2022年5月20日 (金)

モーツァルトのピアノ協奏曲(5)

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モーツァルト
ピアノ協奏曲第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」
ピアノ協奏曲第17番 ト長調 K.453

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)

クラウディオ・アバド 指揮
ロンドン交響楽団

録音 : 1981年11月、ロンドン

独グラモフォン 2532 060(レコード)

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モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
ピアノ協奏曲第12番 イ長調 K.414

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)

クラウディオ・アバド 指揮
ロンドン交響楽団

録音 : 1981年11月、ロンドン

独グラモフォン 2532 053(レコード)

今日はルドルフ・ゼルキン(1903/3 - 1991/5)の演奏をご紹介させて頂きます。ゼルキンはボヘミア出身のユダヤ系ピアニストで、ナチスから逃れるため1939年、米国へ移住したようです。したがって演奏の場は米国が中心でした。

私、どういうわけか米国で活躍しているアーティストを聴く機会が大変少なかったのです。ですから米CBSや米RCAに録音していたアーティストはあまり聴いていません。ブルーノ・ワルターくらいですね、愛聴していたレコード、CDは。

したがってゼルキンも全くと言って良いくらい聴いた事がなかったのです。初めて購入したレコードが上記モーツァルトのピアノ協奏曲第9番、17番をカップリングした独グラモフォン盤でした。デジタル録音ですから何もレコードではなくCDを購入して聴けば良いのですが、理由は覚えておりませんがレコードを購入しています。

で、「ジュノム(ジュノーム)」と副題が付いている第9番を聴いた時は結構な衝撃を受けました。過去聴いて来たどの演奏よりもテンポが遅く、実に堂々たるピアノ協奏曲になっており、私はこの演奏に大変興味を惹かれたものです。と同時に大きな感動も味わいました。

この協奏曲はベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番の魁と言っても良く、第一楽章冒頭オケが鳴った直後にピアノがフォルテで登場するのですが、その瞬間からテンポの遅さに気が付かされます。当然、アバドが指揮するオケも遅目のテンポで主題提示が続きます。多分、このテンポはゼルキンに合わせているのだと思います。

第二主題は「フィガロの結婚」で、スザンナとマルチェリーナが睨み合う時に歌われる二重唱に良く似たメロディでして、モーツァルトらしい軽快で実に美しいものです。この第二主題もアバドの指揮によるオケが美しく奏され、ゼルキンのピアノも抑え目に奏でられます。第二楽章の悲劇的な主題もアバドの指揮ぶりは実に素晴らしいです。その後に登場するゼルキンのピアノの美しさと言ったら・・・。

第17番はモーツァルトのピアノ協奏曲の中でも私が好んで聴いている曲目でもあるのですが、ここでも第一楽章冒頭から遅目のテンポで始まり、モーツァルト作品の美しさを十二分に味わう事が出来ます。第二楽章、モーツァルトのアンダンテは何故こんなにも魅力的なのでしょうか? 第三楽章では軽快な弦の刻みが何とも言えない最高の解釈。ゼルキンのピアノも遅目ながらも軽快さを感じさせる表現に魅了されます。

もう一枚の第20番と第12番をカップリングしたレコード。第20番は蘭PHILIPSに録音したクララ・ハスキルの演奏が超一級の名盤として愛好家の間で有名ですが、このゼルキンの演奏も枯れた味わいと申したら良いでしょうか、第二楽章などは本当に聴き惚れてしまいます。そして第三楽章冒頭、一聴何となく辿々しく入る様子が微笑ましく、「あれ? 指が動かないのかな?」などとバカな事を思ってしまうくらい不思議な演奏です。

第12番は第一楽章の第一主題がモーツァルトらしいメロディですが、ここでもアバドの指揮を素晴らしい表現で聴く事が出来ます。そして第二楽章は深刻で奥深い表現に惹き込まれます。その後に登場するゼルキンのピアノは絵も言われぬ美しさ。そして軽快なロンドの第三楽章でこの曲が締められます。

たった二枚のレコードでゼルキンのピアニスティックに酔いしれてしまったわけであります。

最初、しばらくは上記のレコード二枚でゼルキンのモーツァルトを楽しんでいたのですが、偶々ゼルキンが独グラモフォンに録音したすべてを網羅したCD BOXが発売されている事を知り、安価な事もあって購入しました。それがこれ ↓ です。

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ルドルフ・ゼルキン・エディション

モーツァルト/ピアノ協奏曲
DISC 1
第9番 変ホ長調 K.271「ジュノム」
第17番 ト長調 K.453

DISC 2
第20番 ニ短調 K.466
第12番 イ長調 K.414

DISC 3
第27番 変ロ長調 K.595
第8番 ハ長調 K.246「リュッツォウ」
第16番 ニ長調 K.451

DISC 4
第21番 ハ長調 K.467
第23番 イ長調 K.488

DISC 5
第25番ハ長調K.503
第19番ヘ長調K.459

DISC 6
第15番 変ロ長調 K.450
第22番 変ホ長調 K.482

DISC 7
第18番 変ロ長調 K.456
第24番 ハ短調 K.491

DISC 8
ベートーヴェン
ピアノ・ソナタ 第30番 ホ長調 Op.109
ピアノ・ソナタ 第31番 変イ長調 Op.110
ピアノ・ソナタ 第32番 ハ短調 Op.111

DISC 9
ブラームス
チェロ・ソナタ 第1番 ホ短調 Op.38
チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 Op.99

ルドルフ・ゼルキン(ピアノ)
ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ(チェロ)DISC 9

クラウディオ・アバド 指揮
ロンドン交響楽団
ヨーロッパ室内管弦楽団(第16番)

録音 : 1981年〜1988年

独グラモフォン 483 8830(CD 9枚組)

モーツァルトのピアノ協奏曲、所持しているレコード収録の4曲以外に11曲も聴く事が出来ます。どれも皆名演で、この全9枚はオーディオ専用NASにリッピング済みであります。私はCDを購入すると直ぐにリッピングしてしまいますので、聴く時はほとんどNASからUSB-DACを通して聴いております。

※ SACDは著作権で守られており、リッピング出来ません。

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iPadの画面より

これがルドルフ・ゼルキンのフォルダ(オーディオ専用NAS)で、iPadのネットワーク音楽再生アプリを使って開いたところです。オリジナルジャケットが一望出来ます。(^^)

数千枚に及んでいたCDは、そのほとんどをリッピングしてから売却済みです。もう聴く事はないだろうと思ったCDはリッピングせずに売却でしたが。お陰で二部屋に跨っていたCDがスッキリ無くなり、気持ち良いです。聴きたい音源はオーディオ専用NASに入っていますので。

ベートーヴェンの後期三大ソナタはライヴ録音で、これらも名演です。ロストロポーヴィチとのブラームスのチェロ・ソナタも良いですし、CD9枚組3,600円で15パーセントのポイント還元ですから安いですね。(^^)

あ、音楽配信サイトで聴く方がもっと安いかも。
ですが、私は「ディスク愛」に溢れておりますので。(笑)

2022年5月 7日 (土)

ショルティの「ワルキューレ」

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ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」全曲

ブリュンヒルデ : ビルギット・ニルソン(ソプラノ)
ヴォータン : ハンス・ホッター(バス)
ジークムント : ジェイムズ・キング(テノール)
ジークリンデ : レジーヌ・クレスパン(ソプラノ)
フンディング : ゴットロープ・フリック(バス)
フリッカ : クリスタ・ルートヴィヒ(メゾ・ソプラノ)
ワルキューレの戦士たち
オルトリンデ : ヘルガ・デルネシュ(ソプラノ)
ヴァルトラウテ : ブリギッテ・ファスベンダー(ソプラノ)
シュヴェルトライテ : ヘレン・ワッツ(メゾ・ソプラノ)

ゲオルグ・ショルティ 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1965年10月~11月、ゾフィエン・ザール(ウィーン)

英DECCA SET 312/16(ED4 初出はED2)

ショルティ指揮による「ニーベルングの指環」、やはり一番の聴きものは「ワルキューレ」ですね。指環四部作の中でも音楽的にもっとも優れた作品であるという事は、ワグネリアンの方であればどなたも異存はないと思います。その「ワルキューレ」、ショルティ盤は歌手陣が素晴らしいです。

私が所持している盤はオリジナル盤(ED2)ではなく、ED4の再プレス盤です。声楽ものは管弦楽曲ほど人気はないので、オリジナル盤でも目の玉が飛び出るほどの金額には現在でもなりません。まして再発盤は一枚あたりの単価が100円から500円くらいでして、アナログレコードの中古は本当に手頃な価格で入手出来ます。

「ワルキューレ」の第1幕と第3幕は単独でもコンサートで取り上げられるほど音楽的に優れていますが、ショルティ盤の演奏も大変素晴らしいです。第1幕ではジェイムズ・キングのジークムント、レジーヌ・クレスパンのジークリンデによる名唱が聴きものです。そこにゴットロープ・フリックが歌うフンディングが名料理のかくし味的妙味で絡み、実に聴き応えがあります。

第1幕単独の録音にはキルステン・フラグスタートとセット・スヴァンホルムによるジークムントとジークリンデ、そこにハンス・クナッパーツブッシュが見事な指揮ぶりでサポートしている英DECCAの名録音が有り、私の愛聴盤でもあります。以前、何度かご紹介済みですね。

有名な二重唱から幕切れまでは若干の若さと勢いを感じるショルティの指揮も、クナッパーツブッシュに負けない見事な演奏であります。

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これは添付されているリブレットの表紙です。ブリュンヒルデを歌うビルギット・ニルソンの颯爽とした姿が写っています。バイロイトでのステージ姿でしょうか。

第2幕以降に登場するニルソンはもう素晴らしいを超越する歌唱で、これまた極めつきと称して良いハンス・ホッターのヴォータン共々、歴史的名録音を聴く事が出来ます。

ヴォータンの妻、フリッカはクリスタ・ルートヴィヒが歌っています。人間も神々の世界も夫は妻に頭が上がらないようで、フリッカに強制的に言い含められるヴォータンが嘆かわしいのですが、ここでのルートヴィヒの歌唱はお見事です。

「ワルキューレ」一番の聴きどころは第3幕です。冒頭の「ワルキューレの騎行」から幕切れまで、息もつかせぬ名演が繰り広げられます。特に「さらば、勇敢で気高い我が子よ」と歌われる「ヴォータンの告別」から「魔の炎の音楽」、そして幕切れまでは何度この録音を繰り返し聴いて来た事か。何度聴いても背筋に鳥肌が立って来てしまうのです。

「ヴォータンの告別」から幕切れまではこれまた英DECCAにはジョージ・ロンドンとクナッパーツブッシュによる名録音が残されていて、自分の愛聴盤としてご紹介しておりますが、ショルティ盤も負けないほどの名演です。

こちらの「ワルキューレ」は1965年の録音と、時代的には半世紀以上も前ですが、ジョン・カルショウのプロデュースによる精鋭の録音エンジニアが贅を尽くした名録音であり、今聴いても決して古さを感じさせません。

英DECCAのオリジナル・マスターテープはもうハイビットでのデジタル化が不可能なほど劣化している事が大分前から報じられております。それだけに、私が所持しているED4の再発盤(1970年代のプレス)ですら今となっては貴重だと思います。以前、ご紹介済みのハイライト盤はED3ですが、同じ部分を聴き比べてもED4でも聴き劣りはほとんどありません。オリジナルのED2ですと違いはあるのでしょうが。

1997年に英DECCAがCD化した「指環全曲」を輸入盤で購入しておりますが、残念ながら英DECCAアナログレコードの音の深みには達していません。仕方ないですね、オリジナルテープそのものが劣化しているのですから。所持している私のED4はケース、リブレット、盤とも大変状態が良いので、これからも大事にして聴き続けて行きたいと思います。

2022年4月29日 (金)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲(4)

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第3番 ハ短調

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1977年11月、ウィーン・ムジークフェラインザール

独グラモフォン 2531 057

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番 ト長調

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1976年6月、ウィーン・ムジークフェラインザール

独グラモフォン 2530 791

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調

マウリツィオ・ポリーニ(ピアノ)

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1978年5月、ウィーン・ムジークフェラインザール

独グラモフォン 2531 194

ベートーヴェンのピアノ協奏曲シリーズ、今日はマウリツィオ・ポリーニのピアノにカール・ベームがサポートしている録音です。コンサート映像も残されておりますね。

正確無比というイメージを持っているポリーニのピアノですが、ベートーヴェンのピアノ・ソナタを順次購入しては聴いてみたものです。しかし、その完璧過ぎる演奏に結局は馴染めずに終わりましたが、非常に上手いピアニストだなぁ・・・という印象だけは持ちました。

今日ご紹介する三枚の協奏曲も完璧です。ただ、協奏曲の場合は当然の事ながらオーケストラとの協奏ですから終始ピアノだけを聴いているわけではないので、楽曲そのものは充分楽しめます。

というより、お見事と拍手したいくらいのポリーニのピアノもオケが協奏していると名曲名演として聴く事が出来ますね。不思議です。

協奏曲を指揮するベームもさすがです。やはりソリストに良い刺激を受けるのでしょうか。モーツァルトも良かったですが、このベートーヴェンも素晴らしいサポートであります。

※(4月29日朝追記)昨日、アクセスカウンターが4並びの「オール4」になった瞬間があったようです。まるで私の通信簿みたい。もちろん10点法での話しです。(爆)

2022年4月28日 (木)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲(3)

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第4番 ト長調

ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

クレメンス・クラウス 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1951年5月

英DECCA LXT 2629

バックハウスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲はステレオ録音(イッセルシュテット指揮)の方が一般的で、私自身も通常バックハウス盤を聴く場合はステレオ盤で楽しんでおります。しかし、今日ご紹介するのはモノラル録音の方です。

指揮は往年の名指揮者、クレメンス・クラウス。クラウスと言えばウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のニューイヤー・コンサートの創始者であり、ウィンナ・ワルツ大好き人間の私にとっては馴染み深い指揮者でもあります。とは言っても残された録音を聴いているだけでありますが。

ベートーヴェンのピアノ協奏曲は全五曲とも名曲ですが、通常親しまれているのはやはり第3番から第5番までの三曲だと思います。第4番はそれまでの協奏風ソナタ形式のお約束事を破り、いきなりピアノ独奏で第一主題が奏されるという名曲ですね。

このバックハウスとクラウスによる第4番も名演です。後年のステレオ録音時と違いバックハウスのテクニックは万全で、勢いがあります。しかし、指先に任せてバリバリ弾いているだけではもちろんありません。第二楽章などは実に情感豊かです。

クラウスの指揮ぶりも良いですね。良い意味でのこれがウィーン風なのでしょうか? 私が一番に好んでいるシュタインとはまた違う良さを感じます。

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲第5番「皇帝」 変ホ長調

ヴィルヘルム・バックハウス(ピアノ)

クレメンス・クラウス 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1953年6月

英DECCA LXT 2839

こちらの「皇帝」も堂々たる演奏であります。バックハウスの指先も「皇帝」でこそ一段と発揮されております。お馴染み第一楽章冒頭、オケによる変ホ長調の和音が強奏された直後に現れるピアノ、バックハウスの煌びやかと評したくなる見事な演奏からもう惹き込まれてしまいます。

その後を引き継いで主題を提示して行くウィーン・フィルハーモニー管弦楽団による美しい演奏。クラウスの溌剌とした指揮がここでもお見事です。他の作曲家の協奏曲でも言える事ではありますが、中でもベートーヴェンの協奏曲はバックのオケ次第で聴き応えがまったく変わってしまいます。

この場合の「オケ次第」というのは「指揮者次第」という意味であります。そういう意味ではクラウスも見事なベートーヴェンを聴かせてくれます。

バックハウスによるベートーヴェンのピアノ協奏曲、一般的にはステレオ盤を推奨しますが、モノラル録音の方も聴き逃せませんですよ。

2022年4月26日 (火)

モーツァルトのピアノ協奏曲(4)

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モーツァルト
ピアノ協奏曲第20番 ニ短調 K.466
ピアノ協奏曲第23番 イ長調 K.488

ダニエル・バレンボイム(ピアノと指揮)

イギリス室内管弦楽団

録音 : 1967年1月、ウィーン

英EMI ASD 2318(初出)

バレンボイム若き日のモーツァルトですが、今日は有名曲のカップリング。比較的早めのテンポで割とあっさりとした解釈で進めて行きますが、現在のバレンボイムだとまた少し違う演奏になると思います。

演奏としては第20番より第23番の方が自分の好みです。第二楽章はもう少しじっくりと歌わせるような解釈ですと一段と楽想が活きるように思うのですが、そこは若さでしょうか。

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モーツァルト
ピアノ協奏曲第10番 変ホ長調 K.365(2台のピアノのための)※
ピアノ協奏曲第27番 変ロ長調 K.595

エミール・ギレリス(ピアノ)
エレーナ・ギレリス(ピアノ)※

カール・ベーム 指揮
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

録音 : 1973年9、11月、ウィーン

独グラモフォン 2530 456

2台のピアノのための協奏曲は以前、イモージェン・クーパーとアルフレッド・ブレンデルの演奏をご紹介済みですが、今日の盤はギレリス親子の共演です。ギレリスのお嬢さん、エレーナの演奏はこのレコードでしか聴いた事がありません。

調べてみたらエレーナは何と47歳(1996年)で病没しておりました。父のエミール・ギレリスはウクライナのオデーサ(オデッサ)生まれです。

しかし、この2台のピアノのための協奏曲はなかなか楽しい曲です。以前、NHK-BSでアルゲリッチとバレンボイムによる2台のピアノのためのソナタを集めた演奏が放送されましたが、モーツァルトの遊び心が横溢した名曲であり演奏でした。

さて、このレコードはバックがベーム指揮のウィーン・フィルハーモニー管弦楽団ですから何の不満もありません。第27番はバックハウスと共演した演奏が何より素晴らしい事は何度も申しておりますが、こちらのギレリスも名演だと思います。そして、第27番でのベームは格別であります。

2022年4月18日 (月)

ディスク愛

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雑誌「HiVi」4月号表紙

オーディオ&ヴィジュアル雑誌「HiVi」の表紙をお借りしました。

4月号は「ディスク愛」という特集で、映像と音楽ディスクのコレクターを紹介しておりました。今は音楽も映像もネット配信を利用する方が増え、市販ディスク(CD、Blu-ray)の売り上げが停滞している現状です。

停滞と言うより、実際は年々売り上げが右肩下がりになっているのではないかと思います。そういう中、今でもディスクという形態のメディアを実購入して音楽、映像を楽しんでおられる方もまだまだ沢山いらっしゃいます。何より私自身も未だにディスクの購入が止められません。

自分の音楽ディスク遍歴はアナログレコードからほとんど全面的にCDに変えた時期がありまして、その際にレコードの国内盤と秋葉原の石丸電気さんで購入した輸入盤のかなりの量を手放しております。聴くのは便利なCDオンリーになったわけです。

ただ、クラシックのオリジナル盤(初期盤)ブームが来る遥か前、中古店で見掛けたペラジャケットのヨーロッパ盤が国内盤中古より安く売られていた頃、これらはジャズレコードコレクターが言う「クラシックでのオリジナル盤なのかも?」と思い、その頃に買い集めたヨーロッパ盤は売らずに残しておりました。

そうしたオリジナル盤(初期盤)は購入したものの聴く事はほとんどなく、コレクションしているだけでした。理由はCDで聴いているからです。ですが、某ショップにCDの処分に訪れた際、査定を待つ間にジャズのエサ箱を暇潰しに見ていたら、昔欲しいと思っていたクラーク・テリーの米impulseオリジナル盤と遭遇。

プライス票には3,000円という表示。レジで検盤させてもらったらジャケット、盤とも大変状態が良く、CDを処分しに行って帰りはそのクラーク・テリーの米impulse盤をお持ち帰りという・・・(^^;

それが切っ掛けでアナログレコード熱が復活。前述したように、購入してみたものの聴いていなかったクラシックのオリジナル盤(初期盤)を少しずつ引っ張り出して聴いているのが現在の自分です。時々は中古ショップを覗いて良い出遭いがあれば購入という。

まさに「ディスク愛」であります。

但し、クラシックは一枚の購入上限を1,500円と決めています。クラシックはジャズとは違い発売枚数が圧倒的に多いので、オリジナル盤の希少価値はジャズほどではないからです。

雑誌の表紙に写っているのは、ご自宅で200インチスクリーンにプロジェクターで映画を投写して楽しまれていらっしゃる、映像関係がお仕事の方のコレクションです。Blu-rayディスクが大変な枚数ですね。

中古レコードですが、都内有名店も時折覗く事はありますが、穴場は歌謡曲、演歌、アイドル、ロック等、オールジャンルを扱う小さなショップの片隅に設けられている「クラシック・オール500円」といったエサ箱に旨味があります。私はそのショップで予期しないオリジナル盤に遭遇しています。場所はお教え出来ませんが。(^^;

ですから通販サイトの価格は私から見たら・・・以下自粛。

しかし、一時はアナログレコードを大量処分してCD(現在はほとんどリッピングして売却済み)に切り替えたのに、またチビリチビリとアナログレコードが増えています。ホントにアホですね。(^^;

2022年4月15日 (金)

ベートーヴェンのピアノ協奏曲(2)

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ベートーヴェン/ピアノ協奏曲全集

DISC 1
ピアノ協奏曲第1番 ハ長調

DISC 2
ピアノ協奏曲第2番 変ロ長調
合唱幻想曲 ハ短調 ※

DISC 3
ピアノ協奏曲第3番 ハ短調

DISC 4
ピアノ協奏曲第4番 ト長調

DISC 5
ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調「皇帝」

アルフレッド・ブレンデル(ピアノ)

ベルナルト・ハイティンク 指揮
ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団
ロンドン・フィルハーモニー合唱団 ※

録音 : 1975年11月(1, 3)、1976年1月(4)、1976年3月(5)、1977年4月(2, ※)、ロンドン

蘭PHILIPS 6597 017/021(5枚組)

今日はアルフレッド・ブレンデルのピアノによるベートーヴェンのピアノ協奏曲をご紹介。ブレンデルは同一の指揮者との全集を三回、蘭PHILIPSに録音しておりますが、ハイティンクとの全集が蘭PHILIPSでの最初の録音となります。この後、ジェイムズ・レヴァイン、サイモン・ラトルと録音を繰り返しています。

ハイティンク、レヴァイン、ラトル、いずれも私が好む指揮者ではありません。なのでレヴァイン、ラトルとの全集は未聴であります。では何故ハイティンクとの全集を購入したのか?

大分前になりますが、箱入り5枚組セットのこの全集が僅か1,500円というプライスで中古ショップのエサ箱に入っていたのです。1,500円なら聴いて気に入らなかったら売却すれば良いかぁ・・・と思い、購入したわけです。ちなみに盤は前所有者は聴いていたのだろうか?と思うくらい綺麗で、5枚すべて変なノイズはありませんでした。蘭PHILIPSらしく、盤質も良いです。

ハイティンクは昨秋、お亡くなりになりましたが、ニュースでは「巨匠」と呼ばれておりました。これは個人的感想になりますが、私はハイティンクを巨匠と一度も思った事はありません。

蘭PHILIPSでの録音量は相当なものですが、身銭を切って購入したベートーヴェンの交響曲全集、ブルックナーの交響曲全集その他、一曲たりとも感動した事はありません。私はもっとも凡庸な指揮者と見ておりました。

引退直前のウィーン・フィルと演奏したブルックナーの交響曲第7番も何の感動もありませんでした。第二楽章で相変わらずのハイティンク節が聴こえた時は興醒めでした。私が言うハイティンク節とは妙なアクセントやリズムの強調で、私とはとにかく相容れない指揮者なので、ハイティンクファンの皆様、どうぞご容赦を。

さて、ブレンデルのピアノは相変わらずの中庸的解釈の演奏です。同じくベートーヴェンのピアノ・ソナタでも同様の解釈ですね。誤解のないよう申し添えますが、中庸とは良い意味で言っております。ピアノ・ソナタ「テンペスト」ではブレンデルの演奏に大きな感動をもらっていますので。

変に楽曲を捏ねくり回して自分の個性を表現しようとするのではなく、ダイナミクスやルバートも「なるほど」と、こちら聴き手側を上手い解釈だと納得させてもらえる演奏と言ったら良いでしょうか。

ですが、ところどころで・・・例えば第1番第一楽章の展開部から再現部に入る直前、ブレンデルにしては力強い打鍵に「おぉ!」と少し驚かしてくれる解釈も其処彼処で聴く事が出来ます。

ハイティンクの指揮ぶりはただの伴奏の域を出ておりません、残念ながら。あ、このセットはまだ手元にあります。

2022年4月12日 (火)

クナッパーツブッシュの「パルジファル」

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プロデュース : ジョン・カルショウ
エンジニア : ケネス・ウィルキンソン

ワーグナー/舞台神聖祝典劇「パルジファル」全曲

パルジファル : ヴォルフガング・ヴィントガッセン(テノール)
グルネマンツ : ルートヴィヒ・ウェーバー(バス)
クンドリ : マルタ・メードル(ソプラノ)
アンフォルタス : ジョージ・ロンドン(バリトン)
ティトゥレル : アーノルド・ヴァン・ミル(バス)
クリングゾル : ヘルマン・ウーデ(バス)
第1の騎士 : ヴァルター・フリッツ(テノール)
第2の騎士 : ヴェルナー・ファウルハーバー(バリトン)
第1の小姓 : ハンナ・ルートヴィヒ(ソプラノ)
第2の小姓 : エルフリーデ・ヴィルト(ソプラノ)
第3の小姓 : グンター・バルダウフ(テノール)
第4の小姓 : ゲルハルト・シュトルツェ(テノール)

ハンス・クナッパーツブッシュ 指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団

1951年7月、8月、バイロイト祝祭劇場でのライヴ録音

独DECCA NA 25 045-D/1-5(5枚組)

先日ご紹介した「神々の黄昏」と同じく、戦後初めて再開された1951年バイロイト音楽祭でのライヴ録音です。実際は上演とゲネプロを収録し、それらを編集してマスターテープとしているようです。

クナッパーツブッシュはこの年から1953年を除き、亡くなる前年の1964年まで毎年「パルジファル」を指揮しています。過去、非オーソライズ盤ではありますが各年のライヴ盤が発売されていましたし、蘭PHILIPSには1962年の正規ライヴ録音が残されておりますから、「パルジファル」と言ったらクナッパーツブッシュというくらい有名ですね。

「パルジファル」はキリスト教に基づく「聖杯伝説」を題材にした作品で、クリングゾル(邪悪な魔法使い)に奪われた「聖槍」で傷つけられたモンサルヴァート城のアンフォルタス王とクンドリ(クリングゾルの手先き)をパルジファル(無垢で愚かな若者)が救済する物語です。

「救済」というテーマはワーグナー作品すべてに扱われていて、特に女性が自身の身を死をもって神に捧げ、愛する男性を救済するという「さまよえるオランダ人」のような作品もあります。

ですからワーグナーはモーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」のような好色な男を主人公にした作品と、男女のくだらない茶番劇の「コシ・ファン・トゥッテ」を評価していなかったようです。「パルジファル」はワーグナー自身で建造したバイロイト祝祭劇場以外での上演を禁じる事を遺言に残しておりましたが、著作権が切れてからは世界各地で上演されております。

「パルジファル」の歌手陣は「神々の黄昏」とほぼ変わりませんので、戦後のバイロイトを代表する歌手たちだったのでしょうね。ヴィントガッセンのパルジファル、ウェーバーのグルネマンツは安心して聴いていられます。何よりクンドリを歌うマルタ・メードルが実に素晴らしい! 1962年盤のアイリーン・ダレスより声も歌唱力も上回っていると思います。

一般的にはステレオで収録された1962年の蘭PHILIPS盤が「パルジファル」の代表盤になると思います。1962年盤も所持しておりますが、今日の1951年盤も名演です。音はモノラルですが、録音エンジニアがケネス・ウィルキンソンですから抜かりありません。「神々の黄昏」と同じく素晴らしい録音です。

ワーグナーはハンス・クナッパーツブッシュという事を再認識させる名盤であります。

2022年4月10日 (日)

ヴィヴァルディの「四季」(2)

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ヴィヴァルディ/ヴァイオリン協奏曲集「四季」

ミシェル・シュヴァルべ(独奏ヴァイオリン)

ヘルベルト・フォン・カラヤン 指揮
ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団員

録音 : 1972年8月、スイス・サンモリッツで録音

独グラモフォン 2530 296(初出)

前回、イ・ムジチ合奏団によるヴィヴァルディの超有名曲「四季」をロベルト・ミケルッチ独奏の録音でご紹介しましたが、今日はカラヤン盤をご紹介。

あのカラヤンがヴィヴァルディの「四季」を?

と思われるかもしれませんが、カラヤンは何と二回も録音しております。一回目は今日の録音で、独奏ヴァイオリンはベルリン・フィルのコンサートマスターであるミシェル・シュヴァルべです。二回目は英EMIにアンネ=ゾフィー・ムターの独奏で1984年に録音しております。

この頃はベルリン・フィルとの確執が進み、オケはウィーン・フィルです。前年、女性クラリネット奏者のザビーネ・マイヤーの入団を巡り、反対するベルリン・フィル側と険悪な関係になっています。当時、ベルリン・フィルとウィーン・フィルは団員に女性は入れておりませんでしたからね。ジェンダー平等の現代では有り得ない確執ですが。

ベルリン・フィル楽団員との録音をご紹介する目的はジャケット写真が素晴らしいからです。リンゴで四季を表現しているこの写真はアイデアが素晴らしいと思うのです。

カラヤンのレコードはカラヤン自身のポートレートをジャケット写真に使った方が売れる、という考えをレコード会社は持っていたわけですが(当然ですね)、カラヤン自身は自分の写真が使われる事をあまり望んではいなかったようです。

で、カラヤンのポートレートが使われていないジャケットの中でも、この「四季」のジャケットは秀逸な一枚だと思い、今日ご紹介させて頂きました。

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こちらはジャケット裏です。表にカラヤンを使わなければ裏に、という事でしょうか。

演奏については意外や意外、奇を衒う事のない実にオーソドックスな演奏なのです。超有名盤、フェリックス・アーヨ独奏のイ・ムジチ合奏団による演奏の延長上にあるような解釈で、「四季」の楽曲そのものを安心して聴く事が出来ます。

シュヴァルべの独奏も申し分ないですし、私は結構好きな「四季」の録音であります。

カラヤンは毎年、避暑のためにサンモリッツの別荘で夏を過ごしていたそうですが、商魂逞しい独グラモフォンはベルリン・フィルの楽団員をサンモリッツに集め、編成が少なくて済む楽曲を録音し、レコードにして発売しておりました。今日の「四季」もまさにそうした時期の録音なのです。

「楽壇の帝王」と呼ばれたカラヤン、何処にいても休まる事はなかったのでしょうね。

2022年4月 8日 (金)

クナッパーツブッシュの「神々の黄昏」

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- 英DECCA 正規ライヴ録音(於 バイロイト)-

プロデュース : ジョン・カルショウ
エンジニア : ケネス・ウィルキンソン

ワーグナー/楽劇「神々の黄昏」全曲

ブリュンヒルデ : アストリッド・ヴァルナイ(ソプラノ)
ジークフリート : ベルント・アルデンホフ(テノール)
ハーゲン : ルートヴィヒ・ウェーバー(バス)
グンター : ヘルマン・ウーデ(バリトン)
グートルーネ : マルタ・メードル(ソプラノ)
アルベリヒ : ハインリヒ・プフランツェル(バス)
ヴァルトラウテ : エリーザベト・ヘンゲン(メゾ・ソプラノ)
- 3人のラインの乙女 -
ヴォークリンデ : エリーザベト・シュヴァルツコップ(ソプラノ)
ヴェルグンデ : ハンナ・ルートヴィヒ(ソプラノ)
フロスヒルデ : ヘルタ・テッパー(メゾ・ソプラノ)
- 3人のノルン(運命の女神)-
第1のノルン : ルート・ジーヴェルト(アルト)
第2のノルン : イラ・マラニウク(メゾ・ソプラノ)
第3のノルン : マルタ・メードル(ソプラノ)

ハンス・クナッパーツブッシュ 指揮
バイロイト祝祭管弦楽団
バイロイト祝祭合唱団

1951年8月4日、英DECCAによるバイロイト祝祭劇場でのライヴ録音

英TESTAMENT SBTLP 6175/80(6枚組 正規初出)

戦後、バイロイト音楽祭がようやく再開されたのが1951年。例のフルトヴェングラー指揮によるベートーヴェンの第9交響曲が再開記念として演奏されたのが7月29日、そして今日ご紹介の「神々の黄昏」が演奏されたのは8月4日です。

この再開の年、ハンス・クナッパーツブッシュとヘルベルト・フォン・カラヤンの指揮による2サイクルで「ニーベルングの指環」が上演されており、ジョン・カルショウ率いる英DECCAの録音チームはクナッパーツブッシュによるサイクルの「ニーベルングの指環」を録音しているのです。

カラヤンと専属契約を結んでいる英EMIは翌1952年以降にカラヤンの「ニーベルングの指環」を録音する予定だったそうですが、1952年の「トリスタンとイゾルデ」を最後にカラヤンはバイロイトと袂を分かつ事になり、結局英EMIはカラヤンの「指環」を録音し損なっています。再開年の1951年は「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の録音に力を入れていたわけです。

当初バイロイトとの録音契約を巡り、英EMIと英DECCAとで熾烈な争いをしていたようで、英EMIが正式な録音契約を結んだようです。しかし、諦めきれないジョン・カルショウは記述によるとワーグナー家に黙認してもらう形でクナの「指環」の録音を決行。発売権に関しては会社の方の尽力に任せる形を取ったようです。

カルショウによると初日の「ラインの黄金」はクナッパーツブッシュに冴えがなく、「ワルキューレ」はヴォータンの出来が悪いし、聴衆のノイズやプロンプターの声が大きく入ったり、「ジークフリート」では録音機の調子がイマイチと、どうも期待したほどの成果が上げられなかったそうです。

ところが、「神々の黄昏」になってクナッパーツブッシュに正気が戻り、ようやくクナッパーツブッシュらしい名演が録音出来たとの事。その「神々の黄昏」が今日の録音です。

しかし、一部歌手の契約問題から折角の名演、名録音は発売出来ずにいたわけです。多分、ヴォークリンデを歌っているエリーザベト・シュヴァルツコップが英EMIと専属契約を結んでいる事が大きな理由ではないかと想像します。それでなくても英EMIは英DECCAとバイロイトでのライヴ録音の権利を巡って争っていましたからね。何より、シュヴァルツコップの夫君は英EMIのウォルター・レッグですから、横槍も入るというものでしょう。

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リブレット表紙

その貴重な録音「神々の黄昏」がようやく日の目を見る事が出来たのは英TESTAMENT社の尽力によるものとの事。未発表の正規マスターからCDやアナログレコードを発売している英TESTAMENTレーベルの創始者は元英EMIのスタッフだったそうで、そうした出自も権利関係をクリア出来た一因かもしれません。

録音の存在は一般にも知られていたものの、前述の如く一部歌手の契約問題から未発売に終わるかと思われたクナッパーツブッシュの「神々の黄昏」が、英TESTAMENTから発売されるとアナウンスされた時には驚喜したものです。録音からおよそ半世紀。

音源はCDとアナログレコードで発売されました。リブレットにはクナッパーツブッシュのリハーサルでピアノをカラヤンが弾いている写真が掲載されていて、私は驚いたものです。まだまだ当時はカラヤンと言えどもクナッパーツブッシュの前では弟子みたいなものだったのでしょう。

ケースの写真(冒頭)、スコアを見ながら話しをしているのでしょうか、クナッパーツブッシュとカラヤン、それにヴォルフガングとヴィーラントのワーグナー兄弟が写っていて、貴重なスナップ写真だと思います。

さて、肝心の演奏ですが、これはもうクナッパーツブッシュの魔術に酔うだけです。「ジークフリートの葬送行進曲」から「ブリュンヒルデの自己犠牲」、そして幕切れまで、圧巻のひと言であります。管弦楽だけで演奏される「夜明けとジークフリートのラインへの旅」も、これぞワーグナーと言いたいくらいです。

歌手陣は以前ご紹介したショルティ盤より更に一時代前になりますが、どの歌手も皆、名唱を聴かせてくれます。バイロイトでのブリュンヒルデと言えば、アストリッド・ヴァルナイからキルステン・フラグスタート、そしてビルギット・ニルソンへと名歌手が続きます。ここではグートルーネを歌っているマルタ・メードルも挙げなければいけません。素晴らしいです!

アストリッド・ヴァルナイのブリュンヒルデ登場で第一声を聴いた瞬間、私は全身に鳥肌が立つ思いでした。いやもう、実に素晴らしいブリュンヒルデです。

ジークフリートを歌うベルント・アルデンホフ、ハーゲンのルートヴィヒ・ウェーバー等、男声陣も申し分なく、歴史的名演・名唱が繰り返し自宅で楽しめる事に感謝です。

録音もさすが名エンジニアのケネス・ウィルキンソンが担当しているだけの事はあります。1951年という時代の録音機材、そして録音するには最悪の環境と言われるバイロイト祝祭劇場にも関わらず、充分良い音で録れております。英EMIのカラヤン指揮による「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の録音を圧倒しています。やはり、当時の英DECCAと英EMIの録音技術の差を感じます。

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