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ブルックナー/交響曲第3番 ニ短調(ノヴァーク版)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1970年9月、ウィーン
英DECCA SXL 6505(ED4 初出)
ベームが指揮したブルックナーの交響曲ですが、今日ご紹介する第3番と第4番はそれぞれ同曲の私的ベストワンの名演であります。
ただですねぇ、この後に独グラモフォンへ録音した第7番、第8番はどういうわけか何も感動を受けないのです。第3番と第4番が圧倒的名演でしたから、当時期待してグラモフォン盤も購入したのですが、見事空振りに終わりました。ブルックナーの傑作である二曲でしたから、ガッカリ感は筆舌に尽くしがたいです。
しかし、この第3番は素晴らしいです。当初はキングレコードの国内盤で聴いていたのですが、それはもう繰り返し聴いたものです。英DECCAらしく、録音がまた良いですね。録音当時のウィーン・フィルは何とも言えない音色に魅力がありました。優秀な録音がその魅力を余すところなく伝えてくれます。
ベームの指揮には文句ひとつありません(おお、生意気)。スタジオでの録音ですとベームは往々にして手堅いだけで終わってしまう事がまま見られるのですが、ブルックナーの楽想が上手くハマったのかもしれません。
終楽章の軽快で美しい第二主題のメロディは一時、NHK-FMのクラシック音楽番組のテーマ曲として使われておりましたので、気が付かずにお聴きになられた方も多いと思います。
ブルックナー/交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック」(ノヴァーク版)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1973年11月、ウィーン
英DECCA 6BB 171/2(ED4 初出)
第4番の演奏は第3番を上回ると言っても過言ではなく、それまで第4番はワルター盤(コロンビア交響楽団)を愛聴していたのですが、そのワルター盤に負けない名演に私は大きな感動を味わう事が出来ました。
第一楽章冒頭、深い霧の中から、いや・・・深い森の中からと言ったら良いでしょうか、遠くこだまするように聞こえて来るウィンナホルンによる第一主題の提示がもう、素晴らしいという単純な形容詞では言葉足りません。
徐々にクレッシェンドして行き、トゥッティでオケが強奏されるとウィーン・フィルの響きに魅了されます。録音が文句なしで、左右の広がりと前後の奥行き感が表出されているだけでなく、弦楽器、管楽器が実に美しく捉えられております。さすが英DECCAです。この曲だけはウィーン・フィルで聴きたいですね。ウィーン・フィルのために作曲されたのではと思ってしまうくらいで。
この英DECCA盤は二枚組で、それぞれ片面にひとつの楽章が余裕を持ってカッティングされているのでダイナミックレンジが大きく、録音の素晴らしさを十二分に享受する事が出来ます。盤質も良いので私の宝物です。
昨年、TOWER RECORDSさんから今日の二曲がSACD化されて発売されたので、オリジナル盤を持っていながらも興味を持って購入してみました。TOWER RECORDSさんのSACDは良いものが多いからですが。
しかし、今回はハズレでした。オリジナル盤の音とは違いがあり過ぎました。TOWER RECORDSさんの該当ページに「可能な範囲で入念な修復作業を行った」と記述がありますので、マスターテープの劣化が進んでいたのでしょうね。録音から半世紀経っていますから仕方ありません。
英DECCAを代表する名録音、ショルティの「指環」もマスターテープの傷みが酷いらしく、新たなデジタル化は難しいと言われております。こうなると録音が古いほど録音直後に発売されたレコードが貴重になります。今日のブルックナーも録音当時の名演奏、名録音がレコードに刻まれ、そのまま劣化する事なく現在も聴く事が出来るのですから。
古いアナログ録音についてはレコードが貴重な遺産となりますね。現在所持しているオリジナル盤、初期盤は大事に持っていようと思います。未聴の盤がまだ有るのですが、それらは国内盤やCDで聴いている演奏なので、折に触れて取り出す事になるでしょう。
今日は希代の名演、ベームのブルックナーをご紹介させて頂きました。
※「ノヴァーク」は「ノーヴァク」の方が正しい発音に近いそうですが、慣習にしたがって「ノヴァーク版」と表記しております。
ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」全曲
レオノーレ(フィデリオ): クリスタ・ルートヴィヒ(ソプラノ)
フロレスタン : ジェイムズ・キング(テノール)
ドン・ピツァロ : グスタフ・ナイトリンガー(バス)
ロッコ : ヨーゼフ・グラインドル(バス)
マルツェリーネ : リザ・オットー(ソプラノ)
ヤキーノ : ドナルド・グローブ(テノール)
ドン・フェルナンド : ウィリアム・ドゥリー(バス)
カール・ベーム 指揮
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団・合唱団
録音 : 1963年10月29日、日生劇場でのライヴ録音
ポニーキャニオン PCCL-00060(初出CD)
ベートーヴェン唯一のオペラ、「フィデリオ」は失敗作という評価を下す評論家がいらしたそうですが、私にとってはオペラ入門となった思い出深い作品です。言語はドイツ語ですから勿論分かりませんが、対訳を見ながら繰り返し聴いていましたので、今は言葉は分からなくても歌っている歌詞の内容は頭に入っています。
このベームのライヴ録音は本年1月7日の記事で採り上げた第九交響曲のライヴと同じく、日生劇場の柿落とし公演の演目です。もうひとつ、モーツァルトの「フィガロの結婚」も発売されていて所持しているのですが、まだそちらは聴いておりません。(^^;
さて、こちらのキャストは一線級の歌手が揃っている事と、ベームのメリハリのある緩急とダイナミクスによる指揮ぶりで、大変素晴らしい演奏となっています。であるのに、私はCD購入後ずっとほったらかしにしていたのですから情け無いですね。
声の全盛期とも思われるルートヴィヒのタイトルロールが見事な歌唱で、聴き惚れてしまいます。ハマり役とも思えるジェイムズ・キングのフロレスタンも素晴らしいです。
グスタフ・ナイトリンガーとヨーゼフ・グラインドルはバイロイト音楽祭では欠かせない歌手で、私も残されたいろいろなレコード、CDで感銘を受けて来ました。勿論ここでも憎々しいピツァロをナイトリンガーが、逆に憎めないキャラクターのロッコをグラインドルが素晴らしい歌唱を聴かせてくれます。
ヤキーノを歌っているドナルド・グローブはマゼールの英DECCA盤でも同じ役を担当しているので、私にはもうお馴染みの声です。リザ・オットーのマルツェリーネもそつがなく、この「フィデリオ」を聴いた(見た)日生劇場の聴衆の方たちが羨ましいです。
ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」全曲
レオノーレ(フィデリオ) : エヴァ・マルトン(ソプラノ)
フロレスタン : ジェイムズ・キング(テノール)
ドン・ピツァロ : テオ・アダム(バス)
ロッコ : オーゲ・ハウグランド(バス)
マルツェリーネ : リリアン・ワトソン(ソプラノ)
ヤキーノ : トマス・モーザー(テノール)
ドン・フェルナンド : トム・クラウセ(バリトン)
ロリン・マゼール 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
録音 : 1983年8月5日、ザルツブルク祝祭大劇場でのライヴ録音
独Orfeo D'Or C 908 152 I(CD)
マゼールが指揮する英DECCA録音の「フィデリオ」でオペラ入門しましたので、マゼールの「フィデリオ」には格別の思い出がある事は以前申しております。ですから、ザルツブルク音楽祭でのライヴ録音によるこのCDを見つけた時は嬉しかったですね。即、ポチりました。(^^)
歌手陣で興味深いのは英DECCA盤で敵役のドン・ピツァロを歌っていたトム・クラウセが、ここではフロレスタンの窮地を助ける友人、ドン・フェルナンドを歌っている事。まぁ、こうした配役は映画でもある事ですが。
マゼールの指揮はここでもきびきびとしたテンポで歌手陣とオケを引っ張っています。やはりマゼールの「フィデリオ」は聴き応えがあります。ベームに決して負けていません。
レオノーレを歌っているのはエヴァ・マルトン。全盛期が短かった歌手というイメージがあるのですが、やや劇的な歌唱を求められるレオノーレには向いていると思います。
フロレスタンはここでもジェイムズ・キングが歌っていて、見事なフロレスタンです。ジェイムズ・キングはベームのスタジオ録音(独グラモフォン)でもフロレスタンを担当しておりますので、ジェイムズ・キングの全盛期にはフロレスタンで彼を超える歌唱を聴かせる歌手がいなかったのかもしれませんね。
この一年の間に、NHK-BSでヨーロッパの歌劇場で上演された「フィデリオ」が二本、放送されました。そのうちの一本では映画「OO7/スペクター」と最新作でブロフェルドを演じていたクリストフ・ヴァルツが演出を担当していた事にビックリ。常時、ステージ全体に造られた階段状の上で演じられており、演出としては違和感大でしたが。
ちなみに「フィデリオ」はジングシュピールと言われる形式で作曲されたオペラで、セリフと歌で劇が進んで行きます。是非一度、お聴きになってみてください。
モーツァルト
SIDE 1
ピアノ・ソナタ第12番 ヘ長調 K.332
ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330
SIDE 2
ピアノ・ソナタ第4番 変ホ長調 K.282
ピアノ・ソナタ第5番 ト長調 K.283
ピアノのためのロンド イ短調 K.511
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
録音 : 1961年10月(SIDE 1)1966年11月(SIDE 2)
米LONDON CS 6534(英DECCAプレス ED2相当)
バックハウスと言えば、ベートーヴェン弾きとして名を馳せておりますが、私はベートーヴェンは当然の事としてモーツァルト演奏も大好きで良く聴いております。
第27番のレコードにカップリングされているK.331の「トルコ行進曲付き」は、過去聴いて来たあらゆる演奏の中でも一番のお気に入りです。
第10番はマリア・ジョアン・ピリスの演奏を好んで聴いているのですが、バックハウスの演奏もなかなかの名演です。出だしのところ、まるで様子を窺う感じで入る解釈がユニークで、徐々に調子が出て来るような演奏なのです。こういう演奏は現代のピアニストには考えられない解釈だと思います。
そういった独特な解釈はベートーヴェンでも聴く事が出来るわけですが、往年の名ピアニストはバックハウスに限らずそれぞれ個性を持っていて、そこが現代のピアニストと大きく違うところだと思っています。
現代の若いピアニスト、テクニックは素晴らしいものをお持ちですが、失礼ながらただ譜面を機械的になぞっているだけに聞こえたりします。聴いていて上手いなぁ・・・とは思いますが、感動はしないのですよねぇ・・・。
尚、私所有のレコードは米LONDONレーベルですが、プレス、ジャケット共々英DECCA制作です。ジャケットはヨーロッパレーベル特有の薄いペラジャケットで、オリジナルの英DECCA盤とは「DECCA」か「LONDON」か、商標の違いとレコードレーベルだけになります。
英DECCAのオリジナル盤はED2ですから、この米LONDONレーベルも盤自体は同一になります。盤は同じでも、商標が違うだけで中古市場価格は天と地ほどの違いがありますけど。
個性的で味のあるバックハウスのモーツァルトを今日はご紹介させて頂きました。
ベートーヴェン/歌劇「フィデリオ」全曲
レオノーレ(フィデリオ): ビルギット・ニルソン(ソプラノ)
フロレスタン : ジェイムズ・マックラッケン(テノール)
ドン・ピツァロ : トム・クラウセ(バリトン)
ドン・フェルナンド : ヘルマン・プライ(バリトン)
ロッコ : クルト・ベーメ(バス)
マルツェリーネ : グラツィエラ・シュッティ(ソプラノ)
ヤキーノ : ドナルド・グローブ(テノール)
ロリン・マゼール 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
録音 : 1964年3月、ウィーン・ゾフィエンザール
英DECCA SET 272/3(ED1)
(マトリックス番号 1E/1E, 1E/1E 完オリ盤)
昨秋、都内某店でマゼールが指揮した「フィデリオ」全曲盤のオリジナル盤と初めて遭遇したのですが、価格が確か6,600円という事で諦めました。以前も申したようにクラシックの中古レコードについては一枚 1,500円以上のものは買わない主義を貫いておりますので、目の前のオリジナル盤も泣く泣く見送ったわけです。
素晴らしき歌姫(4)でビルギット・ニルソンをご紹介した際、「フィデリオ」ハイライト盤の記事に記したように私にとってマゼールの「フィデリオ」は格別の思い出がある録音でした。ショルティの「魔笛」と共にそれこそ何十回となく聴き込んでいたレコードなのです。
ですからオリジナル盤と遭遇した時はいっその事 1,500円の縛りを破ってしまおうかと店頭で迷いに迷ったものです。しかし、一度破ると歯止めが効かなくなるのではと、我慢しました。暮れに改めて訪れる機会があったのですが、まだそのオリジナル盤は売れずに残っておりました。ですが、その時も買わずに見送っています。
ところが年が改まって今月の事です。偶々或るお店(前述のお店ではないです)の前を通り過ぎたのですが、少し時間に余裕があるから偶には寄ってみるか・・・と、少し戻ってお店に入りました。
やはり入るだけ無駄だったなぁ・・・と思いながらもエサ箱のレコードを見ていると、「!!!」という衝撃が。
その衝撃を受けたブツが今日ご紹介のレコードです。プライス表にはただ単に「英国盤」と表記され、価格が表示されているだけ。それだけではオリジナルのED1なのか、はたまた再プレスを繰り返した後期のED4なのかが分かりません。価格はめちゃ安ですが。
レジの人に「盤の状態を見ても良いですか?」と尋ねると「どうぞ、構いません」との事。ビニール袋から出してケースを開け、リブレットを取り出してみるとインナーの丸窓から見えたレーベルに、「あ、溝が有る!」
更には大きなDECCA文字、左上外周の「ORIGINAL RECORDING BY」という表記が見えた瞬間「え!? これって、オリジナル盤では?」と、それはもうびっくり仰天。
お店の方から「あ、価格間違いをしていました」なんて言われるのではないかと、慌ててそのままビニール袋に戻し「頂いて行きます」と言って精算を済ませました。検盤していません。(笑)
帰宅後に検盤してみると、やはりオリジナルのED1でした。それだけでなく、デッドワックスに刻印されているマトリックス番号を確認すると2枚の両面とも「1E」なのです。これはジャズレコード愛好家が言う「完オリ(完全オリジナル盤)」でして、要するに初版プレスのレコードだったのです。
ちなみにクラシックレコードの場合、この盤がED1であれば例えマトリックス番号が4Eでも12Eでも、中古ショップではオリジナル盤と表記されます。要するにマトリックス番号は無視されるのが常識になっています。拘るのは英DECCAのステレオレコードの場合、ED1かED2か、若しくはED3かED4かという事だけです。
新年早々、とんでもない物に出遭いました。いやいや嬉しかったです。この録音もCDメインに切り替えた昔、キングレコードの国内盤は売却し、輸入盤のCDを購入していました。で、そのCDはオーディオ専用NASにリッピングしてあると勘違いしてCDは一昨年だったか売却してしまったのです。ですから以後は英DECCAのハイライト盤を聴くしかなかったわけで。
今回、思わぬ出遭いからオリジナルの全曲盤を入手出来ましたので、これからまた全曲を楽しむ事が出来ます。中古レコードを購入すると必ずクリーニングしてから聴いているのですが、このオリジナル盤を入手した時は矢も盾もたまらずにそのままの状態で全曲を一気に聴き通してしまいました。そうしたら変なノイズも無く、盤の状態は極上です。スピンドル穴周辺にもヒゲは無いですし。
オペラ入門がベートーヴェンの「フィデリオ」という方はあまりいらっしゃらないと思いますが、私の場合クラシック入門が「運命」で、オペラ入門が「フィデリオ」なのです。ベートーヴェンは私にとって別格という事になります。
「こいつぁ春から縁起がいいわい・・・」と、言いたくなりますね。
今日は個人的に思い出深い録音のオリジナル盤入手の記事にさせて頂きました。ご容赦。
モーツァルト
ピアノ協奏曲第27番 変イ長調 K.595
ピアノ・ソナタ第11番 イ長調 K.331「トルコ行進曲付き」
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1955年3月、ウィーン(K.595)、1960年1月(K.331)
英DECCA SDD 116
以前、私の愛聴盤でご紹介済みの名演です。私が初めてこの演奏のレコードを購入したのはもう大昔になりますが、英DECCAプレスの米LONDONレーベルの廉価盤(Ace of Diamonds)でした。しかし、CDメインに切り替えた際、そのレコードは売却していました。
ところが先月、英DECCAレーベルのAce of Diamonds盤に巡り合いまして、700円という安さに釣られて購入してしまいました。それが上記の盤です。多分、1970年代後期か、1980年代にリカッティングされたレコードではないかと思われます。
演奏内容については愛聴盤のコーナーやスーパー・アナログ・ディスクの記事で語っておりますので詳しい事はここでは申しませんが、第27番のベストワンです。
モーツァルト
ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
ネヴィル・マリナー 指揮
アカデミー室内管弦楽団
録音 : 1971年6月、ロンドン
蘭PHILIPS 6500 283
こちらの指揮者は三代目ジェイムズ・ボンドを演じたロジャー・ムーアです。
あ、もちろんジョークですが、ブレンデルの協奏曲も好きで良く聴いております。録音が良いのでただ聴いているだけでも充足します。
などと言ったらこの名演に大変失礼になりますね。ブレンデルの適切なテンポと、一音一音の情感豊かな響きと時折転がるようなピアノの響きに魅了されます。
あっさり目の指揮に感じる事の多いマリナーの指揮ぶりも、このレコードではあまりそうした事が感じられませんので、不満なく楽しめます。
モーツァルト
ピアノ協奏曲第25番 ハ長調 K.503
ピアノ協奏曲第27番 変イ長調 K.595
フリードリッヒ・グルダ(ピアノ)
クラウディオ・アバド 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1975年5月、ウィーン
独グラモフォン 2530 642
グルダの第27番はバックハウスの演奏(アバド指揮のオケ含め)と良く似ていて、録音の新しいバックハウス盤として聴いています。ここではグルダ節を出す事なく、素直にモーツァルトを弾いています。
アバドの指揮もベームを参考にしたのではないかと思うくらいで、この録音を初めて聴いた時は驚いたものです。ですが、第27番についてはベームの指揮を一番と考える自分としましては、これで良いのです。
第25番も名演です。このコンビでは第20番、第21番の組み合わせによるレコードも出しており、SACDを以前ご紹介済みです。
ベートーヴェンの協奏曲で名演を聴かせるグルダですが、モーツァルトも負けないほどの名演です。
モーツァルト
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488
ピアノ協奏曲第19番 ヘ長調 K.459
マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1976年4月、ウィーン
独グラモフォン 2530 716
ポリーニのモーツァルト、聴く前はクエスチョンマークだったものですが、指揮がベームですから杞憂に終わりました。ポリーニのピアノ、正確無比である事には変わりありませんが、ベームのモーツァルト解釈に委ねるような演奏に感じます。ですから安心して楽しめるレコードです。
モーツァルトのピアノ協奏曲、まだまだ名演は沢山あります。
モーツァルト/歌劇「魔笛」全曲
夜の女王 : クリスティーナ・ドイテコム(ソプラノ)
タミーノ : スチュアート・バロウズ(テノール)
パミーノ : ピラール・ローレンガー(ソプラノ)
パパゲーノ : ヘルマン・プライ(バリトン)
パパゲーナ : レナーテ・ホルム(ソプラノ)
第1の侍女 : ハンエッケ・ヴァン・ボルク(ソプラノ)
第2の侍女 : イヴォンヌ・ミントン(メゾ・ソプラノ)
第3の侍女 : ヘティー・プリューマッヒャー(アルト)
ザラストロ : マルッティ・タルヴェラ(バス)
モノスタトス : ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)
弁者 : ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ゲオルグ・ショルティ 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
録音 : 1969年9月〜10月、ウィーン・ゾフィエンザール
英DECCA SET 479/81(ED4 初出)
昨日、ESOTERICのSACDをご紹介したばかりですが、今日は英DECCAのオリジナルレコードを。昨日の記事に記述した通り、最初に入手したのはキングレコードから発売された国内盤レコードでした。演奏に感動して繰り返し繰り返し聴いていたものです。
パパゲーノを歌っているヘルマン・プライに魅了され、現在まで変わらず大ファンです。ご本人は大分前にお亡くなりになっておりますが。この録音でパパゲーノを歌っているプライ以上のパパゲーノを未だ聴いた事がありません。
幕切れ少し前、世を儚んで首を吊ろうとして「ひとつ、ふたつ、みっつ」と数えるパパゲーノ。ここでのプライの歌唱はぐっと心に響きます。そこへ早まるな!と、三人の少年たちがパパゲーノの首吊りを止めると、おばあちゃんだと思っていたパパゲーナが現れ、実際は可愛い女の子と分かったパパゲーノは一気に元気になります。(^^)
「パ・パ・パ・・・♪」と、そのあとに続くパパゲーノとパパゲーナの二重唱の何と楽しい事。パパゲーナを歌うレナーテ・ホルムのチャーミングな歌声も実に素晴らしいです。悲しい音楽がこれ以上ない程の楽しい音楽に変わるこのシーン、モーツァルトの天才ぶりが窺えます。
ショルティの「魔笛」はパミーナを歌うピラール・ローレンガーも美しく素晴らしい歌声ですし、ザラストロのマルッティ・タルヴェラも申し分ないですね。唯一不満のある歌手は肝心のタミーノを歌うスチュアート・バロウズです。少し力み過ぎな歌唱に感じます。
さて、人間業とは思えないくらい素晴らしいコロラトゥーラを聴かせてくれるのがクルスティーナ・ドイテコムの夜の女王です。恐らくここまで完璧な夜の女王は他にないでしょう。ルチア・ポップも良かったですが、ドイテコムには敵いません。とにかく驚嘆の歌唱であります。
録音も英DECCAらしい先鋭さと美しさがあります。夜の女王が登場する時の雷の音、パパゲーノが飲み食いする時にグラスに注がれる酒の音、修行中のタミーノとパパゲーノを襲って来る動物の叫び声等、英DECCAらしく擬音も豊富です。(^^)
多分、初めて入手したキングレコード盤も英DECCAから輸入したメタル原盤を使ったプレスだったと思います。この英DECCAオリジナル盤に封入されているリブレット(解説&対訳)は一枚一枚が厚手の上質紙で作られており、実にコストの掛かった体裁です。レコードもそれなりに重量がありますし、レコード産業の良き時代だったのですね。
ESOTERIC盤のSACDと比較しますと、歌手陣の声はオリジナル盤レコードの方が若干良いです。特にドイテコムの夜の女王は問題なくオリジナル盤の方です。低域の柔らかい響きと伸びもオリジナル盤の方が良いですが、SACDもかなり肉薄しているように思います。私はどちらも捨て難いので、その時の気分で使い分けて聴いています。
もし、お前が今までに聴いて来たオペラの全曲盤で一枚だけを選べ、と言われたら、迷う事なくショルティの「魔笛」を選びます。
尚、ショルティは1990年にデジタルで再録音しておりますが、問題なく今日ご紹介の旧盤の方が圧倒的に素晴らしいです。
モーツァルト/歌劇「魔笛」全曲
夜の女王 : クリスティーナ・ドイテコム(ソプラノ)
タミーノ : スチュアート・バロウズ(テノール)
パミーノ : ピラール・ローレンガー(ソプラノ)
パパゲーノ : ヘルマン・プライ(バリトン)
パパゲーナ : レナーテ・ホルム(ソプラノ)
第1の侍女 : ハンエッケ・ヴァン・ボルク(ソプラノ)
第2の侍女 : イヴォンヌ・ミントン(メゾ・ソプラノ)
第3の侍女 : ヘティー・プリューマッヒャー(アルト)
ザラストロ : マルッティ・タルヴェラ(バス)
モノスタトス : ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)
弁者 : ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
ゲオルグ・ショルティ 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団
録音 : 1969年9月〜10月、ウィーン・ゾフィエンザール
ESOTERIC ESSD-90109/11
私の愛聴盤 第2回でご紹介済みの、私にとっての大愛聴盤です。今まで、国内盤レコードから通算したら、いったい何十回聴いて来ている事か。
愛聴盤の記事を掲載してから少し経った頃、中古店で英DECCAアナログレコードのオリジナル盤に出遭い、購入しました。
その後、今度はESOTERICさんからSACDが発売され、それも購入。したがって、ショルティの「魔笛」は愛聴盤の記事でご紹介した国内盤CDと英DECCAのオリジナル盤、そして今日ご紹介のSACDと、3つの形態で所持しております。
前述したように最初はキングレコードから発売された国内盤レコードで聴いていたのですが、レコードからCDをメインにした時に国内盤レコードは処分。で、愛聴盤の記事でご紹介したCDで聴くようになったのですが、音に多少の違和感を感じながら聴いていました。
さて、ESOTERICさんから発売されたこのSACDですが、CDとの音の違いは一聴して誰でも分かるくらいの違いがあります。国内盤CDはユニバーサル ミュージックの「THE ORIGINALS」という名称のデジタルマスタリングによるもので、このシリーズは全般に腰高の音の印象を持っています。デジタルは高域が伸びているという事を意識させるためか、高域を持ち上げていますね。
レコードの音を知っている者にとってCDの音はイマイチ満足出来ません。その点、ESOTERICさんのSACDは低域から高域まで非常にバランスが良く、オリジナル盤の音に近い出来栄えです。
いろいろなESOTERIC盤を聴いて来ましたが、ESOTERICさんのマスタリングの中でも最も成功したSACDではないかと思っております。
マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」全曲
サントウッツァ : フィオレンツァ・コッソット(メゾ・ソプラノ)
トゥリッドゥ : カルロ・ベルゴンツィ(テノール)
ルチア : マリアグラツィア・アレグリ(メゾ・ソプラノ)
アルフィオ : ジョンジャコモ・グエルフィ(バリトン)
ローラ : アドリアーネ・マルティーノ(メゾ・ソプラノ)
レオンカヴァルロ/歌劇「道化師」全曲
カニオ(道化師): カルロ・ベルゴンツィ(テノール)
ネッダ(コロンビーナ): ジョーン・カーライル(ソプラノ)
トニオ(タッデオ): ジュゼッペ・タッディ(バリトン)
ペッペ(アルレッキーノ): ウーゴ・ベネルリ(テノール)
シルヴィオ : ロランド・パネライ(バリトン)
農民 : ジュゼッペ・モレッシ(バス)
老いた農民 : フランコ・リッチャルディ(テノール)
ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団
ミラノ・スカラ座合唱団
録音 : 1965年9月29日〜10月5日、ミラノ・スカラ座
ESOTERIC ESSG-90116/17
ヴェリズモ・オペラを代表する「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」はセットでレコーディングされる事が多く、中でもカラヤン盤は歌手陣が揃い、オケが本場ミラノ・スカラ座という事で、名盤の誉れ高いものですね。
ヴェリズモ・オペラとはヴェリズモ文学(現実主義)に影響されたオペラで、綺麗な恋のお話しなどを描いた従来のイタリアオペラとは一線を画し、三角関係の嫉妬から相手を刺し殺したりする暴力的な描写がある作品です。
しかし、音楽は素晴らしいので、上演の機会も多い両作品ですね。特に「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲はとても美しい曲です。コンサートでも単独で演奏される事が多く、カラヤン自身もオペラ全曲盤とは別に「オペラ間奏曲集」といったレコードで採り上げており、名演を聴かせてくれます。
「道化師」ではカニオが歌うアリア「衣装をつけろ」が特に有名で、オペラ・アリアのコンサートでも歌われる事が多いですね。
このSACDは「魔笛」に劣らずSACD化が成功しています。私はレコードでこの録音を聴いた事がなく、CDでしか聴いた事がありません。
しかし、ESOTERIC盤入手後はCDを聴く事はなくなりました。
ただ、今日ご紹介のESOTERIC盤は大分前に発売(2014年12月)されておりますので、入手は困難と思われます。ご容赦。
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調
アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)
クラウディオ・アバド 指揮
ロンドン交響楽団
録音 : 1979年6月
グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調
ラドゥ・ルプー(ピアノ)
アンドレ・プレヴィン 指揮
ロンドン交響楽団
録音 : 1973年1月
ESOTERIC ESSD-90228
このSACDには不満がありまして、採り上げる事を逡巡していました。音に対して不満があったわけではなく、曲のカップリングに疑問を感じていたのです。ブレンデルのシューマンをSACD化するならオリジナルのカップリングで良かったのでは?
オリジナルのカップリングはウェーバーの小協奏曲で、曲も良いし演奏も良いのです。何もレーベルを跨いでラドゥ・ルプーのグリーグを持ってこなくても・・・。シューマンは蘭PHILIPS、グリーグは英DECCAの録音です。蘭PHILIPSは英DECCAに吸収されたとは言え、変なカップリングで発売してもらいたくないです。個人の感想ですが。
肝心の音も蘭PHILIPSのレコードを凌駕するほどではなかったです。一般的にはブレンデルのシューマンとルプーのグリーグが楽しめる事にこのSACDの価値があるのかもしれません。
ブラームス/交響曲第1番 ハ短調
ブルーノ・ワルター 指揮
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
録音 : 1952年12月
米COLUMBIA ML 5124(初出)
ブラームスの交響曲、ワルター盤では晩年にレコーディングの為に編成されたコロンビア交響楽団を指揮したステレオ盤が一般的に良く知られており、私も名演と思っております。
今日ご紹介のニューヨーク・フィル盤はワルターの旧盤で録音はモノラルです。ですがオケの力量はコロンビア交響楽団とは段違いですし、ワルターの解釈も平和的なコロンビア交響楽団とは異なり、多少攻撃的とでも表現したくなる引き締まった演奏です。
私の好みとしてはコロンビア交響楽団盤より、こちらのニューヨーク・フィル盤の方ですね。ニューヨーク・フィル時代のワルターは少なからずトスカニーニを意識していたものと思われます。それが良い方向に表れていたのではないかと私は思っています。
尚、CD化された音質も悪くはないですが、ややデジタル臭さが生じているように思います。対して、このオリジナル盤の音に不満はありません。イコライザーカーブはCOLUMBIAカーブです。
ブラームス
A-1. 交響曲第3番 ヘ長調
B-1. 大学祝典序曲
B-2. ハンガリー舞曲集
ブルーノ・ワルター 指揮
ニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団
録音 : 1953年12月(A)1951年3月(B-1, B-2)
米COLUMBIA ML 5126(初出)
交響曲第3番は第三楽章の甘く切ないメロディが映画音楽に使われた事ですっかり有名になりましたけど、この曲をブラームスの「英雄交響曲」と言った方がおられるとか。まぁ、ベートーヴェンの「英雄交響曲」が第3番という事に準えたのでしょう。
ここでのワルターもコロンビア交響楽団とは違い、かなり熱っぽい指揮ぶりです。終楽章など先人が申した英雄交響曲を思わせるクライマックスを築きあげて行きます。
平和的にブラームスを楽しみたい方はコロンビア交響楽団盤を、ワルターの個性を味わいたい方はニューヨーク・フィル盤をオススメします。
このオリジナル盤はA面に第3番全曲がカッティングされ、B面には管弦楽曲がカッティングされております。一曲目の「大学祝典序曲」も名演ですよ。
ベートーヴェン/交響曲第5番「運命」
ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1962年3月、イエス・キリスト教会(ベルリン)
独グラモフォン 138 804(赤ステレオ 最初期盤)
今日はベートーヴェンの「運命」、お気に入りの演奏をレコードでご紹介させて頂きます。
クラシック音楽にご興味のない方でもベートーヴェンの「運命」は必ずどこかでお聞きになっているはずです。冒頭のジャジャジャジャ〜ン♪だけはテレビドラマなどでも使われていますね。
私のクラシック音楽入門はカラヤン指揮による「運命」「未完成」をカップリングしたレコードで、17歳の時でした。高校生だった私は春夏冬の休みに木工所でアルバイトをしてお金を貯め、足りない分は父が出してくれた事で念願のステレオ装置を購入出来ました。
そして最初に購入したのがカラヤンのレコードだったのです。クラシックに知識がなくとも、カラヤンの名前だけは知っていました。もちろん最初は日本グラモフォンの国内盤です。見開きの豪華な作りのジャケットを初めて手にし、クラシックのレコードは作りが違うなぁと思ったものです。
カラヤンの「運命」と「未完成」は繰り返し繰り返し聴きました。何しろ高校生の小遣いでは月に一枚も買えませんでしたから。後はFM放送のクラシック番組が頼りでした。
カラヤンの「運命」は各楽章の演奏時間を今でもスラスラと言えます。だから何だ、と言われてしまいそうですが、そんな事まで覚えてしまうほど聴き込んでいたのです。
余談ですが昔、ジャズのオリジナル盤蒐集に夢中になっていた頃、見る事のないクラシックの中古コーナーを偶々見たらペラペラジャケットのヨーロッパ盤が激安で散見。モノによっては国内盤中古より安い。前にも申しましたが「これってジャズで言うオリジナル盤?」と思い、以後買い集める事になり、カラヤンのドイツグラモフォン盤と国内盤とを聴き比べたら、昔の女子高生じゃないですけど「え!うっそー」と言うくらいの音の違いに衝撃を受けたものです。
以来、特別な事情のない限り、国内盤を購入する事はなくなりました。後年、円高のお陰で国内盤より輸入盤の方が安く買えるようになった事もあり、秋葉原の石丸電気さんには随分お世話になりました。当時、輸入盤の仕入れ枚数については日本一だったのではないでしょうか。
所持している初期盤ですが、ジャケット裏右下に「3/63」と印刷年月が記載されています。アナログテープの場合、録音から発売まで通常一年から二年ほど掛かるのが普通でした。テープの切り貼りによる編集作業に時間が掛かるからですが。今迄、この年月より前の盤を見た事がないので、最初期盤と表示させて頂きました。
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1970年4月、ウィーン
独グラモフォン 2530 062
カラヤン盤の後、大分経ってから入手したのがこのベーム盤です。カラヤンのアプローチとは大分違う演奏ですが、当時はこちらのベーム盤の方を好むようになり、これまた繰り返し繰り返し聴いたものです。やはり最初は国内盤で聴いていましたが。
私、第二楽章の106小節から113小節の第一ヴァイオリンによる、うねるような変奏がとても好きでして、その部分の演奏解釈で一番素晴らしいのがこのベーム盤です。いろいろな演奏を聴いて来ていますが、その短い小節に関してはベーム盤を上回る演奏を未だ聴いた事がありません。またウィーン・フィルの弦の響きが最高!
第一楽章冒頭は比較的地味な解釈のベーム盤ですが、楽章が進むに従って徐々に熱が入って来ます。繰り返しますがウィーン・フィルが実に素晴らしいですね。今のウィーン・フィルよりこの当時の方が良いように思うのは私だけでしょうか?
生で聴いたベーム/ウィーン・フィルは素晴らしかったです。
交響曲第8番(B面)
ハンス・シュミット=イッセルシュテット 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1968年9月、ウィーン
英DECCA SXL6396(ED4 初出はED3)
これと言って個性的な演奏ではないですが、或る意味安心して楽曲を楽しめるのがイッセルシュテットではないでしょうか。これも最初はキングレコードの国内盤でした。指揮棒を持ったイッセルシュテットの顔がどアップになっている見開きの豪華ジャケットです。
国内盤も英DECCA盤もA面に「運命」全曲がカッティングされ、B面に第8番がカッティングされています。ただ、片面に「運命」全曲は詰め込み過ぎですね。A面に第一楽章と第二楽章、B面に第三楽章、第四楽章をカッティングし、余白に「エグモント」などの序曲でもカップリングしていれば、ダイナミックレンジに余裕を持たせる事が出来た筈です。
イッセルシュテット盤は第9番も一枚に詰め込んでいます。第8番と第9番とで2枚組にすれば良かったのに、と思います。カラヤン盤もベーム盤も、下のクライバー盤も「運命」だけで両面に余裕のカッティングです。
だからと言ってイッセルシュテット盤の音が良くないという事ではありません。なかなか上手くカッティングされてあります。録音も良いですし。
ちなみに交響曲第8番、私のベストワンはこのイッセルシュテット盤です。
カルロス・クライバー 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1974年3月、4月、ウィーン
独グラモフォン 2530 516
スタイリッシュな演奏とも言えるカルロス・クライバー盤です。石丸電気さんで購入した当時はイマイチ自分の琴線に触れず、ずっとレコードラックの中で眠っていました。
ESOTERICさんからSACDが発売された時も購入を迷ったのですが、ついでだからと他のSACDと一緒に購入する事に。久方ぶりにSACDで聴いてみたら結構気に入ってしまったのです。
これは多分、年齢による感受性の違いから来るものではないかと考えます。改めてレコードを引っ張り出して聴いてみると、印象はSACDで聴いたのと一緒。当たり前ですね、同じ演奏なのですから。音は微妙に違いますけど。
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1947年5月、ベルリン
独グラモフォン 2562 073(10枚組BOXの1枚)
今日の最後はフルトヴェングラーです。ベートーヴェンの交響曲を語る時、フルトヴェングラーを欠かす事は出来ませんですね。この演奏、私が初めて購入したのは日本グラモフォンの擬似ステレオ盤でした。ご紹介のレコードは以前記事にした事がある、独グラモフォンの10枚組BOXからの一枚です。
フルトヴェングラーの擬似ステレオ盤と言えば独エレクトローラの手によるブライトクランクと呼ぶ擬似ステレオ盤(EMI系)が有名ですが、私の印象ではブライトクランクよりグラモフォンの擬似ステレオ盤の方が楽器の分離がハッキリしていたように思います。まぁ、今は昔・・・の電気的処理の偽ステレオでしたが。
この演奏はフルトヴェングラーがナチの協力者と疑われ、戦後裁判にかけられたもののユダヤ系ヴァイオリニストのユーディ・メニューインの証言などから無罪放免となり、戦後初めてベルリン・フィルの指揮台に立った時の貴重なライヴ録音です。コンサート会場は連合軍の爆撃から残った映画館を改造したティタニア・パラスト。
必ずしもアコースティックは良くないですが、演奏の熱気がそうした事を忘れさせてくれます。ホールに入り切れなかった人たちが大勢外に屯したらしいです。戦後から約二年、ようやく公の場に現れたフルトヴェングラーの指揮をベルリンの人たちは待ち兼ねた事でしょう。
まさに歴史的録音と言えます。もちろん演奏も大変な名演奏です。フルトヴェングラーの「運命」では私が第一に選ぶ演奏であります。
という事で、今日は私お気に入りの「運命」をご紹介させて頂きました。
ベートーヴェン/交響曲第9番 ニ短調「合唱」
エリーザベト・グリュンマー(ソプラノ)
クリスタ・ルートヴィヒ(アルト)
ジェイムズ・キング(テノール)
ワルター・ベリー(バス)
カール・ベーム 指揮
ベルリン・ドイツ・オペラ管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団
録音 : 1963年11月7日、日生劇場でのライヴ録音(ステレオ)
ポニーキャニオン D30L0011(ニッポン放送開局35周年記念企画CD)
昨年の聴き納めは本日ご紹介するこのCDでした。購入したのはもう大分前ですが、実は一度も聴いていなかったのです。(^^;
昨年迄に数千枚のCDを何十回という回数と時間を掛けて売却して来ました。その時に未開封のままのCDが結構出て来まして、それらも断捨離の対象としました。
聴く事があると思われるCD、SACD(ハイブリッド盤)はオーディオ専用NASにリッピングし、売却しています。カラヤンだけでも400枚以上はリッピングしてあると思います。今思うと、何の為に膨大な量のCDを購入していたのか理解に苦しみます。おお、他人事だ。(笑)
昨年はアナログレコードに回帰した一年でした。と言っても断捨離して残ったレコードを聴いていたので、新規購入はほんの僅かです。何しろ、昔購入したオリジナル、初期盤でも未聴のものが結構あります。理由は購入していたオリジナル、初期盤のほとんどが国内盤で聴いていたからですが。
ずっと後年、CDメインに切り替えてからはレコードを聴くのが年に一度程度という事が長く続きました。レコードプレーヤーの動作確認が目的みたいなものです。そういう状況でしたから、買取業者に拙宅まで来てもらってレコードを一気に処分した事もあります。その後はCDが増殖したわけですが、あのプラケースは場所を取りますね。
さて、未開封のまま残っていたCDの一枚がベームの指揮による日生劇場での第九交響曲です。日生劇場の柿落とし公演として招いたベルリン・ドイツ・オペラ来日公演の記念的ライヴ録音で、他に「フィガロの結婚」と「フィデリオ」のライヴも発売されており、ニッポン放送開局35周年を記念した企画で発売されました。
ベーム初来日だったようです。今回ようやく封を切って聴いてみたら、なかなかの名演でした。録音も1963年という時代を考慮すると、とても優秀です。この時代の海外でのライヴ録音はモノラルがほとんどですが、これはステレオで録音されています。
第一楽章、第二楽章と聴いていくうちに、やはり聴衆を前にしたベームはスタジオ録音とは違うなぁ・・・と、思っていた矢先、
第三楽章で弦による変奏が広がると、あまりにも素晴らしい響きに私は全身に鳥肌が立って来てしまったのです。或る意味聴き慣れてしまっているベートーヴェンの交響曲です、そんじょそこらの演奏で感銘を受ける事はなくなっておりますが、いやいや参りました。
こんな名演奏のCDを購入後、長い間放ったらかしにしていた自分が情けなくなりました。聴きたいからCDを買っていた筈なのに、購入枚数に対して聴く時間の方が追い付いていなかったわけです。そのうち数千枚という枚数が溜まってしまったわけで・・・。一時は収納に二部屋使い、収納棚から溢れたCDが床を侵食し、更には部屋の外に積み上げるまでになっていたのですから異常事態でした。
レコードも有るわけでして、笑い事では済まされない量だったのです。しかし、断捨離の結果、現在はCDとSACDに関しては比較的小さなラックに収まっており、空きスペースが結構残っています。ただし、朝比奈隆さん専用の大きなCDラックを除いて、ですが。(^^;
閑話休題 第四楽章でも四人のソリストが当時の一線級と言える歌手を揃えているのと、ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団がまたお見事で、大変聴き応えのある第四楽章となっております。歌手たちはオペラ公演で来日しているわけですが、ワルター・ベリー、クリスタ・ルートヴィヒご夫妻、ワーグナー作品でも活躍されていたエリーザベト・グリュンマー、ジェイムズ・キングと、錚々たる顔ぶれ。
恐らく、客席で聴いていた人たちは大きな感銘を受けたものと思います。失礼ながら当時の日本のオケと歌手、合唱団の水準では大きな差があったと思われます。
後年、ウィーン・フィルとベートーヴェン生誕200年に合わせてドイツ・グラモフォンに録音した第九は私の愛聴盤の一枚ですが、聴衆を前にしたベームの熱の入った演奏は一味違います。テンポもスタジオ録音より若干早目で、脂の乗り切っている時代の名演と言えましょう。
クラシックファンはもちろんの事、クラシックにご興味のない方にも是非お聴き頂きたいと思う名演です。尚、長らく廃盤になっていたようですが、2019年11月にキング インターナショナルから再発売されているようです。
少々遅くなりましたが、新年おめでとうございます。
連日、強烈な寒さに見舞われたものの、関東域は晴れた日が続いて良いお正月になりました。雪国は大変な大雪のようで、お見舞い申し上げます。
私は昨日が仕事始めでしたが、年末年始をお休み出来た方はなかなか仕事気分にならなかったのではないかと想像します。
お正月、私が毎年楽しみにしているのがウィーンから衛星生中継(NHK-TV)されるウィーン・フィルのニューイヤーコンサート、そしてもうひとつは箱根駅伝です。
事前の前評判通り青山学院の圧勝でした。9区、10区では区間新記録、更に復路の大会新記録を記録したばかりではなく、総合でも2020年に出した青山学院自身の記録を上回る大会新記録を叩き出しました。凄いですね。来年も楽しみです。
私自身は肩の変調が続いており、今しばらくは音楽記事が多くなると思います。
それでは本年も拙ブログを、よろしくお願い申し上げます。
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