バックハウスのベートーヴェン
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ第31番 変イ長調
ピアノ・ソナタ第32番 ハ短調
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
米LONDON CM 9089(英DECCAプレス初期盤 1LR/1LR)
今日もバックハウスが弾くベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタをご紹介。
ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲の中で、私が一番愛好しているのがハ短調で書かれた最後の第32番なのです。ベートーヴェンの作品、ハ短調で書かれたものは別格ですね。
第32番の第一楽章第一主題、序奏の後に三連符で始まりますが、同じハ短調で書かれた交響曲第5番「運命」の運命動機のような感じがあり、とても劇的な主題で印象深いです。ここでのバックハウスは素晴らしい表現です。
第32番は劇的なソナタ形式の第一楽章と変奏曲で書かれた第二楽章の、僅か二つの楽章で構成されていますが、それだけに大変凝縮された無駄のない、ピアノ・ソナタの掉尾を飾る見事な楽曲ですね。
第31番も素晴らしい作品です。以前、NHK-BSでピアニスト、小山実稚恵さんが弾く第31番が放送された番組を見た(聴いた)のですが、コロナで次々とコンサートが中止に追い込まれていた時に小山さんはベートーヴェンの第31番に向き合っていたそうです。
小山さん曰く「第三楽章の嘆きの歌が何かに嘆くのではなく、もっと深いものがあってフーガという緻密なものを組み立てて行って、最後にはベートーヴェンらしい力が宿って来る」といった内容の事を話されておりました。
ベートーヴェンの後期ピアノ・ソナタは第30番、第31番、第32番の三曲が並行して書かれている事もあって、コンサートでもこの三曲をプログラムにして弾くピアニストがいらっしゃるようです。
このレコードに収録されているバックハウスの第31番も私如きが蘊蓄を語るまでもなく、大変見事な演奏を繰り広げております。最後のフーガも小山さんがおっしゃっていたように、ベートーヴェンらしい力を感じる名演であります。
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