SACDって、そんなに音が良いの?
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」、第7番
カルロス・クライバー 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音
1974年3月、4月(5番)
1975年11月、1976年1月(7番)
ESOTERIC ESSG-90190(SACD)
拙ブログ、「SACDを楽しむ」というコーナーで自分が日頃楽しんでいるSACD(スーパーオーディオCD)をご紹介していますが、「SACDって、通常のCDに比べて誰もが分かるほど音に違いがあるの?」と思われている方は沢山いらっしゃるのではないかと。
SACDで音楽をお聴きになっている方、かなり少ないのではないでしょうか? そもそもオーディオに関心がないとSACDの存在すらご存知ないと思います。
で、音の違いですが、正直私もSACDとCDには劇的な違いはないと思っています。(^^;
では、何故わざわざ価格の高いSACDを買うのですか?
・・・と尋ねられたら、「単なる自己満足です」
と、答えたら身も蓋もないですね。ではと、同じ音源を使ってSACDとCDとを聴き比べてみました。
使用した音源はカルロス・クライバーがウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を指揮したベートーヴェンの交響曲です。SACDはESOTERICさんから発売されたディスクを、CDは独グラモフォンの輸入盤です。もう一枚、拙宅にはBlu-rayオーディオのディスクもありますので、これを加えて三種類のディスクで聴き比べてみました。
さらに拙宅には独グラモフォンのアナログレコードも有るのですが、今回レコードは対象にしていません。聴き比べはデジタルディスクのみという事であります。
延々と聴いて全曲を聴き比べるのはさすがに無理なので、「運命」は第一楽章、例のジャジャジャジャ〜ン!という有名な運命動機から提示部まで。第7番は第四楽章の提示部を聴きました。
- CD -
なかなか迫力のある冒頭です。ただ、ヴァイオリン群の高音域に僅かばかりのザラつきを感じます。この後にSACDを聴くわけですが、それで思ったのがCD化の際、少し高音域をイコライザーで持ち上げているのではないかと、そういう感じを持ちました。ホールの響きは良い感じです。CDだけで聴いている分には特に不満は感じないと思います。
- SACD -
「え!?」と感じるほど違いがあります。ただし、この違いはSACDとCDの音質差というより、マスタリングの違いによるものだと思います。
SACDにはCDで感じたヴァイオリン高音域のザラつきはありません。実にすっきりと伸びたヴァイオリンを聴く事が出来ます。さらに中低域(チェロ、コントラバス)もCDより若干伸びがあり、オーケストラを聴く醍醐味がSACDにはあります。
で、CDで聴かれた残響音は見事なものでしたが、SACDを聴いて分かったのはCDの方はマスタリング時に少しエコー成分を加えているな、という事。
この点は第7番の第四楽章を聴いた時に確信する事に。明らかにCDの方が残響音が長いです。実際には後付けのエコー成分でしょう。CDは結構音を弄っているのだという事を聴き比べてみて初めて知りました。思わぬ収穫です。(^^)
- Blu-ray disc Audio(96kHz/24bit)-
こちらはBlu-rayオーディオですが、あまり需要がなく、事実上消え去るメディアだと思います。映像作品ではなく、ハイレゾ音源を収録しただけのBlu-rayディスクです。Amazonが 1,000円で投げ売りしていた時に購入しました。
こちらの音はCDともSACDとも違いますが、どちらかと言うとESOTERIC盤に近いです。ESOTERICさんがユニバーサルから借り受けたマスターは恐らくこの96kHz/24bitのハイレゾマスターだと思います。
このマスターを元にESOTERICさん独自のマスタリングを行い、DSD化されたのではと推測します。
今回、三種のディスクを聴き比べてみて、自分の好みはESOTERIC盤でした。こうなるとアナログレコードも久々に取り出して確認したくなりました。
さて、今日のテーマである「SACDはCDより音は良いのか?」に関してです。
新譜で発売されるSACDはほとんど無く、多くのSACDは妙な言い方ですが「SACDで再発売する事を目的に」オリジナル・マスターテープ(アナログ録音の場合)から新規にマスタリング仕直している事が多く、CDとはそもそもマスタリングデータが違っている事が通常です。
クライバー盤一枚だけの聴き比べで結論を出すのは早計ですが、元のマスターが違う音源を比べて「やはりSACDは音が良いなぁ」と思うのは大きな間違いという事ですね。
ではと、ESOTERIC盤はハイブリッド盤なので、そのESOTERIC盤のSACD層とCD層とで聴き比べてみました。
じっくり聴いてみました。ほんの僅かですが、SACD層の音に若干の柔らかさを感じるのと、ヴァイオリン群の高音域もSACD層の方が自然に感じます。ホールの消え行く響きもSACD層の方に天井の高さを感じます。
このようにじっくりと数回聴き比べてみて初めてSACD層とCD層に違いを感じた程度です。一聴して分かるくらい違いがあったとしたら、それはCDのマスタリングに問題があると言うべきでしょう。
ただ、SACDはシングルレイヤーに比べるとCD層のあるハイブリッド盤は音質がワンランク落ちますので、SACDとして発売するならシングルレイヤーで発売するべきです。
今日の結論。
若干の、それもほんのちょっとした違いを感じる程度ですから、「音楽」の印象を変えてしまうほどの大きな違いはありません。CDで充分です。僅かな違いを重要に思う方はSACDを購入されれば良いかと。
お前は?・・・と尋ねられたら、ディスクを厳選して・・・ですね。
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こんばんは。
とても興味深いことを取り上げてくださいました。CDなのか、SACDなのか・・・、知りたいところです。
マスタリングの違い・・・そうなのですね。
私などはKONDOHさんほど聞いていませんが、「えっ、SACDじゃないの」と思うCDがあれば、このSACD・・・名前だけか・・・と思うのもありました。
しかも、最近はCDをリッピングし、DACを通すとSACDとの違いが判らないものまで登場です。
気に入ったSACDの場合は、CDで聴くよりボリュームをそれなり上げております。安心して聴けるようです。滑らかなような気がするときもあります。
投稿: fujileica(pyosida) | 2021年9月15日 (水) 19時48分
fujileica(pyosida)さん、こんばんは。
ここ数年、ESOTERIC盤を始め、SACDを結構な枚数購入して来ていますが、SACDの音は良いと思うのはプラシーボ効果もあるのだと思います。
今回、クライバー盤だけの聴き比べでしたが、或る程度は自分で思っていた通りの結果となりました。
音楽オーディオ誌やレコード会社はSACDの高音質を喧伝していますが、ひと昔、ふた昔前くらいでしたらもっとCDとの音質差はあったかもしれません。
しかし、近年はCDプレーヤーの性能向上も有って、一聴したところではSACDとの音質差はとても小さくなっているのだと思います。
それと、おっしゃるようにリッピングという手段が広まった事と、単体DACの性能向上とも相まって高音質で元のCD音源を聴く事が出来るようになりました。ですから、益々SACDとの差が縮まっているように思います。
音楽オーディオ誌はそうした事には触れず(触れてはいけない)、SACDの高音質を揚げツラって買ってもらわなければならないのです。
まぁ、私みたいな人間がいないと音楽産業は潰れてしまいますから、これからもお布施をします。(笑)
投稿: KONDOH | 2021年9月15日 (水) 21時24分