力松太郎賞」の、あの正力松太郎氏でした。詳しい事は本書に書かれていますので。

原発マネーが欲しい地方自治体。原発が設置されている事による、或る種の「迷惑料」として支払われるその金額は莫大なものであります。その恩恵を享受しているのは地元政治家、とも書いてあります。

ロシア(当時はソビエト連邦)がアメリカの後、それほどの時間を経ずに原子爆弾の開発に成功したのは、アメリカがイギリスの科学者に応援を依頼した際、その科学者の中にロシアのスパイがいたからだそうです。こんな事も本を読んで知りました。

福島の原発事故後、日本各地に放射性物質が飛び散り、実際に各地で検出されているにも関わらず、政府は「福島の事故に由来するものではない」、と否定しているそうですが、改めて原発の怖さをこの本で知りました。絶対安全な原子力発電所なんて無いのです。それは歴史が物語っています。

原子力発電所で必ず出て来る「核廃棄物」ですが、すでに発電所の貯蔵所では賄えない量になっています。では、その核廃棄物をどうするか?

それは地中に埋めようとしているのです。今、一番の候補が広い大地を有する「北海道」だそうです。もちろん他県も考慮中ですが、いつも何かあると迷惑を被るのは地方ですね。都心に住む政治家の方達には全く影響のない地を選ぶ訳です。

池上彰さんはこの著書で、いずれこの地球のあらゆる地下は核廃棄物でいっぱいになるとおっしゃっております。人類が開発した原子力で、その人類が核によって滅びる事も現実として有り得るのではないか。正しくSF映画で描かれる事が現実に。そう私はこの本を読んで思いました。

是非、ご一読をお勧めしておきます。

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コメント

こんにちは。
それにしても・・・大変なものを作ってしまったものです。
宇宙戦艦ヤマトがイスカンダル星まで取りに行った「コスモクリーナー」が実際にあるのならば、もしくは実際に作れるのならばいいのでしょうが。
汚染水さえ完全にクリーンにすることができない今、稼働も廃炉も差がないような気がします。そこにある核を、どう無害化するのか?この問題がクリアできない限り。
「絶対」も「安全」もないのですからね。厳しい現実です。

こんばんは

原発の件はどうにも難しいですね。

福島の廃炉に40年かかると聞いた当初は、「国を挙げてもすぐに片づけもできない危険なものを作るなよ」と憤ったものですが、一方で資源に乏しい我が国で原発なしではきっと立ち行かず・・・。

化石燃料や再生可能エネルギーで代替可能だ、原発なんてなくせ!なんて意見もあるようで、もしそれが本当なら、なぜそうしない?と思うのですが、素人の私にもわかるのは、そうなると電気代が今の何倍にもなるんだろう、ということ。

電力の自由化でしたっけ、電力会社を選ぶのではなく、原発産の電気、再生可能エネルギーで作った電気、と出所別に消費者が電気を選べて、それでみんなが原発以外産の(おそらくは)より高価になってしまう電気を買って、「原発NO!」をつきつけることでしか事態は変わらないような気がします。

でも家庭の比ではない電気を使う大企業は高い電気なんて買わないんだろうなぁ・・・。そうすると今度はその企業の製品・サービスに対する不買運動かってことになりますが、いずれにせよ気の遠くなる話ですね。

ろだごんさん、こんばんは。
福島の事を、政府はどう考えているのでしょうかねぇ?
おっしゃるように稼働も廃炉も危険度については変わりありませんね。
日本は広島、長崎、そして福島と、大袈裟ではなく三県が被爆したのです。
世界見渡しても、そんな国は日本だけです。
それでもまだ・・・。

ななまるさん、こんばんは。
以前、テレビで学者さんが具体的に話していましたが、日本は原発無しでも電気に不足する事はないそうです。
確かに電気代は多少上がりますが、そのくらいの負担と命に関わる危険を伴いながら生活するのでは、どちらを選びますか?・・・と。
原発で潤っているのは一部の政治家、企業だけだと思います。
本の中に書いてありましたが、ヨーロッパの或る国は原発を全て閉鎖する事が決まったそうです。
チェルノブイリも福島も、子どもたちに被害が及んでいます。しかし、日本政府は福島の事故とは因果関係はないと。これが現実です。政府としては認めるわけにはいかないのでしょうが。

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