ベートーヴェンのピアノ協奏曲(3)
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番 ト長調
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
クレメンス・クラウス 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1951年5月
英DECCA LXT 2629
バックハウスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲はステレオ録音(イッセルシュテット指揮)の方が一般的で、私自身も通常バックハウス盤を聴く場合はステレオ盤で楽しんでおります。しかし、今日ご紹介するのはモノラル録音の方です。
指揮は往年の名指揮者、クレメンス・クラウス。クラウスと言えばウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートの創始者であり、ウィンナ・ワルツ大好き人間の私にとっては馴染み深い指揮者でもあります。とは言っても残された録音を聴いているだけでありますが。
ベートーヴェンのピアノ協奏曲は全五曲とも名曲ですが、通常親しまれているのはやはり第3番から第5番までの三曲だと思います。第4番はそれまでの協奏風ソナタ形式のお約束事を破り、いきなりピアノ独奏で第一主題が奏されるという名曲ですね。
このバックハウスとクラウスによる第4番も名演です。後年のステレオ録音時と違いバックハウスのテクニックは万全で、勢いがあります。しかし、指先に任せてバリバリ弾いているだけではもちろんありません。第二楽章などは実に情感豊かです。
クラウスの指揮ぶりも良いですね。良い意味でのこれがウィーン風なのでしょうか? 私が一番に好んでいるシュタインとはまた違う良さを感じます。
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調
ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)
クレメンス・クラウス 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
録音 : 1953年6月
英DECCA LXT 2839
こちらの「皇帝」も堂々たる演奏であります。バックハウスの指先も「皇帝」でこそ一段と発揮されております。お馴染み第一楽章冒頭、オケによる変ホ長調の和音が強奏された直後に現れるピアノ、バックハウスの煌びやかと評したくなる見事な演奏からもう惹き込まれてしまいます。
その後を引き継いで主題を提示して行くウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による美しい演奏。クラウスの溌剌とした指揮がここでもお見事です。他の作曲家の協奏曲でも言える事ではありますが、中でもベートーヴェンの協奏曲はバックのオケ次第で聴き応えがまったく変わってしまいます。
この場合の「オケ次第」というのは「指揮者次第」という意味であります。そういう意味ではクラウスも見事なベートーヴェンを聴かせてくれます。
バックハウスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲、一般的にはステレオ盤を推奨しますが、モノラル録音の方も聴き逃せませんですよ。
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