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2021年12月20日 (月)

バイロイトの「第9」真の実況盤

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ベートーヴェン/交響曲第9番 ニ短調「合唱」

エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
エリーザベト・ヘンゲン(アルト)
ハンス・ホップ(テノール)
オットー・エーデルマン(バス)

ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団

録音 : 1951年7月29日、バイロイト祝祭劇場からの中継録音

スウェーデンBIS BIS-9060(SACD)

暮れの名物と言えば我が日本ではベートーヴェンの第9交響曲の演奏会ですね。12月、全国のコンサートホールで演奏会が行われている最中だと思います。

その第9交響曲のレコード録音と言えば、英EMIのフルトヴェングラー指揮によるバイロイト音楽祭開催を祝うための第9特別演奏会のライヴ録音が、同曲の決定的名盤とされて来ました。クラシックレコードファンの方なら、誰しもご存じの演奏だと思います。

ところが近年、ウォルター・レッグのプロデュースによるこの録音は、そのほとんどが「通しによるリハーサル」の録音を元に編集した後、ライヴ録音と称して発売されていた事が分かってしまいました。

シュヴァルツコップも通しによるリハーサルが録音されていた事を後年話していたそうです。この事が事実として明るみになったのは、バイエルン放送局に残されていた当日の中継録音のテープから独オルフェオがCDで発売した事が発端のようです。

で、つい最近、この時の中継放送を録音したオリジナルテープがスウェーデン放送局で発見されたのです。そのテープを元にスウェーデンの有名レーベル、BISがSACD化して発売しました。

ディスクを輸入販売しているキング インターナショナルが発表した資料によりますと、当日バイエルン放送局から英国放送、フランス放送、ストックホルム放送にも中継されたとの事。↑ このSACDは当時の中継録音テープを「一切のカットなし」にディスク化したものです。以下に、キング インターナショナルの発表資料から引用させて頂きます。ディスク冒頭のアナウンスを日本語訳しています。

「1951年バイロイト音楽祭。バイエルン放送がリヒャルト・ワーグナー音楽祭(バイロイト音楽祭)のオープニング・コンサートをバイロイト祝祭劇場からドイツ・オーストリア放送、英国放送、フランス放送、ストックホルム放送を通じてお届けします。曲はヴィルヘルム・フルトヴェングラー指揮によるベートーヴェンの交響曲第9番です。」

これは演奏に先立ってのアナウンスで、文言からも当日の生中継だった事が窺われます。ただ、電線の長距離配線の影響でしょう、終始ブツブツというノイズが混じって聞こえます。現在とは比べものにならないネットワーク回線だったと思いますから、まぁ仕方ないですね。オルフェオ盤(バイエルン放送のテープ)は未聴なのでノイズの事は分かりません。

音そのものは英EMI盤の方が良いです。ただ、英EMIは通しのリハーサル録音が主ですからマイクアレンジも万全だったのでしょう。では、英EMIの音源を元にしたディスクをご紹介します。

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第一家庭電器 DOR-0162/64(45回転 180g重量盤)

このレコードは今は存在しない家電量販店の第一家庭電器さんのノベルティで、「マニアを追い越せ大作戦」というセール期間中にカートリッジを購入した顧客に配っていた限定盤です。キングのスーパーアナログディスクと同じように作られた180g重量盤ですが、通常の331/3回転ではなく45回転でカッティングされていますので、音には相当拘っていますね。

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Warner Classics(2021年新リマスターCD)

こちらは以前記事にしたフルトヴェングラーの正規レコード用録音のCD BOXからの一枚で、今年新たにリマスターされています。

BISのSACDと聴き比べてみると違いは一目瞭然、いや一聴瞭然(笑)です。聴衆のノイズ(咳払い等)がもう全然違いますから。英EMI盤は拍手が入り始めると急にテープヒスノイズが増え、拍手が消えるとテープヒスも小さくなります。オーバーダビングの影響ですね。(笑)

英EMI盤にはフルトヴェングラーが歩いて来て指揮台に上がり、フルトヴェングラーが楽員に何か指示を与える言葉まで録音されています。生々しいと言えば生々しいですが、でも考えてみてください。通常、聴衆を前にした本番で指揮者が楽員に声を出して指示を与える事なんて有り得ないですよね。

昔は「へぇ・・・」なんて感動したものですが、この事から英EMI盤はリハーサルの通し録音だった事が今となっては明白ですね。聞こえる拍手はやはりオーバーダビングだったのでしょう。ウォルター・レッグの巧みな編集に世界中のファンは騙されていたのです。(^^)

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英EMI(2011年リマスターCD)

英EMIがワーナーミュージックにクラシックの全録音を譲渡して音楽界から撤退する前にリマスターしたCDです。ワーナーが今年リマスターし直したCDとで聴き比べてみると、確かに音的には微妙に違います。私自身はワーナーのリマスターの方が好みですが。

さて、肝心の演奏については今更私がとやかく言う事はないですね。演奏そのものも英EMI盤と完全なる実況録音のBIS盤とはこれまた微妙に違いますが、カットなしの実況録音が世に出た今も英EMI盤の価値が下がる事はないです。

やはりフルトヴェングラーの第9、現在聴く事が出来る第9の録音の中でも最右翼の演奏である事に変わりありません。真の実況録音が現れた今でも。

尚、演奏終了後の拍手ですが、実況録音の方は感動のあまりか、聴衆はしばらく沈黙し、そこからパラパラと拍手が始まり、その後は大きな拍手が続きます。最後にはアナウンスも入ります。ところが英EMI盤は演奏終了と同時に拍手が湧き起こるのです。やはり編集ですね。

以上、今日ご紹介したディスクの「音質」に関してですが、

ワーナー盤>英EMI盤≧第一家庭電器盤>BIS盤

私としてはこういう順位付けになります。上位3種、元の録音は同一ですが、第一家庭電器盤は英EMI盤とほぼ同じで、若干中低域が勝る音作りです。音だけなら今年の最新リマスターからCD化されたワーナー盤が有れば充分だと思います。BIS盤は遠方からの中継録音というハンデがあるので、音については割引が必要になります。

皆様にとってお気に入りの第9交響曲はどの演奏でしょうか?
昔は大阪まで朝比奈隆さんの第9を聴きに出掛けたものでした。今となっては懐かしい思い出です。

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コメント

 こんばんは。

 ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 指揮の交響曲第9番を、聞きました。
 演奏者、合唱団はよくわからなかったのですが・・・

 いやぁ、最初の方から、少し違う雰囲気。合唱が加わると、凄かったです。
 少し、鳥肌ものですね。

fujileica(pyosida)さん、こんばんは。
フルトヴェングラーの第9、お聴きになられましたか。
凄い演奏でしたでしょう?
今、Amazon Music HDで検索してみたら、私が購入したCD BOXの中のかなりの楽曲がハイレゾ音源で提供されていました。勿論このバイロイトの第9も。CDを購入した自分は損をしたような気分です。(^^;

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