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2019年2月15日 (金)

朝比奈のベートーヴェン

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ベートーヴェン/交響曲全集

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

第9番「合唱」のみ
常森寿子(ソプラノ)
田中万美子(アルト)
林誠(テノール)
木村俊光(バリトン)
大阪フィルハーモニー合唱団

1977年5月〜1978年3月
大阪フェスティバルホール、東京文化会館にてライヴ録音
(日本Victor原盤)

TOWER RECORDS GCAC-1024(SACD)

最初にお断りしておきますが、今日ご紹介のCDはSuper Audio CD(SACD)のシングルレイヤーです。したがってSACDの再生を出来ない通常のCDプレーヤーでは聴く事が出来ませんのでご注意ください。CD層とSACD層の両方が記録された所謂ハイブリッド盤であれば一般的なCDプレーヤーでも再生出来るのですが、こちらはSACD層しか記録されていないディスクなのです。

世界初SACD化された、朝比奈隆さんにとって通算2回目のベートーヴェン交響曲全集が先月、タワーレコードさんから発売されました。700セットの完全限定発売で、私の手元に来たセットのシリアル番号は「5**/700」でした。500番台という事です。

朝比奈さん最初の交響曲全集の録音は、学研さんが教材のためにスタジオ録音(1972〜73年)したものになります。「運命」の第一楽章なんて実にゆったりとしたテンポを取っており、なかなか個性的な名演で、私は大好きな演奏です。

で、今日ご紹介のこの録音は日本ビクターさんによって2度収録された交響曲全集のうちの最初の録音になります。まだテープを使ったアナログ録音の時代で、壮年期の朝比奈さんの自由闊達なベートーヴェンを聴く事が出来ます。日本ビクターさん2回目の録音はもうデジタル録音の時代で、朝比奈さんのベートーヴェンが、スタイルを確立して行く時代です。

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CD全集としての初出盤 日本ビクター VICC-40155〜60(廃盤)

アナログ時代の録音ですから、当然初出盤はLPレコードです。CD時代に入った1993年、当録音を日本ビクターさんがCD BOXによる全集として発売したのが↑このBOXです。

ところがですねぇ、このCD BOXは「運命」だけが1982年に録音したものに替えられていたのです。今、このBOXを開けてブックレットを開き、宇野功芳(2016年6月没)さんが書かれた解説を抜き出してみました。

「第5だけはマイクの位置が悪く、バランスが悪かったので、今回のCD化に当たっては同曲のみ82年の音源を使っている。朝比奈はこのときすでに第2期に入っており、他の8曲とはややスタイルが異なるとはいえ、この選択に僕は大賛成だ」

と、宇野さんは書いております。しかし、「運命」が演奏された日(1977年5月12日 大阪フェスティバルホール)のコンサートでは第4番が一緒に演奏されており、このCD BOXの第4番はこの日の録音がそのまま収録されているのです。

第5番(運命)のマイクの位置が悪いという事は、第4番もマイクの位置が悪いはず。なのに第4番だけはそのままCD化されたという事はどういうわけ?・・・と、私は疑問を感じていました。

LPレコードで聴いていたその「運命」ですが、確かに第一楽章でややマイクが遠く感じもしますが、そんな些細な事を忘れさせるほどの熱い名演を聴く事が出来るのです。CD BOX発売当時、私は宇野さんに対し、大いに疑問を感じたものです。

ちなみにこのベートーヴェン交響曲全集の録音は音楽評論家、宇野功芳さん監修の元に行われています。録音の差し替えが宇野さんの意思によるものか、日本ビクターさんの意思によるものかは今となっては定かではありません。

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日本ビクター VICC-60411〜19(廃盤)

しかしその後、2004年に「運命」を1977年の録音に戻したCD BOXが「生産限定盤」として発売されたのです。したがって1977年の「運命」だけが、このBOXでようやく初CD化された事になりました。いずれのBOXも今となっては一般の音楽ファンにとって中古以外入手が難しい市場状況です。

尚、↑このCD BOXには特典盤として服部良一さん作曲の「おおさかカンタータ」の初演ライヴ録音(1974年11月 大阪フェスティバルホール)が添付されています。

さて、「運命」の差し替えの事はともかくとして、1977〜78年録音のCD BOXがこれで私の手元には3セット目になってしまいましたが、今回のSACDは2018年最新マスタリング(エンジニア : 今泉徳人氏)の音源を使用しています。

私は第1番から第9番まで、これらの録音を懐かしさを感じながら番号順に四日間かけて聴き終えました。最初に一部の曲の断片を上の盤(2004年発売分)と聴き比べをしてみました。これは従来のCDとSACDとの間に一聴して音に差があるのか、更にマスタリングをやり直してどう違いが出ているのか、この2点に興味がありました。

結論を先に申しますと、タワーレコードさんから発売されたSACDを聴いた今、過去にビクターさんから発売された二つのBOXの盤を聴く事はもうないでしょう。

そのくらい「音」に違いがあります。それがCD vs SACDの差なのか、新規にマスタリングされた効果なのかは私もハッキリとは分かりませんが、おそらく新規マスタリングと、それをSACD化した事による良い相乗効果が現れているのではないかと。

各曲の印象を事細かく記述しますと大変長くなるので割愛しますが、朝比奈さん壮年期の「英雄」は素晴らしいですよ。ベートーヴェンの交響曲をこれだけ振れる人はそうそう出て来ません。

大変生意気な事を承知で敢えて言わせて頂きますと、現在活躍している指揮者でベートーヴェンをまともに触れる指揮者は一人もいません。もちろん世界で活躍しているすべての指揮者を聴けるわけありませんので、自分が聴いて来た指揮者についてであります。

ベートーヴェンの交響曲、スコア通り指揮してもそれなりに「聞こえ」はしますが、こちらを慟哭させるほどの感動を味わわせてくれる指揮者は残念ながら今のところいません。自分にとって朝比奈隆さんが最後の指揮者になっています。

つい最近もパーヴォ・ヤルヴィ(NHK交響楽団 首席指揮者)がベルリン・フィルを指揮した第4番を聴きましたが、「まぁ、こんなもんだろうな」というのが私の感想。それより、ヤルヴィがベルリン・フィルに客演するんだ・・・と、そちらの方に私は驚きましたが。(^^;

今回のSACD BOXは3枚組でして、交響曲全9曲が2枚のSACDに、もう1枚には1993年に発売されたCD B0Xに差し替えて入れられた1982年録音の「運命」、そして「荘厳ミサ曲(1977年6月)」と「ミサ曲 ハ長調(1977年11月)」が収められております。

通算8回の交響曲全集が残された朝比奈隆さんの録音、その中の2回目、自己のベートーヴェンスタイルを確立して行く過程の(初期の)、言わば若々しく熱い演奏が聴けるベートーヴェン交響曲全集を今日はご紹介させて頂きました。

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