2022年5月12日 (木)

なんちゃってSACDとは?

8461

ドヴォルザーク
交響曲第8番 ト長調
交響曲第9番 ホ短調「新世界より」

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1985年1月(8番)、1985年2月(9番)、ムジークフェラインザール(ウィーン)

ESOTERIC ESSG-90250

音楽CDの愛好家、若しくはコレクターの間で、一般発売されているSACD(スーパー・オーディオCD)の中に「なんちゃってSACD」と呼んでいるディスクがあります。

その「なんちゃってSACD」とは、CDフォーマット(44.1kHz/16bit)で録音されていた初期のデジタル音源を「ハイレゾ相当」にアップコンバートし、SACDフォーマット(2.8224MHz/1bit)で発売されているディスクの事を言っております。元がハイレゾ音源ではないので、或る意味揶揄した呼び方ですね。

4Kテレビ(3840 x 2160ドット)で地上デジタル放送(1440 x 1080ドット)やフルハイビジョンのBS放送(1920 x 1080ドット)を見るのと同じです。4Kテレビでは4Kに満たない地上デジタル放送、BS放送をそれぞれアップコンバート(画素補完)してテレビ画面表示しています。

ちなみにハイレゾ(High Resolutionの略)とは、上記CDフォーマット以上でデジタル録音された音源の事と、オーディオ業界で定義しております。近年の録音は96kHz/24bit、192kHz/24bit等、CDフォーマットを遥かに上回るフォーマットで録音されるのが普通で、そうした音源がオリジナルのハイレゾのまま音楽配信サイトで配信されております。若しくはダウンロード販売等。

で、昨今一部ディスク愛好家の間でSACDの人気が上昇しており、レコード会社以外からもSACDが発売されている事はディスク愛好家ならどなたもご存知ですね。ハイエンドオーディオメーカーのESOTERICさんは随分前からSACDを発売しています。その他、オーディオ雑誌を出版しているステレオサウンド社も積極的に発売していますし、何よりTOWER RECORDSさんからはレコード会社とタイアップして多くのSACDが発売されています。

限定枚数で発売されているESOTERIC盤は特に人気があるようで、私もかなりの枚数を購入しております。ただ・・・、

ESOTERIC盤の中には「なんちゃってSACD」がかなり含まれています。例えばカラヤンのデジタル録音は時代的にすべてCDフォーマットで録音されておりますので、現在まで発売されて来たSACDはすべて「なんちゃってSACD」という事になります。

今日ご紹介のカラヤンが指揮するドヴォルザークはデジタル録音ですが、44.1kHz/16bitのCDフォーマットで録音されております。ですから愛好家が揶揄して言う「なんちゃってSACD」です。ESOTERIC盤は解説の最後に使用したマスターを記してありますので、そこを見ると今回のカラヤン盤は44.1kHz/16bitlのオリジナル音源を96kHz/24bitにアップコンバートしたデジタルファイル(音源)からSACD化した事が記述されております。

ですから元はハイレゾ音源ではないのに、アップコンバートしてSACD化されたディスクに4,000円もの高いお金を支払って愛好家は購入する事になります。私もその一人です。(笑)

ですが、もう「なんちゃってSACD」の購入はこのカラヤンのドヴォルザークを最後に止める事にしました。自分でCDとESOTERIC盤を聴き比べてみると、確かに音(音質ではない)は微妙に違います。ただ、この違いはESOTERIC盤をプロデュースしている大間知さんの好みの音に合わせてイコライジングした結果なのです。

ステレオサウンド社オンラインから、新規に立ち上げたESOTERICマスタリングセンターを紹介する動画が公開されています。その動画の中でマスタリングの様子が見られるのですが、再生される音を聴きながら大間知さんがエンジニアの方に細かい要望を出しています。それを見て、ESOTERIC盤は大間知さんが好む音にマスタリングされているのだなぁ・・・と、私は思いました。

本家(レコード会社)から発売されたCDとESOTERIC盤SACDとを聴き比べると、前述したように音の違いが若干感じられますが、SACD化されたからと言って劇的な違いはありません。何しろ元の音源はCDフォーマットなのですから。確かに弦楽器の音色、低域の響き方等に違いはあるのですが、それはあくまでもイコライジングによって周波数特性に違いが生じたという事であって、音質がアップしたわけではありません。

しかし、イコライジングの結果、本家CDでは聴こえていた細部が少し曖昧になってしまうという事がディスクによっては生じています。あちらを立てればこちらが立たず、というところでしょうか。

ちなみにアップコンバートだけならMac用の高音質ファイル再生ソフト、Audirvana(現在はPC用も有り)でも出来ます。SACDと同じDSDフォーマット、若しくはそれ以上にもアップコンバート出来ますし、CDの定番リッピングソフトdbpowerampですらリッピング時にアップコンバートしてリッピングが出来ます。

古い音源(アナログ録音)のSACD化に関してはTOWER RECORDSさんの方法を私は支持します。TOWER RECORDSさんはアナログ録音のSACD化を積極的に進めており、レコード会社が所有するオリジナル・マスターテープからダイレクトに192kHz/24bit、若しくはDSD(SACDフォーマット)化しており、この手法こそSACDのメリットを活かしていると思います。

もちろんアナログテープは録音時より数十年という時代を経て劣化(音質とテープそのものの損傷)はしているわけですが、現時点での復刻としてはTOWER RECORDSさんのやり方が最良ではないかと。デジタル機器はどんどん進歩していますから、最新機材でのデジタル化はマスターテープの情報を現状で最大限引き出す事が出来ると考えています。

ESOTERIC盤も音源がアナログ録音の場合は演奏者次第になりますが、これからも購入するつもりです。ただ、それも使っているマスターがいつ頃デジタル化されたものなのか気になりますが。

今日は「SACDを楽しむ」の番外編みたいな記事になりました。

2022年3月12日 (土)

SACDを楽しむ(22)

6308

ベートーヴェン/交響曲全集

バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ヘルヤ・アンゲルヴォ(アルト)
ヘルマン・ヴィンクラー(テノール)
ハンス・ゾーティン(バス)
日本プロ合唱団連合
東京藝術大学合唱団

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1977年11月13日〜18日、普門館(東京・杉並)

TOKYO FM TFMCSA-0041/2

CDが初発売された時に入手して聴いているライヴ録音です。その後、SACD(非圧縮盤)とBlu-rayオーディオが発売されているのですが、その時は見送っておりました。しかし今回、改めてリマスタリングを行なってSACDシングルレイヤー(2枚組圧縮盤)として発売されたので購入してみました。音はCDと比較すると低域に若干ですが力強さが出て、ヴァイオリンの高音域に艶が出たように感じます。

しかし、CDからSACDになったからと言って演奏そのものの印象が変わるわけでは勿論ありません。普門館というバカでかい入れ物でのコンサート、元々クラシックのコンサート向きのホールではないですから、録音条件も決して良くはなかったでしょう。人気絶頂期のカラヤンですから、招聘元は少しでも多くの聴衆を入れて儲けたかったのでしょうね。

カラヤンにとって最後のベートーヴェンチクルス(コンサート)になったそうで、そういう意味では貴重な録音となっております。当時の東京FMスタッフによる録音も良いですし、カラヤンとベルリン・フィル全盛期の記録としても今となっては貴重な録音と個人的に思っています。

6309

チャイコフスキー/三大バレエ組曲
1.「白鳥の湖」演奏会用組曲
2.「くるみ割り人形」演奏会用組曲
3.「眠れる森の美女」演奏会用組曲

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1961年9月(2)、1965年3月(1, 3)、ゾフィエンザール(ウィーン)

ESOTERIC ESSD-90171

このSACDはもう大分前に発売されたディスクですが、持っている事を忘れておりました。(^^;

英DECCAプレスのレコード(初期盤で白鳥と美女のカップリング)を持っているので聴き比べてみました。やらない方が良い事は分かっているのに。

やはりESOTERIC盤を聴くとオリジナルマスターテープの劣化を感じます。ESOTERIC盤も頑張っていますが。ただ、最近オーディオ誌で紹介されているESOTERICマスタリングセンターの室内写真(使用機材)を見ますとテープデッキは置いてないですから、ESOTERIC製SACDに使われているマスターはすべてレコード会社から提供されたデジタルデータなのでしょう。

英DECCAがデジタル化した時点で既にマスターテープは劣化が進んでいるわけで、SACDという特性の優れたフォーマットでも元の音源が良くなければフォーマットの優位性は発揮出来ないという、極めて当たり前の事にぶつかるわけです。仕方ないですが。

以前、ESOTERICのSACDは好みでないアーティスト以外は殆ど購入していましたが、最近は好みのアーティストですら購入しない事の方が多くなりました。もっとも食指が動かされる音源が出ていない事も理由のひとつですけど。

SACDの優位性は最新録音にあると思うのですが、嘗てのメジャーレーベルがクラシックの録音から離れてしまっていますので、期待出来ないですね。蘭PHILIPSが英DECCAに吸収され、その英DECCAも事実上消え去る状況です。英EMIもワーナーに吸収されて崩壊しました。

往年のアーティストを聴きたい時は再発売されるCDやSACDに頼らざるを得ないのですが、アナログ録音の音源についてはある程度の妥協が必要となりますね。

グダグダと愚痴めいた事を申しましたが、カラヤンのチャイコフスキーは良いですよ。バレリーナが踊れるような演奏ではないですが、演奏会用組曲の名演です。

6310

DISC 1
ベートーヴェン
1. 交響曲第3番 変ホ長調
2.「コリオラン」序曲

DISC 2
3. ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調
4. ブラームス/交響曲第1番 ハ短調

カール・ベーム 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1961年12月(1)、1958年12月(2)、1958年4月(3)、1959年10月(4)、イエス・キリスト教会(ベルリン)

TOWER RECORDS PROC-2326/7

壮年期のベームの張りのある演奏を集めたタワーレコードさんプロデュースのSACDです。このシリーズは良いものが多いので、結構購入しています。

ベートーヴェンは後年のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団との交響曲全集時の録音より、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団との演奏の方が良いと思われる方も多いのではないかと思います。

ブラームスの交響曲第1番は以前、独グラモフォンのオリジナル盤(モノラル)をご紹介済みですが、こちらのSACDは当然ステレオです。しかし、私はどちらかと言いますとオリジナルのモノラル盤の方を好みます。音にガッツがあり、演奏内容とマッチしていますので。(笑)

6311

ブルックナー
DISC 1
交響曲第3番 ニ短調

DISC 2
交響曲第4番 変ホ長調「ロマンティック』

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1970年9月(3番)、1973年11月(4番)、ゾフィエンザール(ウィーン)

TOWER RECORDS PROC-2316/7

「SACDを楽しむ」という記事ですから、当然自分が愛聴しているSACDをご紹介するべきなのですが、このSACDはひとつ上のベートーヴェン、ブラームスのディスクと同じく、購入を結構迷いました。余計な出費までしてSACDを購入する必要はないだろうと。

しかし、いつもそう思いながらもESOTERIC盤含め、ついつい購入しちゃいます。どういう「音」になっているのだろう? という、たったそれだけの興味だけで。(^^;

このSACDはベートーヴェンとブラームス以上にハズレ感が大きかったです。残念ながらショルティの指環と同じでマスターテープの劣化が進んでいたようです。ウィーン・フィルの深みのある音色がかなりスポイルされています。

ただ、二曲とも演奏は素晴らしいので、こちらのコーナーでも掲載(推薦)させて頂きました。演奏の良さが分からなくなるほど音が劣化しているわけではないですから。もっとも演奏の良さが分からないほど劣化していたら、そもそもSACD化しませんね。

2022年1月13日 (木)

SACDを楽しむ(21)

6166

モーツァルト/歌劇「魔笛」全曲

夜の女王 : クリスティーナ・ドイテコム(ソプラノ)
タミーノ : スチュアート・バロウズ(テノール)
パミーノ : ピラール・ローレンガー(ソプラノ)
パパゲーノ : ヘルマン・プライ(バリトン)
パパゲーナ : レナーテ・ホルム(ソプラノ)
第1の侍女 : ハンエッケ・ヴァン・ボルク(ソプラノ)
第2の侍女 : イヴォンヌ・ミントン(メゾ・ソプラノ)
第3の侍女 : ヘティー・プリューマッヒャー(アルト)
ザラストロ : マルッティ・タルヴェラ(バス)
モノスタトス : ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)
弁者 : ディートリッヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)

ゲオルグ・ショルティ 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団

録音 : 1969年9月〜10月、ウィーン・ゾフィエンザール

ESOTERIC ESSD-90109/11

私の愛聴盤 第2回でご紹介済みの、私にとっての大愛聴盤です。今まで、国内盤レコードから通算したら、いったい何十回聴いて来ている事か。

愛聴盤の記事を掲載してから少し経った頃、中古店で英DECCAアナログレコードのオリジナル盤に出遭い、購入しました。
その後、今度はESOTERICさんからSACDが発売され、それも購入。したがって、ショルティの「魔笛」は愛聴盤の記事でご紹介した国内盤CDと英DECCAのオリジナル盤、そして今日ご紹介のSACDと、3つの形態で所持しております。

前述したように最初はキングレコードから発売された国内盤レコードで聴いていたのですが、レコードからCDをメインにした時に国内盤レコードは処分。で、愛聴盤の記事でご紹介したCDで聴くようになったのですが、音に多少の違和感を感じながら聴いていました。

さて、ESOTERICさんから発売されたこのSACDですが、CDとの音の違いは一聴して誰でも分かるくらいの違いがあります。国内盤CDはユニバーサル ミュージックの「THE ORIGINALS」という名称のデジタルマスタリングによるもので、このシリーズは全般に腰高の音の印象を持っています。デジタルは高域が伸びているという事を意識させるためか、高域を持ち上げていますね。

レコードの音を知っている者にとってCDの音はイマイチ満足出来ません。その点、ESOTERICさんのSACDは低域から高域まで非常にバランスが良く、オリジナル盤の音に近い出来栄えです。

いろいろなESOTERIC盤を聴いて来ましたが、ESOTERICさんのマスタリングの中でも最も成功したSACDではないかと思っております。

6167

マスカーニ/歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」全曲

サントウッツァ : フィオレンツァ・コッソット(メゾ・ソプラノ)
トゥリッドゥ : カルロ・ベルゴンツィ(テノール)
ルチア : マリアグラツィア・アレグリ(メゾ・ソプラノ)
アルフィオ : ジョンジャコモ・グエルフィ(バリトン)
ローラ : アドリアーネ・マルティーノ(メゾ・ソプラノ)

レオンカヴァルロ/歌劇「道化師」全曲

カニオ(道化師): カルロ・ベルゴンツィ(テノール)
ネッダ(コロンビーナ): ジョーン・カーライル(ソプラノ)
トニオ(タッデオ): ジュゼッペ・タッディ(バリトン)
ペッペ(アルレッキーノ): ウーゴ・ベネルリ(テノール)
シルヴィオ : ロランド・パネライ(バリトン)
農民 : ジュゼッペ・モレッシ(バス)
老いた農民 : フランコ・リッチャルディ(テノール)

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ミラノ・スカラ座管弦楽団
ミラノ・スカラ座合唱団

録音 : 1965年9月29日〜10月5日、ミラノ・スカラ座

ESOTERIC ESSG-90116/17

ヴェリズモ・オペラを代表する「カヴァレリア・ルスティカーナ」と「道化師」はセットでレコーディングされる事が多く、中でもカラヤン盤は歌手陣が揃い、オケが本場ミラノ・スカラ座という事で、名盤の誉れ高いものですね。

ヴェリズモ・オペラとはヴェリズモ文学(現実主義)に影響されたオペラで、綺麗な恋のお話しなどを描いた従来のイタリアオペラとは一線を画し、三角関係の嫉妬から相手を刺し殺したりする暴力的な描写がある作品です。

しかし、音楽は素晴らしいので、上演の機会も多い両作品ですね。特に「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲はとても美しい曲です。コンサートでも単独で演奏される事が多く、カラヤン自身もオペラ全曲盤とは別に「オペラ間奏曲集」といったレコードで採り上げており、名演を聴かせてくれます。

「道化師」ではカニオが歌うアリア「衣装をつけろ」が特に有名で、オペラ・アリアのコンサートでも歌われる事が多いですね。

このSACDは「魔笛」に劣らずSACD化が成功しています。私はレコードでこの録音を聴いた事がなく、CDでしか聴いた事がありません。
しかし、ESOTERIC盤入手後はCDを聴く事はなくなりました。

ただ、今日ご紹介のESOTERIC盤は大分前に発売(2014年12月)されておりますので、入手は困難と思われます。ご容赦。

6168

シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)

クラウディオ・アバド 指揮
ロンドン交響楽団 

録音 : 1979年6月

グリーグ/ピアノ協奏曲 イ短調

ラドゥ・ルプー(ピアノ)

アンドレ・プレヴィン 指揮
ロンドン交響楽団

録音 :  1973年1月

ESOTERIC ESSD-90228

このSACDには不満がありまして、採り上げる事を逡巡していました。音に対して不満があったわけではなく、曲のカップリングに疑問を感じていたのです。ブレンデルのシューマンをSACD化するならオリジナルのカップリングで良かったのでは?

オリジナルのカップリングはウェーバーの小協奏曲で、曲も良いし演奏も良いのです。何もレーベルを跨いでラドゥ・ルプーのグリーグを持ってこなくても・・・。シューマンは蘭PHILIPS、グリーグは英DECCAの録音です。蘭PHILIPSは英DECCAに吸収されたとは言え、変なカップリングで発売してもらいたくないです。個人の感想ですが。

肝心の音も蘭PHILIPSのレコードを凌駕するほどではなかったです。一般的にはブレンデルのシューマンとルプーのグリーグが楽しめる事にこのSACDの価値があるのかもしれません。

2021年10月20日 (水)

SACDを楽しむ(20)

5853

R.シュトラウス/歌劇「薔薇の騎士」全曲

元帥夫人 : クレア・ワトソン(ソプラノ)
オクタヴィアン : ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
オックス男爵 : カール・リッダーブッシュ(バス)
ファーニナル : ベンノ・クッシェ(バリトン)
ゾフィー : ルチア・ポップ(ソプラノ)
マリアンネ : アンネリーゼ・ヴァース(ソプラノ)
アンニーナ : マルガリーテ・ベンツェ(メゾ・ソプラノ)
テノール歌手 : ゲルハルト・ウンガー(テノール)

カルロス・クライバー 指揮
バイエルン国立管弦楽団
バイエルン国立歌劇場合唱団

録音 : 1973年7月13日、ミュンヘン

独Orfeo D'Or C 581 083 D

「SACDを楽しむ」、回を重ねて20回目になりました。

カルロス・クライバーの「薔薇の騎士」は人気の演目だったようです。実際、このライヴ録音を聴いてみると、クライバーの指揮ぶりに感動を受けます。

歌手陣も当時の一線級が揃い、全くもって素晴らしい「薔薇の騎士」でして、前回ご紹介したバーンスタイン盤でもゾフィーを歌っていたルチア・ポップがここでも同じ役を演じています。解説書にステージの様子を写した写真が掲載されていますが、容姿も可愛らしいゾフィーですし、歌声も素敵です。

それとオックス男爵を歌っているカール・リッダーブッシュ、従来知られている遠慮会釈のない間抜けで図々しいキャラクターの男爵というより、少しは常識のある人物という感じを声を聴いていると思ってしまいます。見事なオックス男爵です。

5854

ベートーヴェン/交響曲第7番 イ長調

カルロス・クライバー 指揮
バイエルン国立管弦楽団

録音 : 1982年5月3日、ミュンヘン

独Orfeo D'Or C 700 051 D

こちらもクライバー全盛期のライヴ録音。当日のベートーヴェン交響曲第4番は通常のCDで発売されていますが、第4番はアナログレコードで所持しています。

スタジオ録音された独グラモフォン盤と同じく、大変スタイリッシュな第7番です。必ずしも私好みの演奏解釈ではありませんが、クライバーらしさが表出された名演だと思います。

5855

アルゲリッチ/バッハを弾く

J.S.バッハ
1. トッカータ ハ短調 BWV911
2. パルティータ第2番 ハ短調 BWV826
3. イギリス組曲第2番 イ短調 BWV807

マルタ・アルゲリッチ(ピアノ)

録音 : 1979年2月6〜9日、ベルリン

ESOTERIC ESSG-90161

嘗て、独グラモフォン盤のアナログレコードで散々聴き尽くしていた名演奏です。アルゲリッチのバッハ録音は珍しいので、そういう意味でも貴重な録音だと思います。

5856

モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595

クリフォード・カーゾン(ピアノ)
ベンジャミン・ブリテン 指揮
イギリス室内管弦楽団

録音 : 1970年9月24、25日 サフォーク、スネイプ・モールティングス・ホール

TOWER RECORDS PROC-2012

英国出身のピアニスト、クリフォード・カーゾンの名盤として一部ファンの人気を呼んでいる録音ですね。一部ファンとは大変失礼な言い方ですが、私はこのSACDで演奏を初めて聴きました。

実は購入目的、どちらかと言うとカーゾンよりブリテンの指揮ぶりに興味があったのです。第27番はモーツァルトのピアノ協奏曲で私が一番好きな曲目なので、興味深く聴かせて頂きました。

バックハウス、ベームのコンビのような超絶的名演とまでは申しませんが、楽しんで聴く事が出来ました。録音エンジニアはケネス・ウィルキンソンですから、音の方は文句ありません。

このSACDは本国アナログマスターテープから初めてダイレクトにDSD変換してからディスク化したそうです。ESOTERIC盤より、このTOWER RECORDS盤の方が良いとおっしゃる方もいるようで。

2021年10月 3日 (日)

SACDを楽しむ(19)

5802

シベリウス/交響曲第2番 ニ長調

朝比奈隆 指揮
大阪フィルハーモニー交響楽団

録音 : 1999年7月30日、大阪フェスティバルホールでのライヴ録音

EXTON OVCL-00753

新譜がSACDで発売されるという珍しいディスクです。CDとのハイブリッド盤なので、通常のCDプレーヤーでも再生出来ます。

1970年代に日本ビクターから発売されたライヴ盤の再発ではなく、世に出るのが今回が初めてというまったくの初発売です。朝比奈隆さん晩年のライヴ録音で、実に味のある演奏でした。

日本ビクター盤も良いですが、どちらを取るかと言えばこちらの新譜ですね。朝比奈隆さんはコンサート時、ご自身の反省目的のためなのか、可能であればライヴ録音(基本ワンポイント録音)してもらい、それをカセットにして朝比奈さんは頂いていました。

ですから権利関係さえ通れば相当数のライヴ録音が残っているはずです。もっとも当時の録音テープが残っていればの話しですが。何しろ発売目的での録音ではなかったですから。

5803

シューベルト/ピアノ・ソナタ第20番、第21番

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

録音 : 1983年12月、ウィーン(第20番)、1987年6月、ミュンヘン(第21番)

ESOTERIC ESSG-90245

完璧なシューベルトですね!

ベートーヴェンもそうでしたが、完全主義者のポリーニという感じを受けます。私にとってベートーヴェンは近寄り難いほどの演奏でしたが、こちらのシューベルトはまだまだ楽しめます。録音がまた素晴らしいです!

最近、マリア・ジョアン・ピリスのシューベルトを愛聴していたところでしたが、人間味を感じるのはピリス盤の方です。(^^;

5804

ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」全曲

トリスタン : ルネ・コロ(テノール)
イゾルデ : マーガレット・プライス(ソプラノ)
マルケ王 : クルト・モル(バス)
ブランゲーネ :ブリギッテ・ファスベンダー(メゾ・ソプラノ)
クルヴェナール : ディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ(バリトン)
メロート : ヴェルナー・ゲッツ(テノール)

カルロス・クライバー 指揮
シュターツカペレ・ドレスデン
ライプツィヒ合唱団

録音 : 1980年〜1982年、ドレスデン

ESOTERIC ESSG-90183/5

発売から大分経っていますが、ESOTERICさんから発売されたクライバーのトリスタンです。録音はデジタル録音初期で、多分CDフォーマット(44.1kHz/16bit)で録音されていたものと思います。ですからSACDは単なるアップコンバートという事になります。

通常CDとの音の比較ですが、元々がCDフォーマットでの録音ですから大きな差はありません。個人的には弦の響きはESOTERIC盤の方に良さを感じます。それも敢えて言えば・・・というくらいですが。

演奏については今更私が蘊蓄を述べる必要がない名演ですね。

5805

ジョン・カルショウ、プロデュース

R.シュトラウス/歌劇「薔薇の騎士」全曲

元帥夫人 : クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
オクタヴィアン : グィネス・ジョーンズ(ソプラノ)
オックス男爵 : ワルター・ベリー(バス)
ファーニナル : エルンスト・グートシュタイン(バリトン)
ゾフィー : ルチア・ポップ(ソプラノ)
マリアンネ : エミー・ローゼ(ソプラノ)
アンニーナ : マルガリータ・リローヴァ(メゾ・ソプラノ)
テノール歌手 : プラシド・ドミンゴ(テノール)

レナード・バーンスタイン 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団

録音 : 1971年3月22日〜24日、4月1日〜10日、ウィーン・ゾフィエンザール

ソニー・ミュージック SICC 10264/6

米CBSの音源ですが、ジョン・カルショウ率いる英DECCAの録音チームが米CBSのために録音した有名盤です。この「薔薇の騎士」の前に英DECCAは米CBSのためにバーンスタイン指揮による「ヴェルディ/ファルスタッフ」を録音。そのバーターとしてバーンスタイン/VPOによるマーラーの「大地の歌」、モーツァルトの交響曲「リンツ」とピアノ協奏曲第15番を英DECCAのために録音させてもらっています。

長らくニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団とのコンビで音楽活動に勤しんでおりましたが、ニューヨーク・フィルを離れ、活動の場をヨーロッパに移したバーンスタインは音楽が随分変わりました。クラシック音楽はヨーロッパが本場。バーンスタインも当初はその伝統に従っていたのかもしれません。

1968年、オットー・シェンク新演出による上演がウィーン国立歌劇場で行われており、大喝采を受けたそうです。その3年後に再演されており、その再演と並行して録音されたのが当録音との事。

元帥夫人をメゾ・ソプラノのクリスタ・ルートヴィヒが歌っているのが珍しいですね。カラヤン盤でルートヴィヒはオクタビアンを歌っていましたから。それよりグィネス・ジョーンズがオクタビアンを歌っている事の方が私は少々驚かされました。後にジョーンズは元帥夫人を歌っています。あ、ルートヴィヒと同じパターンだ。(^^)

それより何より、ゾフィーをルチア・ポップが歌っていて、実にチャーミング。(^^)

オペラを指揮する経験が浅かった録音当時のバーンスタインですが、なかなかの名演だと思います。「薔薇の騎士」は名盤揃いですね。

2021年8月13日 (金)

SACDを楽しむ(18)

5701

モーツァルト/歌劇「魔笛」全曲

ザラストロ : テオ・アダム(バス・バリトン)
タミーノ : ペーター・シュライヤー(テノール)
パミーナ : ヘレン・ドナート(ソプラノ)
パパゲーノ : ギュンター・ライブ(バリトン)
夜の女王 : シルヴィア・ゲスティ(ソプラノ)
パパゲーナ : レナーテ・ホフ(ソプラノ)
第1の侍女 : ハンネ=ローレ・クーゼ(ソプラノ)
第2の侍女 : ギーゼラ・シュレーター(ソプラノ)
第3の侍女 : アンネリース・ブルマイスター(メゾ・ソプラノ
弁者 : ジークフリート・フォーゲル(バス)

オトマール・スゥイトナー 指揮
ドレスデン・シュターツカペレ
ライプツィヒ放送合唱団

録音 : 1970年6月27日 - 7月9日、ドレスデン、ルカ教会

TOWER RECORDS(DENON) TWSA-1089/91

懐かしい演奏が最新リマスターでSACDが発売されたので、思わず購入してしまいました。昔、レコードで繰り返し聴いていたのですが、数年前にまとめてレコードを大量処分した時に手放していたのに・・・(^^;

「フィガロの結婚(ドイツ語版)」のレコードも一緒に手放していたのですが、そのフィガロも同時にSACDで発売されました。

この「魔笛」は東西ドイツが分断されていた時期の録音で、東側のアーティストによる演奏です。歌手陣も優れた人を集めていますが、この演奏に関しては指揮者のスウィトナーを聴くべき録音と思っております。モーツァルトファンの方には是非お聴き頂きたい名演です。

5702

J.S.バッハ/ブランデンブルク協奏曲(全曲)

カール・リヒター 指揮
ミュンヘン・バッハ管弦楽団

録音 : 1967年1月、ミュンヘン

ESOTERIC ESSA-90221/2

モダン楽器によるバッハの歴史的名演奏です。古楽器による室内合奏団が雨後の筍の如く現れる前の時代ですね、録音年代からすると。

フルートのオーレル・ニコレ、ホルンのヘルマン・バウマンと、ソリストにも名手を集めた演奏はリヒターのやや早目のテンポも相まって、緊張感を感じる名演です。

5703

ショパン/12の練習曲 作品10、作品25

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

録音 : 1972年1月、5月、ミュンヘン

ESOTERIC ESSG-90239

ベートーヴェンでは完璧過ぎて近寄り難い演奏を繰り広げるポリーニですが、何故かその完璧さがショパンには上手くハマっているように感じるのです。

なので、この練習曲集も好きな演奏です。

5704

メンデルスゾーン/ヴァイオリン協奏曲
サン=サーンス/ハバネラ
ラロ/スペイン交響曲

アルテュール・グリュミオー(ヴァイオリン)
ベルナルト・ハイティンク 指揮
アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団
マニュエル・ロザンタール 指揮
コンセール・ラムルー管弦楽団

録音 : 1960年5月、アムステルダム 1963年4月、パリ

ESOTERIC ESSD-90241

サン=サーンスとラロはTOWER RECORDSさんからもSACD化されており、そちらは以前ご紹介済みです。ですからこのESOTERIC盤の購入は随分迷ったのですが、結局購入してしまいました。

メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲はハイティンクの凡庸な指揮が曲をつまらなくしており、ただグリュミオーのヴァイオリンソロを聴くだけの演奏になっています。

この盤のメインはやはりラロのスペイン交響曲です。この曲の演奏では第一に挙げるべき録音だと思います。TOWER RECORDS盤と音を聴き比べてみたのですが、大きな違いはなく、あまり気にする必要はないと思います。それより、ハイティンクのつまらない指揮が最初に入っているESOTERIC盤より、TOWER RECORDS盤の方を私はオススメしておきます。

2021年7月 2日 (金)

SACDを楽しむ(17)

5550

ベートーヴェン
交響曲全集
「エグモント」序曲
序曲「コリオラン」

リン・ドーソン(ソプラノ)
ヤート・ファン・ネス(アルト)
アンソニー・ロルフ・ジョンソン(テノール)
アイケ・ヴィルム・シュルテ(バス)

フランス・ブリュッヘン 指揮
18世紀オーケストラ(古楽器による)
リスボン・グルベンキアン合唱団

録音 : 1984年〜1992年

ESOTERIC(旧 蘭PHILIPS) ESSD-90233/37

古楽器による演奏をあまり好まない私ですが、初めてベートーヴェンの交響曲を古楽器による演奏で聴いてみました。

古楽器による演奏は、極端なアーティキュレーションによってモダン楽器による現代のオーケストラ演奏とは、曲そのもののイメージがガラッと変わってしまう事が多いです。

数年前、既にお亡くなりになっておりますが、音楽評論家の宇野功芳氏が或る雑誌記事で古楽器演奏に関し、「極端なテンポと極端な強弱の取り方、古楽器演奏者のやりたい放題には本当に腹が立つ」というような事を書かれているのを読んだ時、私は我が意を得たりと思ったものです。

以前、拙ブログで書き記した事を繰り返しますが、古楽演奏者による極端なアーティキュレーションは、これが作曲された当時の演奏なのですと言わんばかり。と言うより、実際に音楽番組(NHK)のインタビューの中で、そのように話していた演奏家がおりました。私はそれを聞いて、「あなたはハイドン、モーツァルト、ベートーヴェンの時代に生きていたのですか?」と、言いたくなったものです。正に「講釈師、見て来たような嘘を言い」ですね。(笑)

古典派の音楽は録音システムが確立された事によって往年の指揮者、ソリストによる名演奏が後世に残されています。現代の演奏家にとってはどうしても残された過去の名演と比較されてしまうわけです。オーソドックスな演奏ではそうした名演を凌ぐ事が出来ない。であるならば極端な思い切った演奏で目立ちたいのではと。これは多少穿った見方になりますが。

少々私も極端な見解を申しましたが、モダン楽器と古楽器とでは奏法(特に弦楽器)がそもそも違うようで。私は楽器をやりません(出来ません)ので詳しい事は分かりませんが、古楽器(ヴァイオリン)の場合はモダン楽器と違いビブラートをかけずに演奏するらしいですね。それは弦が違うからだそうですが。確かに弦の響きは古楽器とモダン楽器とでは違いを感じます。

さて、今日ご紹介の18世紀オーケストラによるベートーヴェンですが、私が持っている古楽器演奏のイメージとは違い、音の響きは如何にも古楽器ですが、曲の解釈そのものは現代オーケストラによるベートーヴェン解釈に近く聞こえるのです。

ブリュッヘンの指揮は以前もハイドンの交響曲を指揮したESOTERIC盤をこのコーナーで採り上げておりますが、まるでモダン楽器を指揮しているような解釈に私はアレルギーを起こさずに聴き通す事が出来たのです。したがってベートーヴェンの交響曲全集のESOTERIC盤も購入してみようかと思ったわけです。

楽章によっては自分のテンポ感とは相容れない部分もありましたが、全9曲と序曲を楽しんで聴く事が出来ました。オケの編成そのものがウィーン・フィルやベルリン・フィルといった現代オーケストラに比べると室内オーケストラ並に小さいですから、どうしても響きに物足りなさは感じます。特に「英雄」や「運命」、第9番は。

元々ブリュッヘンはベートーヴェンに関しては第3番「英雄」までしか指揮しないつもりだったようですが、コンサートの評判が良かった事とレコード会社の意向もあって全9曲を録音する事になったようです。したがって全9曲の録音(ライヴ含む)を完了するまでに年月を要しています。

後年、全9曲を再録音しておりますが、今日のESOTERIC盤は古い方と申しますか、最初の録音での全集となっております。

長くなりましたが、初めて聴いた古楽器オーケストラによるベートーヴェンを今日はご紹介させて頂きました。

2021年6月22日 (火)

SACDを楽しむ(16)

5519

モーツァルト/歌劇「ドン・ジョヴァンニ」

ドン・ジョヴァンニ : サミュエル・レイミー(バリトン)
レポレッロ : フェルッチョ・フルラネット(バス)
騎士長 : バータ・ブルチュラーツェ(バス)
ドンナ・アンナ : アンナ・トモワ・シントウ(ソプラノ)
ドン・オッターヴィオ : エスタ・ウィンベルイ(テノール)
ドンナ・エルヴィラ : アグネス・バルツァ(メッゾ・ソプラノ)
マゼット : アレクサンダー・マルタ(バス)
ツェルリーナ : キャスリーン・バトル(ソプラノ)

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ベルリン・ドイツ・オペラ合唱団

録音 : 1985年1月、ベルリン

ESOTERIC ESSG-90209/11

ESOTERICの大間知さんはカラヤンがお好きなのか、カラヤンの録音が毎回のようにリリースされますね。で、今回の「SACDを楽しむ」は比較的最近発売されたカラヤン盤を採り上げてみました。

ちなみにこの「ドン・ジョヴァンニ」は、嘗てESOTERIC盤SACDのマスタリングを担当していた杉本一家氏の生前最後(2019年10月没)の仕事になっております。

「ドン・ジョヴァンニ」の録音盤は古くはフルトヴェングラー指揮によるザルツブルク音楽祭のライヴ盤、ジュリーニ盤、クレンペラー盤と、名盤が多いのですが、このカラヤン盤も名演です。個人的にはアグネス・バルツァによるドンナ・エルヴィラが素晴らしいと思っています。

5520

プッチーニ/歌劇「トゥーランドット」

トゥーランドット : カーティア・リッチャレッリ(ソプラノ)
皇帝アルトゥム : ピエロ・デ・パルマ(テノール)
ティムール : ルッジェロ・ライモンディ(テノール)
王子カラフ : プラシド・ドミンゴ(テノール)
リュー : バーバラ・ヘンドリックス(ソプラノ)
ピン : ゴットフリート・ホーニク(バリトン)
ポン : フランシスコ・アライサ(テノール)
パン : ハインツ・ツェドニク(テノール)
役人 : ジークムント・ニムスゲルン(バス)

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団
ウィーン国立歌劇場合唱団

録音 : 1981年5月、ウィーン

ESOTERIC ESSG-90243/4

カラヤンにとって、生涯一度も歌劇場で指揮する事のなかったオペラです。カラヤンのオペラ録音は公演と並行してレコード録音する事の多い指揮者でしたから、そういう意味ではこの「トゥーランドット」は珍しい録音になりますね。

トゥーランドット姫はビルギット・ニルソンのようなドラマティック・ソプラノに歌われる事が多い作品ですが、カラヤンが選んだトゥーランドット姫はリリックな声質のソプラノ、カーティア・リッチャレッリでした。

しかし、カラヤンは「トスカ」でもリッチャレッリを起用しておりますから、晩年のカラヤンは歴代の名ソプラノとは違う表現を試みたのかもしれません。

「ドン・ジョヴァンニ」と「トゥーランドット」、どちらもデジタル初期の録音ですからCDと同じフォーマットで録音されています。なので、せっかくSACD化されても、あまりメリットはありません。デジタルファイルのアップコンバートになるだけなのですが、その際のマスタリングをどうするかがエンジニアの腕の見せどころ。

5521

R.シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」、交響詩「死と浄化」

レオン・シュピーラー(ソロ・ヴァイオリン)
ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1985年2月、ベルリン

ESOTERIC ESSG-90227

5522

R.シュトラウス/アルプス交響曲、メタモルフォーゼン

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1980年12月、1982年1月、ベルリン

ESOTERIC ESSG-90240

R.シュトラウスの作品がオペラ(薔薇の騎士)含め、続けてリリースされているのですが、こちらもデジタル録音です。

SACD化するならアナログ録音でお願いしたいと思っておりますが、こればかりはどうにもなりません。カラヤンのメジャー録音(独グラモフォン、英DECCA、英EMI)はCDのBOX物で全録音を入手し、NASにリッピングした後、すべて売却しています。ン百枚ものCDを持っていても邪魔になるだけなので。(^^;

デジタル録音のSACD化は正直なところ、CDに比べて圧倒的に大きなメリット(音質面で)は感じられないので、毎回購入を迷いながらもつい購入しております。(笑)

まぁ、最新のデジタル機器を使ってのマスタリングですから、まったくメリットがないわけでは勿論ありません。今日ご紹介のSACDもCD(リッピング音源)とじっくり聴き比べてみれば、やはりデジタル録音初期のデジタル臭さは無くなり、弦楽器の響きにも艶が感じられます。

ところで、高音質ストリーミングでハイレゾ音源を聴くようになってから考えてしまいました。毎月僅か980円でハイレゾ音源を聴き放題出来るのに、わざわざ一枚4,000円近い金額を出してSACDを購入する意味はあるのかと。

厳密に聴き比べればまだまだSACDの方が若干上回りますが、相手は電波ですから。しかし、その配信も利用方法(機器、接続等)を今後考えて行けば幾らでも音質アップの手はあります。

う〜む・・・(笑)

2021年5月 2日 (日)

SACDを楽しむ(15)

5335

レハール/喜歌劇「メリー・ウィドウ」

ハンナ(裕福な未亡人): エリザベート・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
ダニロ(伯爵でハンナの元恋人) : エバーハルト・ヴェヒター(バリトン)
カミーユ : ニコライ・ゲッダ(テノール)
ヴァランシエンヌ(ミルコの妻) : ハニー・シュテフェック(ソプラノ)
ミルコ : ヨーゼフ・クナップ(バリトン)
カスカーダ : クルト・エクィルツ(テノール)

ロヴロ・フォン・マタチッチ 指揮
フィルハーモニア管弦楽団、合唱団

録音 : 1962年7月、ロンドン・キングズウェイ・ホール

TOWER RECORDS(英EMI) TDSA-190(4月28日発売)

発売日にTOWER RECORDSさんから届いたレハールのウィンナ・オペレッタをご紹介します。

オペレッタとは、イタリア語で「小さいオペラ」という意味になるそうですが、日本では「喜歌劇」と表記しています。小さかろうが大きかろうがオペラとは言ってもオペレッタは基本喜劇なので、日本語の「喜歌劇」とは上手く言ったものですね。

セリフと歌でストーリーは進みますので、後年のアメリカン・ミュージカルのようなものと思って頂ければ良いと思います。「メリー・ウィドウ」はレハール(1870.4.30 - 1948.10.24)の代表作と申して良いと思います。「メリー・ウィドウ」とは日本語に訳すと「陽気な未亡人」という意味です。

嘗ては恋仲だったハンナとダニロですが、貴族社会では良くある身分違いのために二人は結ばれなかったのです。その後、ハンナは大金持ちと結婚したのですが、何と僅か八日でご主人が亡くなり、巨万の富を得てしまったのです。ハンナが得た財産を狙っていると思われるのが嫌でダニロはハンナから距離を置くのですが・・・。

この「メリー・ウィドウ」を指揮しているユーゴスラビア(現クロアチア)出身の指揮者ロヴロ・フォン・マタチッチ、日本ではブルックナー指揮者として名が通っており、マタチッチの喜歌劇? と、ブルックナーファンからは訝しがられるかもしれませんね。

調べてみると、マタチッチはウィーンで音楽を学び、歌劇場で鍛え上げて来た指揮者なのです、実は。晩年、NHK交響楽団の名誉指揮者となり、日本でもお馴染みの指揮者ですね。拙宅にもNHK交響楽団を指揮したライヴ盤が有ります。

で、この「メリーウィドウ」、演奏時間79分があっという間で、本当に楽しく聴く事が出来ました。元々LP時代から有名な録音でしたが、新規にオリジナル・マスターテープからデジタルリマスタリング(192kHz/24bit)が行われています。その名盤が800セットという限定(シリアルナンバー付き)ですが、復刻されました。

 オペレッタと言えばヨハン・シュトラウスの作品が有名ですが、レハールの「メリー・ウィドウ」もステージで演奏される機会の多い作品です。第二幕でハンナが歌う「ヴィリアの歌」は特に有名で、オペラアリアのコンサートなどでも良く歌われます。

「メリー・ウィドウ」はカラヤン盤も名演として音楽雑誌の「名曲名盤」を特集した記事で紹介されますが、マタチッチ盤も良い演奏ですよ。録音が英EMIとは思えないくらい鮮鋭で、英DECCA録音と言っても信じてしまいそうです。そのくらい良い音で収録されています。

久々にレハールのオペレッタを楽しみました。(^^)

2021年4月24日 (土)

SACDを楽しむ(14)

5293

R.シュトラウス/歌劇「ナクソス島のアリアドネ」

プリマドンナ/アリアドネ : グンドゥラ・ヤノヴィッツ(ソプラノ)
ツェルビネッタ : シルヴィア・ゲスティ(ソプラノ)
作曲家 : テレサ・ツィリス=ガラ(ソプラノ)
テノール歌手/バッカス : ジェイムズ・キング(テノール)
音楽教師 : テオ・アダム(バリトン)
水の精 : エリカ・ヴェストマン(ソプラノ)
木の精 : アンネリース・ブルマイスター(ソプラノ)
ハルレキン : ヘルマン・プライ(バリトン)
舞踏教師/スカラムッチョ : ペーター・シュライヤー(テノール)

ルドルフ・ケンぺ 指揮
シュターツカペレ・ドレスデン

録音 : 1968年6月、7月 ドレスデン・聖ルカ教会

TOWER RECORDS(英EMI) TDSA177/8

四管編成の大オーケストラ作品が多いR.シュトラウス(1864 - 1949)の作品ですが、この「歌劇「ナクソス島のアリアドネ」は僅か36名編成のオーケストラで演奏されるという、珍しい作品です。東西冷戦下の1968年、録音は西独エレクトローラ(独EMI)と東独シャルプラッテンとの共同制作。

このSACDはTOWER RECORDSレーベルからの発売で、本国にあるオリジナルのアナログ・マスターテープから192kHz/24bitでデジタル化したマスターを使い、800セットでの限定販売(シリアル・ナンバー付き)です。発売は昨年12月。

さて、この作品はプロローグと実際のオペラの二部構成で、プロローグではオペラに出演する歌手や作曲家、音楽教師のドタバタぶりが描かれています。本番のオペラはお伽話のような感じで、楽劇「サロメ」を作曲した人とは思えない作品です。

ギリシャ神話に登場するアリアドネの悲劇が描かれているのが本番のオペラなのですが、私はところどころワーグナーの楽劇「ワルキューレ」の第一幕とオーバーラップしました。

バッカスを歌っているのがワーグナーの作品で一時引っ張りだこだったテノールのジェイムズ・キング。ジークムントを歌っているような感じで、アリアドネがまるでジークリンデのよう。R.シュトラウスの音楽もワーグナーを意識して作曲したのではないかと思うほど雰囲気が似ている箇所があるのです。

しかし、R.シュトラウスの音楽も素晴らしいです。室内オーケストラほどの編成でありながら、時にフルオーケストラ並みの響きを奏でます。ですが、全体的にはお伽話に相応しい音楽で、R.シュトラウスに対する印象が大きく変わりました。

アリアドネを歌っているグンドゥラ・ヤノヴィッツがまた素敵な声を聴かせてくれます。声が少し若いですね。私が知っているヤノヴィッツはもっと後の時代なので、とても新鮮に感じました。

シルヴィア・ゲスティのツェルビネッタも見事なコロラトゥーラを聴かせます。ハンガリー出身のゲスティは東ドイツで活躍された方なので、西側での録音が少なかった事が悔やまれます(後に西側へ亡命)。素晴らしいソプラノですね! スウィトナーが指揮したモーツァルトのオペラでも歌っていますが、 3年前に惜しくも亡くなられております。

ところで私が一番驚いたのはバリトン歌手でもっとも贔屓にしているヘルマン・プライがこの作品に参加していた事。聴く前、歌手陣の名前は主役クラスしか注意して見ていなかったのです。
・・・が、

途中で、「あれ? この声ってヘルマン・プライじゃないのかなぁ?」と思ってインレットの配役欄を見直してみると、下の方に記述があるではないですか。ハルレキンというチョイ役にヘルマン・プライの名前がありました。やはり! プライ参加でこの録音の価値が一段上がりましたね。(笑)

ケンペ生誕110周年を記念したディスクですが、TOWER RECORDSさんは埋もれ気味になっている貴重な録音を復刻してくれますので、これからも期待しています。