2019年3月15日 (金)

私の愛聴盤 第28回

2704

モーツァルト/ピアノ・ソナタ第10番 ハ長調 K.330

マリア・ジョアン・ピリス(ピアノ)

ピアノ・ソナタ全集からの一曲
1989〜1990年録音

独グラモフォン 4775200(CD 6枚組)

プリアンプを交換してから、ピアノの再生がC-200以上に良くなったので、以前から愛聴しているピリスのモーツァルト/ピアノ・ソナタ全集の中から、取り分けお気に入りの演奏である第10番を繰り返し聴いています。

一般的には次の第11番「トルコ行進曲付き」があまりにも有名なので、第10番は少し損をしているような気がしないでもないですが、私的にはこちらの曲の方が好きなのです。もちろん「トルコ行進曲付き」も名曲名演奏ですが。

ハ長調という調が聞きやすさに繋がっている事もあるかもしれませんね。ドレミファソラシドという、極く当たり前の誰もが口ずさみやすい調ですから。

第一楽章冒頭、第一主題からモーツァルトらしい明るい旋律が溢れ出て来るのですが、これをピリスが実に軽やかに歌うように弾いています。もう何回も聴いているせいか、外を歩いている時など鼻歌交じりに自然とメロディを口ずさんでいたりします。

あ、口ずさむと申しましても、実際にハミングするように声を出しているわけではありません。頭の中でメロディを口ずさんでいるのですよ。(笑)

余談ですが、ピリスのフルネーム表記、確か日本コロムビアから登場した時は「マリア・ジョアオ・ピリス」だったような。その後、「マリア・ジョアン・ピリス」になり、NHKでは「マリア・ジョアン・ピレシュ」と呼ばれています。

欧米の方の名前をカタカタ表記するのは難しいですね。特に初めて紹介される時は最初に名前を読んだ日本人によるカタカナ表記となってしまいますので、その方が誤った読み方をすると、そのまま日本に伝えられてしまうわけですから。

ポルトガル出身の女流ピアニスト、ピリスも英語的発音にしてしまうとPiresをピリスとかピレスとも読めてしまいますよね。ところで彼女も74歳。昨年で現役を引退し、後進の指導にあたっているそうです。ボーイッシュな髪型で若い時の写真を見ると精悍な美人という印象です。

第二楽章アンダンテ・カンタービレ、聞き手に語りかけるようなピリスの演奏を聴いていると、実に心地良くなり、「あぁ・・・良いなぁ・・・モーツァルトは」と、しみじみ思ってしまいます。

第三楽章アレグレットは第一楽章の軽快さが戻って来ます。第一楽章第一主題より更にリズミカルな旋律をピリスは巧みに強弱を付けながら弾いていきます。聴いているこちらの身体が思わずスイングしてしまいそう。(^^)

尚、ピリスはモーツァルトの楽譜指示通り、ソナタ形式提示部の繰り返しだけでなく、展開部から再現部までも指示通り繰り返しています。通常、提示部の繰り返しはしても、展開部以降の繰り返しを楽譜通り繰り返すピアニストは少ないのですが。

ピリスのモーツァルト、良いですよ!

いつも思うのですが、音楽って良いなぁ・・・。

2019年3月 9日 (土)

私の愛聴盤 第27回

2688

シューベルト/ピアノ五重奏曲 イ長調「ます」

アルフレッド・ブレンデル(p)

クリーヴランド弦楽四重奏団員
ドナルド・ワイラーシュタイン(vn)
マーサ・ストロンギン・カッツ(va)
ポール・カッツ(vc)

ジェイムズ・ヴァン・デマーク(cb)

1977年8月 ロンドンでの録音 CDで発売中

音楽ネタが続きます。先月、アキュフェーズ C-2150を導入してから愛聴盤をあれこれ聴いているのですが、一番驚いたのが今日ご紹介するシューベルトのピアノ五重奏曲で、ブレンデルの旧録音(蘭フィリップス)です。

この録音は蘭フィリップスのアナログレコード、CDと聴き続けて来ている大愛聴盤です。ですからこの録音は、各楽器の響きがすっかり耳(頭)に入っています。C-2150で先ず聴いたのはお馴染みの第四楽章。スピーカーから音楽が聞こえた瞬間、まるで別録音を聴いたかのような錯覚に陥ります。

ブレンデルのピアノがぐっと前に位置し、クリーヴランド弦楽四重奏団員の三名とコントラバスがピアノからやや離れた後方に立体的に明確に聞こえて来ました。おまけにブレンデルのピアノは録音会場に良く響き渡り、反響音をマイクが良く捉えているため、上下の響きが実にリアルなのです。

C-200でもブレンデルのピアノ位置は弦楽器より前に位置しているのはもちろん分かっていましたが、これほどまでに定位が明確ではなかったですし、ピアノの響きの上下はここまで実感してはいませんでした。恐るべしアキュフェーズのプリアンプ、という思いです。

さて、いきなり前段が再生音についての与太話から始まってしまいましたが、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」は、ご存知のように同名の歌曲「鱒(ます)」の旋律を使った変奏曲が第四楽章となっているため「ます」の副題が付いております。

通常ピアノ五重奏曲と言えば、ピアノと弦楽四重奏との組み合わせですが、シューベルトはヴァイオリンを一挺にし、ビオラ、チェロにコントラバスを加えた編成にしていますので、聞こえる音域が独特な五重奏曲になっています。

ブレンデルは後年、デジタルで再録音しておりますが、私はこの旧盤を愛聴しております。録音当時、若手のクリーヴランド弦楽四重奏団員たちはピアニストとしての大ベテラン、ブレンデルのリードに付いて行ったのでしょうね。ピアノ協奏曲のように、ピアノとオーケストラによる丁々発止のぶつかり合い的演奏ではなく、実に聴いていて安心出来る名演奏です。

そうそう、シューベルトのピアノ五重奏曲は山田洋次監督の寅さんシリーズでも挿入曲としてバックに使われた事が私の記憶だけでも二本あります。一本は竹下景子さんがマドンナ役を務めた「口笛を吹く寅次郎」で、映画のところどころで聞く事が出来ます。

本当に名曲です。

2019年3月 8日 (金)

私の愛聴盤 第26回

2687

ベートーヴェン/交響曲第6番「田園」へ長調 作品68

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1971年5月、ウィーン・ムジークフェラインザールでの録音

ESOTERIC ESSG-90191(SACD/CD Hybrid)

今迄、何十回聴いたか自分でも覚えていないほどの愛聴盤をご紹介させて頂きます。

年代の古い録音で恐縮ですが、演奏録音とも最高です。カール・ベームがドイツグラモフォンに残したベートーヴェン交響曲全集の中の一曲ですが、私は未だにこの録音を超える演奏に出遭っていません。過去聴いて来たLP、CDに限定してという事ではありますが。

「田園」の名演奏というと、古くはブルーノ・ワルター/コロンビア交響楽団とか、アンドレ・クリュイタンス/ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の録音が有名ですが、私はそれらよりベームの方を上に取ります。

ベームのスタジオ録音って生真面目すぎてあまり面白くないのですが、この「田園」についてはその生真面目さが良い方向に働いたのではないかと思います。まさに楽想にピッタリという感じです。

「田園」のような楽曲はフルトヴェングラーみたいにやたらとテンポが動くと落ち着いて聴いていられません。その点、ベームはインテンポで曲を進めますが、第四楽章ではティンパニを強打させたりして嵐の描写を引き立てています。

ロマン派の作曲家に大きな影響を与えたとされる各楽章の標題。

第一楽章 田舎に着いた時の楽しい気分
第二楽章 小川のほとりの情景
第三楽章 田舎の人々の楽しい集い
第四楽章 雷鳴、嵐
第五楽章 牧歌 嵐の去った後の喜ばしい感謝の気持ち

ベームの演奏解釈はこれらの標題にまさにピッタリ。第二楽章の小川の情景、ウィーン・フィルの弦の音色は例えようがないほどの美しさ。楽章終結部分にはあのお馴染みのフレーズが木管楽器で奏されますが、何とも言えない鄙びた音色が素敵です。フルートがナイチンゲール、オーボエがウズラを、クラリネットがカッコウを模して吹かれる例のところです。

前述したように第四楽章ではティンパニが活躍しますが、実に小気味良いです。この辺りはライヴ録音と間違うほどベームの迫力ある指揮ぶりに感嘆します。

そして第五楽章冒頭の抑えたテンポに乗って奏でられるヴァイオリン群の音色の素晴らしさは、適切な言葉が見つからない、言葉では形容し難い美しさです。ああ・・・、この録音がウィーン・フィルで本当に良かった! そう思わせる演奏なのです。

クラシック音楽ファンにとっては耳タコになっている「田園」だと思いますが、私はこのベームの録音は何度聴いても飽きません。ベームのベートーヴェン交響曲全集、私は「運命」「田園」「合唱」の三曲はいずれも名演奏と思っています。

冒頭のジャケット写真はつい最近、高級オーディオブランドとして名が通っているESOTERICから発売されたSACD/CDのハイブリッド盤です。大好きな演奏なので通常盤のノーマルCDを持っていながらも購入したわけです。

しかし、国内廉価盤も普通に売られていますので、私の駄文に影響されて「ちょっと聴いてみようか」と思いましたら、その廉価盤で充分な音質ですのでお薦め出来ます。是非お聴きになってみてくださいませ。

2018年11月21日 (水)

私の愛聴盤 第25回

2390

モーツァルト/ディヴェルティメント 第17番 ニ長調 K.334
モーツァルト/ディヴェルティメント 第1番 ニ長調 K.136

ウィーン八重奏団員

1961年4月6、7日 ウィーン、ゾフィエンザール

ユニバーサル ミュージック PROC-1392/5
企画販売 : TOWER RECORDS

今日は私の愛聴盤のご紹介です。折に触れ、CDを取り出しては繰り返し聴いている名曲名演奏。今日ご紹介している音源はCDですが、実はもう長い間LPレコードで楽しんで来た演奏なのです。

その録音も含め、CDショップであるTOWER RECORDSの企画でウィーン八重奏団の録音の数々が4枚組のセットに纏められ、発売されています。録音年代からは時間が経っていますが、録音を担当したエンジニアは当時の英デッカを代表するエリック・スミスとジョン・カルショウです。問題あるわけありません、素晴らしい録音です。

ウィーン・フィルの楽団員たちが少数集まっての演奏で、ミニ・ウィーン・フィルとも言える素晴らしく美しいハーモニーを奏でています。そして、弦楽器に重なるウィンナ・ホルンの響きにも魅了されます。

モーツァルトの数多いディヴェルティメントの中でも第17番はもっとも人気のある曲ですから、編成を小さくしたフルオーケストラから室内合奏団、さらには今日ご紹介の室内楽的編成まで、実に様々な編成で演奏されています。しかし、どういう編成であれ、第17番の良さを味わえると思います。

第一楽章冒頭、軽く弾むようなメロディが美しい弦楽器の音色と共に始まると、もうこの曲の虜になる事請け合い。モーツァルトって、何でこういう絹の手触りのようなメロディが浮かんで来るのでしょうねぇ?

第二楽章アンダンテ、この曲の中でも私の好きな楽章です。ウィーン八重奏団員の得も言われぬ美しいハーモニーに酔いしれる事が出来ます。特にこの楽章はホルンが活躍しますが、ウィンナホルンの音色には惚れ惚れさせられます。それとウィーン・フィルが使う弦楽器の響きは何故こうも違うのか。録音も良いですね。

第三楽章メヌエットはもう、どなたも何処かで一度や二度は聞いているでしょう。例え曲名は知らなくても。このメヌエットはオーケストラ版よりも、ウィーン八重奏団員のような室内楽的編成の方が、より曲の良さを味わえるように思えます、私には。

第四楽章アダージョはしっとり、続く第五楽章の方のメヌエットは実に軽快。第三楽章のメヌエットとは対照的な曲想で、繰り返しますが、ここでも弦の響きは素晴らしいです!

第六楽章に来ると聴き慣れているせいもあるのでしょう、フィナーレらしさを感じる楽想に思わず身体がメロディに揺さ振られてしまいます。早い話がどの楽章もウィーン八重奏団員の演奏に魅了されてしまうという事なんです。(笑)

このディヴェルティメント 第17番はクラシック音楽が比較的苦手な方でも、BGMとして流せるのではないかと思います。最近は曲名の漢字表記を見る事はほとんどありませんが、以前はディヴェルティメントを日本語の漢字表記で「喜遊曲」と書かれていた事も。

レコードではおまけ的に収録されていたK.136の演奏も素晴らしい名演ですよ。毎度申しますが、今日のCDも音楽ファンの方には是非オススメします。

2018年9月15日 (土)

私の愛聴盤 第24回

2082

コン・アモーレ
愛の喜び〜ヴァイオリン名曲集

ジプシーの女(クライスラー)
愛の悲しみ(クライスラー)
愛の挨拶(エルガー)
感傷的なワルツ(チャイコフスキー)
美しい夕暮れ(ドビュッシー)
夜想曲 第20番(ショパン)
ガヴォット(ゴセック)
愛の喜び(クライスラー)
ハンガリー舞曲 第1番(ブラームス)

他、全17曲

キョンファ・チョン(ヴァイオリン)
フィリップ・モル(ピアノ)

1985年10月 録音
ユニバーサル ミュージック UCCD-50061(CD)

久々に私の愛聴盤を今日はご紹介させて頂きます。今年初ですね。

女流ヴァイオリ二ストのキョンファ・チョン、大分前にもブルッフのヴァイオリン協奏曲を愛聴盤として採り上げておりましたが、こちらの盤は良く知られているヴァイオリンのための独奏曲を集めています。

協奏曲などでは時に激情的な演奏を魅せてくれるヴァイオリニストですが、今日ご紹介のCDはしっとりと聴かせてくれます。特に「愛の悲しみ」や「愛の挨拶」、そしてショパンのピアノ曲をヴァイオリン用にアレンジした「夜想曲 第20番」は、聴いていて背筋がゾクゾクっとシビれて来まして、それはもう大感動ものであります。

クライスラーの愛奏曲はクライスラー自身による録音をオリジナルのSP盤で持っていますが、その自作自演盤も素晴らしい演奏ですね。しかし、キョンファ・チョンの演奏はクライスラー盤をも上回る、超絶的名演と私は感じ入っています。

同じクライスラーの作品でも「愛の喜び」は曲名通りリズミカルに、楽しく歌い上げており、聴いているこちらもつい身体が動いてしまいます。(笑)
ジャズ用語で言うところのスイングするような感じでしょうか。

一曲一曲コメントを書き込むとまた長くなってしまいますので(笑)、音楽ファンはただ黙ってお聴き頂きたいです。

本当に素敵な演奏が鏤められておりますよ。

2017年12月17日 (日)

私の愛聴盤 第23回

1137
独グラモフォン 2531 101

1138
ユニバーサルミュージック UCCG-90655(UHQCD)

ベートーヴェン/交響曲第2番 ニ長調 作品36

ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

1975年1月、1976年10月、1977年1月、2月、3月
ベルリン・フィルハーモニーザールでの録音

クラシック音楽を聴き始めた当初、交響曲のバイブルとも言うべきベートーヴェンの交響曲全9曲の中で、どういうわけか第2番だけは苦手というか、イマイチ魅力を感じませんでした。何人かの指揮者で聴いていましたが。

ところが或る時、カラヤンのグラモフォン盤(1962年録音)を聴いて、初めて第2番の素晴らしさを知ったのです。クラシック音楽のベテランファンほどカラヤンの音楽(特にベートーヴェン)に否定的になる人が多いですが、私はカラヤンのお陰で第2番の魅力を知ったわけですから、言わば恩人みたいなもの。^_^

で、今日はその録音をご紹介するのですが、その前にカラヤンにとってベートーヴェンの交響曲全集録音三回目(1977年か78年発売?)の第2番から先に採り上げます。

先日発売されたハイエンドオーディオマニア向けの雑誌「STEREO SOUND No. 205」の記事の中に、岡崎哲也氏による「帝王カラヤンのベートーヴェンに挑む(上)」という興味深い記事を見付けました。

この中で氏は1977年のベートーヴェン交響曲全集に触れております。前述したようにカラヤンにとって三回目(グラモフォンでは二回目)の全集録音で、まだアナログテープ時代ですね。その中で氏はCDの発売年(プレス)によって音に違いがある事を指摘しております。

岡崎氏は、独グラモフォン盤(オリジナル・イメージ・ビット・プロセッシング)より国内盤のウルティメイト・ハイ・クォリティ(UHQ)CDの音の方を好まれているご様子。私は何かに興味を持つと自分で試さないと気が済まない性格です。それが災いしてカメラ機材に散財して来たわけですが。(笑)

早速該当のCD(ジャケット写真2枚目)を買って来ました。今年、極力音楽メディアは買わないようにして来たにも関わらず。記事中で氏は「溜息のでるような弦の織物が堪能できる」と感想を述べております。弦楽器の音に人一倍拘る自分としては、これは聴いてみなければ、と思ったのです!

聴き比べる対象のCDは手持ちのもの(ジャケット写真1枚目)です。これはカラヤンのグラモフォン1970年代の全録音を網羅したCD BOXの中からの一枚です。レーベル番号はオリジナルレコードの番号だと思います。

聴き比べた結果は如何に?

僅かな差ではありますが、確かに国内のUHQCD盤の方に弦の艶やかさを感じました。それまで所有していた盤は後付けと思われるエコー成分が僅かに感じられるのと、弦の音が若干、本当に若干ですが、かすれた感じに聞こえます。木管楽器の音色も国内盤の方に優位を感じます。しかし、聴き比べていなければ今迄の盤にも不満はありませんでした。

アナログレコード程ではないですが、CDもレコード会社が違えば、そしてプレス工場が変わればCDの音も変わるという事です。プレス前のマスターを作る過程でエンジニアがミキシングに手を入れている場合もあるでしょう。録音した本国から送られたリマスターに若干の手を加えたりとか。

アナログレコードに関しては独グラモフォン盤と国内盤とでは明らかに独グラモフォン盤の方が音は良かったですが(盤質も)、デジタルはコピーしたものでもアナログのような劣化はありませんから、必ずしも本国盤の方が音が良い(好み)とは言えない事を今回の聴き比べで経験しました。^ - ^

しかしこの録音、足掛け3年に渡っていますね。恐らく1977年は細部の手直しが行われたのではないかと予想しています。パーフェクト主義のカラヤンですから。

1139
独グラモフォン 138 801

1962年1月、ベルリン・イエス・キリスト教会での録音

さて本題。今日は(も?)記事が長くなりましたが、私がカラヤンによって第2番の魅力を知った録音がこの演奏です。現在はハイレゾ音源も入手していますが、初めて聴いたのはアナログレコードです。

カラヤンの演奏によって「ミニ第9の緩徐楽章」と言っても良い第二楽章の美しさに目が覚めました。よく第1番と第2番はハイドンやモーツァルトの影響がまだ残っていると音楽学者が申しておりますが、私自身はやはり敢然としたベートーヴェンの個性が発揮された一大シンフォニーだと思います。

1977年盤の録音も名演ですが、やはり私はこの1962年盤の方がより好みです。テンポについては1977年盤の方が若干速くなっていますが、どちらも弦楽器と木管楽器の兼ね合いが実に素晴らしいです。ベルリン・フィル全盛期の名演奏と申して良いでしょう。

カラヤンは1980年代に入ってもう一度交響曲全集を録音(デジタル)しています。その他1977年の来日公演ではベートーヴェンの交響曲全9曲の連続演奏会が開かれており、そちらのライヴ盤も近年発売されていますが、いずれにしても第2番についてはカラヤンの演奏を私は第一に好みます。

2017年1月28日 (土)

私の愛聴盤 第22回

Gulda

ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集

フリードリッヒ・グルダ(ピアノ)
ホルスト・シュタイン指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1970年6月、1971年1月、ウィーン ゾフィエンザールで収録

英デッカ・ハイレゾ音源(192kHz/24bit)

CD、SACDでも発売中

今日は私の愛聴盤をご紹介させて頂きます。グルダをソリストに迎えたベートーヴェンのピアノ協奏曲全集です。CDでも発売されておりますが、最近私はハイレゾ音源をダウンロード購入しまして、悦に入っております。何しろ、滅茶苦茶愛している演奏ですから。

全5曲、全てお気に入りですが、中でも第4番が取り分け気に入っております。実はこの曲は2回目の登場です。(^^;
ただ、今日は改めて全5曲のご紹介で。今迄、いったい何回聴いて来たか自分でも分かりません。

古典派の協奏ソナタ形式の概念に捉われる事なく、ピアノのソロから始まるお馴染みの第4番。グルダのピアノが主題を奏でた後、ウィーン・フィルの弦が静かに追って来るように始まる僅か十数小節を初めてこの演奏で聴いた時、「やられた!」と思ったものです。

グルダはジャズマンとも共演してジャズピアニストとしても活動していたせいか、クラシック音楽愛好家からは醒めた目で見られがちですが、このピアノ協奏曲全集は実に正統的な演奏です。とは申せ、第5番「皇帝」の第一楽章冒頭のカデンツァのように独自的解釈でアッと言わせたりもしますが、そういうところでさえ「やられた!」と、良い意味で感心させられます。

第二楽章冒頭、シュタイン指揮するウィーン・フィルがまた素晴らしい! 一聴、紋切り型のような解釈に聞こえるかもしれませんが、他の多くの指揮者では満足出来る演奏はありません(自分には)。

そして第三楽章です。弾むような弦の調べに乗って、ピアノがより一層楽しげに弾むように登場。ここでのグルダの演奏は自分には形容の言葉が見つからないほどで、ただただ素敵!としか申せません。テンポ、リズム、強弱、もう最高です!

長らく私はこの第4番をキングレコードから発売された特製重量盤「スーパー・アナログ・ディスク」で楽しんで来ましたが、これからはハイレゾ音源もまた充分楽しんで聴く事が出来ます。嬉しい!

一曲ずつご紹介しますと大変長くなってしまいますので第4番のご紹介だけに留めおき致しますが、第5番「皇帝」も素晴らしい演奏です。第3番も、そして第1番も、もちろん第2番もです。要するに全5曲、どれも感動する演奏なのです。(笑)

最後にバイロイト音楽祭で「指輪」を指揮した事もあるホルスト・シュタインの指揮について触れておきます。日本では凡庸な指揮者としてレッテルが貼られているシュタインですが、この全集では奇跡的とでも言って良いほど、大変素晴らしい解釈を聴かせている事を特筆しておきます。

ああ・・・、音楽って良いなぁ・・・。

2016年12月22日 (木)

私の愛聴盤 第21回

Uno

宇野功芳&大阪フィル/一期一会のコンサート

モーツァルト/歌劇「フィガロの結婚」序曲
モーツァルト/交響曲第40番 ト短調
ベートーヴェン/交響曲第5番 ハ短調「運命」
ハイドン/セレナード

宇野功芳 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

2005年4月10日 大阪、ザ・シンフォニーホールでのライヴ録音

EXTON OVCL-00107

女声合唱指揮者・・・というより、音楽評論家として知名度の高かった宇野功芳さんが今年の6月10日、86歳でお亡くなりになりました。本来ならもっと早く今日の記事を認めたかったのですが、ご紹介するCDが一般的にはマイナーなので、今まで躊躇っておりました。

もう大分前になりますが、日本指揮者協会の立食パーティに参加した時の事です。宇野功芳さんとしばしお話しする機会があり、その時の会話の中で今でも忘れないエピソードがあります。

宇野さんはクラシック音楽雑誌「レコード芸術」のレコード月評、CD月評を長い間お続けになられておりましたので、私が「プライベートでCDをお聴きになる事ってございますか?」とお尋ねすると、

「いや〜・・・まったくないですねぇ・・・」と、苦笑いしながらお答えされました。

どんな事でも趣味で楽しんでいる分には良いですが、それを仕事にすると時には苦痛を感じたりするものです。毎月編集部から何十枚と渡されるテスト盤を聴いて評論を書く仕事をしていれば、プライベートで音楽を聴きたくなくなるのも理解出来ますね。

宇野さんは自ら編成した女声合唱団の指揮者として長い間ご活躍されていらっしゃいましたが、今日ご紹介するCDは女声合唱ではなく、メジャーなフルオーケストラを指揮したコンサートのライヴ録音です。大阪フィルといえば、改めて私が申すまでもなく、故朝比奈隆さんが手塩にかけて育て上げた日本を代表するオーケストラ。

その大阪フィルをクラシック音楽ファンなら「耳タコ」になっているであろう、超有名曲を今更振ってどうするの?・・・ましてフルオーケストラ相手の専門指揮者でもないのに・・・なんて思われたあなた、それは大変な間違いです。(キッパリ!)

私はこのCDを発売と同時に入手しておりますが、以来私の隠れ愛聴盤となっているのです。

演奏内容については書きたい事が沢山あるのですが、敢えて今日はあまり詳しく触れない事に致します。とにかく、ゴリゴリのクラシック音楽ファンの方ほど是非お聴き頂きたい超・・・超・超・超・超・超名盤ですから。(笑)

テンポ、間の取り方、ダイナミクスの作り方、ディミヌエンド、クレッシェンド、アッチェレランド、これでもかというくらいのティンパニの強打等々、これはモーツァルトの音楽でもなく、ベートーヴェンの音楽でもない、敢えて言うなら宇野功芳の音楽です。

初めて聴いた時の衝撃(感動)といったら・・・。いや、今でも繰り返し聴いておりますが、私は宇野さんに大喝采です!

世に「珍盤・奇盤」という珍しいレコードやCDを形容する言葉がありますが、今日ご紹介のCDもこれに当て嵌まるかもしれません。しかし、私は何回聴いても大きな感動を呼び起こされます。この演奏を一旦聴いたならば、今や世界的大指揮者と言われている小澤征爾さんの演奏が如何に面白くも何ともなく(失礼)、教科書通りの演奏かがお分かりになると思います。

多分、音楽を勉強している学生やプロの演奏家の方々は小澤さんのような演奏を好まれるのではないかと思います。それはスコアからまったく逸脱しない演奏だからです。

しかし、私は音楽を文字通り楽しんでいるのです。昨今のヴァイオリニスト、ピアニスト、皆さんテクニシャンが多くなりましたが、そうした演奏家の音楽に私は「ハート」を感じる事が実に少なくなりました。「機械音楽」に聴こえる事がしばしばです。

私は「ハート」を感じる音楽を聴きたいのです。そういう意味で、宇野さんの演奏(プログラムすべて)を聴いていると、私は「熱く」なります。これこそ「ハート」のある音楽なのです。他に新星日本交響楽団を振ったブルックナー/交響曲第8番も発売されていますが、これも名盤です。

オーケストラ指揮者として、もっともっとご活躍して頂きたかったです。

合掌。

2016年3月12日 (土)

私の愛聴盤 第20回

Backhaus

モーツァルト/ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K595

ウィルヘルム・バックハウス(p)
カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1955年3月、ウィーン楽友協会大ホールで録音

英デッカ 466 380-2(輸入盤)

お気に入りの音楽CDをご紹介させて頂いている「私の愛聴盤」シリーズも20回目となりました。今日はモーツァルト晩年の作品で、ピアノ協奏曲としての掉尾を飾る第27番。

古今東西、数多あるピアノ協奏曲の中で、私がもっともしっとりと聴く事が出来るのがこのモーツァルトの第27番なのです。チャイコフスキーの第1番のように絢爛豪華、実に華やかなピアノ協奏曲も好きですが、落ち着いてしみじみと晩年のモーツァルト作品の良さを味わえるのがこの曲です。

ピアノ協奏曲の中で一番愛する曲ですから、いろいろなピアニストの演奏を今迄聴いて来ました。しかし、60年も前に録音されたバックハウス盤が私の心をもっとも揺さぶった演奏です。近年の録音(CD)では内田光子さんの演奏も良かったですが、この曲に関する限り、バックハウス盤を凌ぐ演奏は今迄聴いた事がありません。

鍵盤の獅子王とも呼ばれ、ベートーヴェン弾きという良い意味のでレッテルを貼られているバックハウスのモーツァルト?

と、疑問に思われる音楽ファンもさぞ多い事でしょう。しかし、ここでのバックハウスはベートーヴェンを弾いている時とは違い、実に滋味深い演奏を繰り広げているのです。

カール・ベームの落ちついた指揮ぶりも実に曲想にマッチしていて、バックハウスのピアノに同化しています。モーツァルトの時代の典型的協奏ソナタ形式で書かれている第一楽章、オケの主題提示が終わり、ピアノの一音が弱音で始まった瞬間から音楽に引きずり込まれます。

ウィーン・フィルのひなびた音色の木管楽器がまた良いですねぇ・・・。第一楽章再現部でのピアノと弦のピッチカートとの掛け合いなど聴いているとジ〜ン・・・として来ます。

第二楽章、ピアノの主題提示の後に出て来るオケの寂しげな音色。ベームの適切なテンポと共に、「あぁ〜良いなぁ・・・」と、何回聴いても思ってしまいます。モーツァルト晩年の心情が表出しているような楽想と演奏解釈ですねぇ。バックハウスの一音、一音には本当に心揺さぶられます。

軽やかなロンド形式の第三楽章、バックハウスのピアノが弾むように主題を奏でていきます。そこにベームの切れの良い解釈にオケも呼応し、バックハウス、ベーム、ウィーン・フィルが三者一体になってモーツァルト最後のピアノ協奏曲を味わい深い演奏で心温まる思いをさせてくれます。

キングレコードの「スーパーアナログディスク」では第27番とピアノ・ソナタ第11番「トルコ行進曲付き」がカップリングされているのですが、この有名なピアノ・ソナタも私はバックハウスの演奏が一番好きなのです。

ちなみに第27番の録音年は1955年ですが、英デッカはすでにステレオ録音をしていたのです。他社はまだまだモノラル録音の時代なのに。さすが録音の良さで名を馳せた英デッカですね。

その録音、最新録音の音質にはもちろん負けますが、鑑賞する事にはまったく弊害はありません。ですからモーツァルトファンに是非お聴き頂きたい演奏です。いや、すべての音楽ファンに。

2016年1月13日 (水)

私の愛聴盤 第19回

Beetho9

ベートーヴェン/交響曲第9番 ニ短調 作品125「合唱」

グィネス・ジョーンズ(S)
タチアナ・トロヤノス(Ms)
ジェス・トーマス(T)
カール・リッダーブッシュ(Bs)

カール・ベーム指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団

独グラモフォン 474 693-2(輸入盤)

久々、音楽の話題です。
日本では毎年暮れ、ベートーヴェンの交響曲第9番「合唱」がプロ、アマ問わずコンサートで演奏されるのが定番となっておりますね。これは日本だけの風習らしく、欧米ではこういう事はないそうです。

欧米では何かの記念の時にこの曲が演奏されるようです。一例を挙げますとクラシック音楽ファンならご存知だと思いますが、往年の歴史的名指揮者フルトヴェングラーがバイロイトで指揮したこの曲のライヴ盤がその激的な演奏の素晴らしさから、歴史的名録音として残っておりますね。

その録音は戦後初めて復活なったバイロイト音楽祭を祝して、フルトヴェングラーがバイロイト音楽祭管弦楽団を指揮した演奏です。バイロイト音楽祭はワーグナーの作品だけを演奏する音楽祭であるにも関わらずベートーヴェンが演奏されたのは、やはり記念的なバイロイトの復活だったからなのでしょうね。

であるなら演奏する曲目はベートーヴェンの第9しかないだろう・・・という事でしょうか。

さて、暮れの年中行事であるベートーヴェンの第9交響曲の演奏会ですが、近年私はコンサート会場に足を運ぶ事なく、自宅でCDを聴いて年を越す事になっています。

で、昨年暮れ(つい二週間ほど前ですね)に聴いたCDが、今日ご紹介するカール・ベームの演奏でした。激的な解釈の第9を聴きたいなら前述したフルトヴェングラーのバイロイト盤ですが、曲そのものをじっくり味わいたいならこのカール・ベーム盤を先ず一番に私はオススメしたいです。

カール・ベームはスタジオ録音と演奏会とのギャップが比較的多い指揮者だと思います。ギャップと申しますのは、演奏会(ライヴ録音)では結構「燃える」演奏を聴かせてくれるのに、レコード化を目的としたスタジオ録音では平凡な演奏が比較的多いという意味です。

ところが、今日ご紹介するCD BOXはベートーヴェンの交響曲全集ですが、第5番「運命」と第6番「田園」、そして今日の第9番「合唱」はスタジオ録音ながら実に素晴らしい演奏を聴かせてくれます。中でも「田園」に関しては未だにベーム以上の演奏を聴いた事がないです。全くもって超絶的名演と称して良いと思います。

あ、今日は第9の方でした。(笑)
この第9ですが、私は今までに何回、いや何十回となく聴いています。そのくらい感動的な演奏なのです。今日はあまり細かい事は申しませんが(笑)、第一楽章、第二楽章ともウィーン・フィルの合奏能力も含め、見事な演奏を繰り広げています。

続く第三楽章、これがまた涙が出て来てしまうくらい実に美しい演奏なのです。ウィーン・フィルの弦がどういう賛辞をあげたら良いのか分からないほどの美しい調べを聴かせてくれるではないですか。とかにく黙って聴いてください。(笑)

いよいよクライマックスの第四楽章です。多分、学校の音楽教材として歌った経験があるかと思いますが、「喜びの歌」が歌われる最終楽章です。

ここで歌っている四人のソリストがまた四人とも素晴らしい声を聴かせてくれます。特に私が気に入っているのがソプラノのグィネス・ジョーンズです。過去、第9交響曲のソリストはその時代時代を代表する名歌手が歌っておりますが、中でもソプラノに関して私はグィネス・ジョーンズが一番気に入っています。

四重唱にグィネス・ジョーンズが入ってくると、私は鳥肌立ってしまうのです。本当に素晴らしいと形容して良い名唱だと思っています。
ジェス・トーマスもカール・リッダーブッシュもバイロイト音楽祭で活躍した歌手たちで、ここでもまた優れた声と歌いぶりです。

カール・ベームの解釈もこれでこそベートーヴェン、という指揮ぶりです。第三楽章のような緩徐楽章を美しく歌ったと思えば終楽章では激的な解釈も聴かせたりと、全く私は不満ありません。終楽章最後の畳み掛けるようなスピード感溢れる解釈はフルトヴェングラー並みに燃えていますよ。

ベートーヴェンといえば私は第一に朝比奈隆さんを挙げるわけですが、朝比奈さんの第9ってどういうわけか今ひとつ燃えきらないのですよねぇ・・・私は。

という事で、私がもっとも安心して聴ける、そして感動出来る第9が今日ご紹介したカール・ベームの演奏です。是非、お聴きになってみてくださいませ。尚、カール・ベームは晩年に同じウィーン・フィルで再録音(ジェシー・ノーマン、プラシド・ドミンゴ等)しておりますが、私は断然こちらの旧盤を推します。

今一度申しますが、本当に素晴らしい感動的な名演奏ですよ!